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【おまけ】第27騎士団、集合!
今日からお前も団員だ!
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ビゼーが加入した第27騎士団は、相変わらず国中をウロウロしては魔物を狩る毎日を過ごしていた。
「…ユッカぁ、おれぁ、もう…」
「分かった、もう無理に喋るな」
「すまん…ドジ、踏んで…」
「大した事は無ぇよ、……お前以外な」
「は、ははっ…よか、っ……」
…ユッカより先に第27騎士団にいた者は、これで全員、いなくなった。
「…………またな、戦友」
亡骸を荼毘に付し、祈りを捧げ、遺品をまとめ…
「…故郷に、返してやらないとな」
偶然にも、死んだ騎士の故郷は次に行く村だ。
魔物を相手にする騎士団には農村出身者が多い。
兎に角金の欲しい若者が、棍棒一本で一か八かの旅に出て…
この騎士団と出会えば騎士見習いに、
傭兵団と出会えば傭兵に、
山賊と出会えば山賊になるのだ。
だから王都では、第27騎士団は山賊と中身の変わらない連中だと嘲笑われている…
「……行こう、次の場所へ」
「「はっ!!」」
だが、今の彼らはまるで騎士の様に返事をする。
糞真面目なビゼーの返事を面白がって、みんなが真似たのだ。
それだけではない。
髭を剃ったり、髪を切ったり、下着肌着を洗濯したり…。
完璧な騎士であるビゼーをお手本にして、少しずつガワが整い始めたのである。
相変わらず、敬語は浸透しなかったが。
***
死んだ騎士の生まれた村に行き、遺族に彼の骨と遺品と幾ばくかの金を渡す。
それから墓を作るのを手伝い、骨壺を納め、そしていつも通り魔物を狩りに森へ行く。
すると高そうな狩猟服を着た男と子どもが、痩せた従者らしき青年を伴ってそこにいた。
「ああ、態々ご苦労だったな。
君たちが余りに愚図だから、この辺の魔物はもう私と息子たちが魔法で倒してしまったよ」
「そうでしたか」
「ああ、君たちの様に汗だくになる事も無く、魔物の血を浴びる事も無く、ね!」
そういえば、この辺りを治めている領主は魔法持ちだったな…とユッカは思い出した。
やつらは何故か魔物討伐を専門にする騎士団を馬鹿にしているのだ。
「そういう事だから、早々に出て行きなさい。
君たちの臭いで魔物がまた寄ってきてしまうだろう?」
その言葉に、その男の子どもたちもニヤニヤと笑いながら言った。
「魔法なしは大変ですね、臭くて汚いお仕事しか出来ないなんて」
「そちらに畑用のため池がありますから、水浴びでもなさると宜しいですよ?」
親が親なら子どもも子どもだ。
だがまあ殴れば殺せる程度の生き物だ。言わせておけば良い…
ところが。
「お待ちください、ルーシャ殿」
「ああ?何だね、君は」
「私はイミュラー伯爵家次男、ビゼー。
ブドア・ルーシャ子爵、ここまで仲間を失いながらも何匹もの魔物を退治し、あなたが救わなかった領民を守った騎士団に対しその態度はいかがなものか」
「何だと?」
ビゼーがそれに噛みついた。
「仮にも貴族とあろうものが、礼儀の一つも知らぬとは…」
「黙れ魔法無しが!」
そう言って、その領主が魔法を放とうと詠唱を始めた瞬間、
パァン!「ぶがぁ!」
逆に領主が吹っ飛んだ。
正に一瞬の出来事であった。
騎士たちにはそれが見えた。
ビゼーが一瞬で距離を詰め、ビンタを放ち、また元の位置に戻ったのを。
「「父上!?」」
「…っ、父上、」
子どもたちと従者らしき青年が彼に駆け寄った。
すると今度は青年が吹っ飛んだ。
ルーシャ子爵が彼の腹を蹴飛ばしたのだ。
「お前がルーシャを名乗るなと言っただろうが!
私の代わりに殴られる事もできぁあああ!!」
「「父上っ!?」」
またも一瞬の出来事であった。
そして今度は誰の目にも明らかだった。
ビゼーが子爵の腹を踏みつけたのだ。
そうして、蹴飛ばされた青年の方を見て、悲しそうな顔をし…
「…見覚えがある顔だと思いましたが、信じたくはありませんでしたな。
まさかルーシャ家のご長男が、このような扱いを受けていようとは」
そう言いながら、ビゼーは子爵の腹の上に乗った足にゆっくりと体重をかける。
「あああああ!!」
「貴様、父上から離れ」ゴン!
「この、炎」ゴン!
