上 下
134 / 218
向かえ!大団円

敵に堕ちた2人

しおりを挟む

「……カンテは、どうした」
「はっ、首魁に連れ去られました」
「……そうか」

えっ、そんな簡単に!?
だって、今まで見てきたけど、カンテさんってかなり強い人なはずだよ?

「申し訳、ございません」
「仕方が無い、失敗することはある…それだけ相手が上手だということだ、
「……勿体ないお言葉」

ダリル様はクレーさんを責めなかった。
そりゃまあ言う通りだもんな…

「…あの人、やっぱり強いんだ」
「はい、その通りで…」

魔法に加えて異能も持ってるし。
その異能が何なのか分からないけど、異能って言うぐらいなんだからすごいんだろう。


 とはいえ、彼に王位もロンバードもやれんがな」
「……っ、なぜ、あの方が……」

クレーさんの言葉に、ダリル様が反応した。
クレーさんは首魁を「あの方」と言ったのだ。
何だかおかしい。

「……持ちたくない能力を持たされ、持ちたくない魔力を持たされ、……か?」
「えっ?」
「クレー、『目を覚ませ』。
 『お前は操られている』」
「は?私、は……っ、あ、い……っ」
「『僅かな同情で国を混乱させる気か』?」
「そ、んなこと、は…、それは……っ!」
「もう一度言う、『目を覚ませ』」
「っ、ぐ……」

クレーさんはその場に崩折れて、動かなくなった。
ダリル様がさっと手を挙げると、倒れたクレーさんは兵士さんたちに運ばれていった。

「ダリル様、一体、これは……」

どんな力を使ったのか分からない。
でもダリル様が何かをしたのは分かった。
だから聞いた。
何だか恐ろしかったからだ。

ダリル様は俺の目を見ないで言った。

「これが異能の結果だ。
 強力に使えば、人を操る事もできる……
 人の感情や感覚を、増幅させる力」
「ひとを、あやつる……?」
「ああ、さっきクレーに喋らせるのを見ただろう?あれもだ」

ダリル様に依れば、人は異能で承認欲求を増大させると、聞かれた事をペラペラ喋ってしまうものらしい。
つまり「おだてて喋らせる」の強力バージョン…
なるほど俺も気を付けよう。

「異能でしたことは同じ異能でもって解除できる…が、異能の影響が濃ければ時間もかかる。
 奴がここまで出来るとは、思わなかった。
 確かに一筋縄ではいかないな」
「つまり、クレーさんはあの人に操られてた…?」
「そうだ、黒幕を逃がす為の囮だろう。
 カンテも同じく操られている、と考えたほうが良いだろうな」



そんな馬鹿な。

だったら、もしかして、今まで俺が…裏切られたと思ってた人たちは、彼に操られて……?

「メルバから進言は受けていた。
 増幅させる感情を組み合わせれば、そういった事も可能なのではないか……と」
「そうだったんですか!?」
「ああ、だから俺はずっと研究していたんだ…」

学園に研究生として残った期間をそれに充てた、とダリル様は言って、俺を見た。

「その上で、分かった事がある。
 自分の感情は操れない事と…
 誰の恋心も操れない事だ」
「えっ!?」

コイゴコロ!?
一体誰のを操ろうとしたの!?
えっ、まさか、俺……

「実は、色々試したんだ、その…ミリエッタに。
 ミリエッタとセジュールが、そういう関係にならないものかと思って」
「えーーーー!?」

俺じゃなかった!
そしてまさかの実験台!!
何してんのダリル様!?

「何でそんなことしたんですか!?」

つい俺はダリル様を責めた。
するとダリル様は真っ赤な顔で俺を睨んでから叫んだ。

「だって!あの2人がくっつけば、邪魔者がいなくなると思ったんだ!
 あいつら、俺とロンバードの間に遠慮なく入ってこようとしやがって、許せなかったんだ!」
「ひーーー!」

何という告白!
そして重めの発言!!

あまりの事にドン引きする俺。
それに気づいて瞬時に顔を作るダリル様。

「それに、俺はお前と二人で愛を育みたい。
 無理やり恋心を抱かせるなど虚しいだけだ…」

そう言ってダリル様は微笑み…

「愛してるよ、ロンバード」

と……
いやいやいや、誤魔化されませんよ!?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」  ワタクシ、フラれてしまいました。  でも、これで良かったのです。  どのみち、結婚は無理でしたもの。  だってー。  実はワタクシ…男なんだわ。  だからオレは逃げ出した。  貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。  なのにー。 「ずっと、君の事が好きだったんだ」  数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?  この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。  幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...