【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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向かえ!大団円

実家ダンジョン 2

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地下2階はほぼ全てが備蓄倉庫だ。

麦とかの穀物と豆と乾物と瓶詰め。
ちゃんと種類ごとに部屋を分けて詰め込まれている。
魔物の大発生の時も活躍した備蓄たち…
いつか来る災害に備えて、古いのと新しいのを入れ替えつつ一定の量が確保されている。

「これがキャンディッシュ領の備え…素晴らしい」
「金銀財宝は食べられませんからね」
「なんせ籠城がお家芸だからな」

昔から「勝ち目がなければ遁走せよ」の精神でやってきたこの領は、どこの村にも地下室を備えた避難所があり備蓄があり、地下水を組み上げる井戸までついているのだ。

立て籠もるならキャンディッシュ領…
奴らもそのつもりでここを押さえに来たんだろうか。

「さっさと叩き出さねえと、奴らに備蓄を食い荒らされちまう…行くぞ」
「はい」

まずは一番手前の倉庫から…。

***

倉庫を開けて、中に誰かが潜んでいないか確認して回る。

「糞野郎ども、たかが1日2日でどれだけ食いやがった」
「飽食の限りを尽くしておりますな」
「…食ったとすれば、ですね」
「はぁ…ブレックもそう思うか」

シドさんの懸念通り、残念ながら瓶詰めの倉庫と乾物の倉庫は荒らされていて、麦や豆の袋はいくつも開けられてしまっている。
侯爵家とは思えない慎ましやかな生活をして、在庫を保ってきた我が家にこの仕打ち…

許せん。

「…後で備蓄に毒がないか、見てくれるか」
「分かりました」

何人この中に潜んでいたかは知らないけれど、備蓄の荒らされようが激しい。
自分たちが食う分は取り分けて、残りに悪さしてる可能性はある…
分かっちゃいるけど、何だか虚しい。

「食べ物を何だと思ってるんだろう」
「さあな、だが戦略としてはあり得る話だ」

シドさんが言う。

石碑が壊されている。
という事は、魔物が人の住む場所に入って来られるようになる。
そうして魔物を大量に呼び寄せて、作物を取れなくして、この備蓄を開放させる。
その時、備蓄に問題があれば、領主への信頼はがた落ち…

「そうしておいて、横から颯爽と現れ魔物を倒す。
 領民の支持と人気はそいつに集まる…」
「そうやって、領地を乗っ取る訳ですな」

シドさんは続ける。
大増殖とは言わなくても、魔物に人との境界を越えさせる程度の事なら簡単に起こせる、と…。

「例えば、攻撃をしてきた相手を殺さないと気が済まない魔物なら、一発入れて逃げるだけで引っ張ってこられるだろ?
 …北の森の、地竜みたいな、な」
「!!」

もしかして、東の端で見つかった学生は、その為に森に侵入しようとして…?
北の端で出てきた地竜も、その方法でおびき出されたのか…?

「奴らは、俺たち第27騎士団がやった事を、自作自演で再現しようとしてるんじゃないか…
 まあ、全部推測だけどな」
「推測…ですか」

奴らが一体どうしたいのか分からないけど…
この前捕まったゼルさんの言葉を信じるのであれば、この国を乗っ取ってもう一度「魔法優位」の社会に戻したいんだろうと思う。

魔法が使える人たちの一部に、不満が溜まっているんだろうな。
法律で規制をかけることで、この国は魔法が使える人を管理しようとしているから…

「自由になりたい、とかならまだ分かるんだけどな」
「魔法が使えないやつを下等劣等と扱いたいだけの連中の事なんか、一生分からなくていい」
「ですなぁ」

魔法が使えない人が多くを占める中で、魔法が使える人間はそれだけで強者だ。
それが貴族なら尚更…。

「魔法が使えるだけの使えない連中がよ…」
「クソの役にも立たんのなら、土に還るほうがましですな!」

シドさんとスミスさんは辛辣だ。
だけど俺もそう思う。

「魔法は、人を幸せにするためにあると思うんだけどな…」
「…ロンバードは、そう思うのか?」
「だって人を救える力があるのに、それで人を救わないなんて…意味無くないです?」
「はは、ロンバード殿らしいですな」

とはいえ、その考え方が奴らにつけ込まれる要因になったわけだけど…



…とまあ、そんな話をしながら、ついに。

「さてと、部屋はあと2つだ。
 魔法で外へ逃げられてなきゃ良いんだが」


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