「ごぼぉ!!」
騎士団全員が限界まで笑いをこらえた。
ビゼーの拳骨が、人に向けて攻撃魔法を撃とうとしたガキどもにさく裂したのだ。
しかもほぼ同時に領主の腹を再度踏みつけた。
子どもの躾が行き届いていない事に怒ったのだろう。
曲がった事が大嫌いな上に変な所で貴族らしいビゼーの巧妙な嫌がらせだ…
笑いだしそうな団員たちとは逆に、怒りに満ちた顔でビゼーは子爵に言った。
「知らないのなら教えて差し上げよう。
『魔法は詠唱前に攻撃されたら終わり』だ」
「あ、ぁ、が…」
「それから、この森…あれ以上奥へ踏み込むな。
貴様ら程度の腕では…死ぬぞ」
「…あ゛っ……」
ついに領主は泡を吹いて気絶した。
綺麗な服を着た方の子どもたちは、茫然自失ついでに失禁…
それを見てユッカはため息をついた。
「あーもう、仕方ねえなぁビゼーは」
「申し訳ありません団長、ですが!」
「いいから、後で始末書書いとけ…あっ、この前のぶんもだぞ!」
「はっ!」
「…ったく、返事だけは良いんだから」
そして、そんな惨状を全て無視し、ルーシャ家の長男に優しい声で言った。
「ところで、君…
読み書き計算は出来るかな?」
「えっ!あ、は、はい!」
「んじゃ、おじさんとこの騎士団に入らないか」
「えっ!?あ、で、でも…」
ルーシャ家の長男は俯いて黙り込む。
きっと、迷惑にならないか考えているのだろう。
だからユッカはもう一押しの声を掛ける。
「そんだけ細いのにこの重たい荷物を運んでたんだろ?
ちゃんと食って肉がつきゃ割といい線いきそうじゃねーか、なぁ?」
ユッカは彼が持たされていた荷物を拾って、よっこらせ…と言いながら担いでみせる。
その下手糞な演技に、団員たちは大笑い。
「まーた団長そんな事言って!書類仕事の手伝いが欲しいだけっしょ!」
「やかぁしい!計算できねぇ奴ぁ黙ってろ!!」
「ひゃー!団長が怒ったぁ~!」
ぎゃあぎゃあ言いながら逃げ回る団員たち。
それをやれやれという顔で見つめるビゼー。
そんな一団を見つめ、ドニ・ルーシャは…
「…僕を、連れて行ってください!」
と、思わず叫んでいた。
「…ユッカぁ、おれぁ、もう…」
「分かった、もう無理に喋るな」
「すまん…ドジ、踏んで…」
「大した事は無ぇよ、……お前以外な」
「は、ははっ…よか、っ……」
…ユッカより先に第27騎士団にいた者は、これで全員、いなくなった。
「…………またな、戦友」
亡骸を荼毘に付し、祈りを捧げ、遺品をまとめ…
「…故郷に、返してやらないとな」
偶然にも、死んだ騎士の故郷は次に行く村だ。
魔物を相手にする騎士団には農村出身者が多い。
兎に角金の欲しい若者が、棍棒一本で一か八かの旅に出て…
この騎士団と出会えば騎士見習いに、
傭兵団と出会えば傭兵に、
山賊と出会えば山賊になるのだ。
だから王都では、第27騎士団は山賊と中身の変わらない連中だと嘲笑われている…
「……行こう、次の場所へ」
「「はっ!!」」
だが、今の彼らはまるで騎士の様に返事をする。
糞真面目なビゼーの返事を面白がって、みんなが真似たのだ。
それだけではない。
髭を剃ったり、髪を切ったり、下着肌着を洗濯したり…。
完璧な騎士であるビゼーをお手本にして、少しずつガワが整い始めたのである。
相変わらず、敬語は浸透しなかったが。
***
死んだ騎士の生まれた村に行き、遺族に彼の骨と遺品と幾ばくかの金を渡す。
それから墓を作るのを手伝い、骨壺を納め、そしていつも通り魔物を狩りに森へ行く。
すると高そうな狩猟服を着た男と子どもが、痩せた従者らしき青年を伴ってそこにいた。
「ああ、態々ご苦労だったな。
君たちが余りに愚図だから、この辺の魔物はもう私と息子たちが魔法で倒してしまったよ」
「そうでしたか」
「ああ、君たちの様に汗だくになる事も無く、魔物の血を浴びる事も無く、ね!」
そういえば、この辺りを治めている領主は魔法持ちだったな…とユッカは思い出した。
やつらは何故か魔物討伐を専門にする騎士団を馬鹿にしているのだ。
「そういう事だから、早々に出て行きなさい。
君たちの臭いで魔物がまた寄ってきてしまうだろう?」
その言葉に、その男の子どもたちもニヤニヤと笑いながら言った。
「魔法なしは大変ですね、臭くて汚いお仕事しか出来ないなんて」
「そちらに畑用のため池がありますから、水浴びでもなさると宜しいですよ?」
親が親なら子どもも子どもだ。
だがまあ殴れば殺せる程度の生き物だ。言わせておけば良い…
ところが。
「お待ちください、ルーシャ殿」
「ああ?何だね、君は」
「私はイミュラー伯爵家次男、ビゼー。
ブドア・ルーシャ子爵、ここまで仲間を失いながらも何匹もの魔物を退治し、あなたが救わなかった領民を守った騎士団に対しその態度はいかがなものか」
「何だと?」
ビゼーがそれに噛みついた。
「仮にも貴族とあろうものが、礼儀の一つも知らぬとは…」
「黙れ魔法無しが!」
そう言って、その領主が魔法を放とうと詠唱を始めた瞬間、
パァン!「ぶがぁ!」
逆に領主が吹っ飛んだ。
正に一瞬の出来事であった。
騎士たちにはそれが見えた。
ビゼーが一瞬で距離を詰め、ビンタを放ち、また元の位置に戻ったのを。
「「父上!?」」
「…っ、父上、」
子どもたちと従者らしき青年が彼に駆け寄った。
すると今度は青年が吹っ飛んだ。
ルーシャ子爵が彼の腹を蹴飛ばしたのだ。
「お前がルーシャを名乗るなと言っただろうが!
私の代わりに殴られる事もできぁあああ!!」
「「父上っ!?」」
またも一瞬の出来事であった。
そして今度は誰の目にも明らかだった。
ビゼーが子爵の腹を踏みつけたのだ。
そうして、蹴飛ばされた青年の方を見て、悲しそうな顔をし…
「…見覚えがある顔だと思いましたが、信じたくはありませんでしたな。
まさかルーシャ家のご長男が、このような扱いを受けていようとは」
そう言いながら、ビゼーは子爵の腹の上に乗った足にゆっくりと体重をかける。
「あああああ!!」
「貴様、父上から離れ」ゴン!
「この、炎」ゴン!
「ごぼぉ!!」
騎士団全員が限界まで笑いをこらえた。
ビゼーの拳骨が、人に向けて攻撃魔法を撃とうとしたガキどもにさく裂したのだ。
しかもほぼ同時に領主の腹を再度踏みつけた。
子どもの躾が行き届いていない事に怒ったのだろう。
曲がった事が大嫌いな上に変な所で貴族らしいビゼーの巧妙な嫌がらせだ…
笑いだしそうな団員たちとは逆に、怒りに満ちた顔でビゼーは子爵に言った。
「知らないのなら教えて差し上げよう。
『魔法は詠唱前に攻撃されたら終わり』だ」
「あ、ぁ、が…」
「それから、この森…あれ以上奥へ踏み込むな。
貴様ら程度の腕では…死ぬぞ」
「…あ゛っ……」
ついに領主は泡を吹いて気絶した。
綺麗な服を着た方の子どもたちは、茫然自失ついでに失禁…
それを見てユッカはため息をついた。
「あーもう、仕方ねえなぁビゼーは」
「申し訳ありません団長、ですが!」
「いいから、後で始末書書いとけ…あっ、この前のぶんもだぞ!」
「はっ!」
「…ったく、返事だけは良いんだから」
そして、そんな惨状を全て無視し、ルーシャ家の長男に優しい声で言った。
「ところで、君…
読み書き計算は出来るかな?」
「えっ!あ、は、はい!」
「んじゃ、おじさんとこの騎士団に入らないか」
「えっ!?あ、で、でも…」
ルーシャ家の長男は俯いて黙り込む。
きっと、迷惑にならないか考えているのだろう。
だからユッカはもう一押しの声を掛ける。
「そんだけ細いのにこの重たい荷物を運んでたんだろ?
ちゃんと食って肉がつきゃ割といい線いきそうじゃねーか、なぁ?」
ユッカは彼が持たされていた荷物を拾って、よっこらせ…と言いながら担いでみせる。
その下手糞な演技に、団員たちは大笑い。
「まーた団長そんな事言って!書類仕事の手伝いが欲しいだけっしょ!」
「やかぁしい!計算できねぇ奴ぁ黙ってろ!!」
「ひゃー!団長が怒ったぁ~!」
ぎゃあぎゃあ言いながら逃げ回る団員たち。
それをやれやれという顔で見つめるビゼー。
そんな一団を見つめ、ドニ・ルーシャは…
「…僕を、連れて行ってください!」
と、思わず叫んでいた。
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