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向かえ!大団円
敵に堕ちた2人
しおりを挟む「……カンテは、どうした」
「はっ、首魁に連れ去られました」
「……そうか」
えっ、そんな簡単に!?
だって、今まで見てきたけど、カンテさんってかなり強い人なはずだよ?
「申し訳、ございません」
「仕方が無い、いかにカンテと言えど失敗することはある…それだけ相手が上手だということだ、お前でも駄目なら誰も救出できんだろう」
「……勿体ないお言葉」
ダリル様はクレーさんを責めなかった。
そりゃまあ言う通りだもんな…
「…あの人、やっぱり強いんだ」
「はい、その通りで…」
魔法に加えて異能も持ってるし。
その異能が何なのか分からないけど、異能って言うぐらいなんだからすごいんだろう。
「腹違いとはいえ父の弟だ、一筋縄ではいくまい。
とはいえ、彼に王位もロンバードもやれんがな」
「……っ、なぜ、あの方が……」
クレーさんの言葉に、ダリル様が反応した。
クレーさんは首魁を「あの方」と言ったのだ。
何だかおかしい。
「……持ちたくない能力を持たされ、持ちたくない魔力を持たされ、……か?」
「えっ?」
「クレー、『目を覚ませ』。
『お前は操られている』」
「は?私、は……っ、あ、い……っ」
「『僅かな同情で国を混乱させる気か』?」
「そ、んなこと、は…、それは……っ!」
「もう一度言う、『目を覚ませ』」
「っ、ぐ……」
クレーさんはその場に崩折れて、動かなくなった。
ダリル様がさっと手を挙げると、倒れたクレーさんは兵士さんたちに運ばれていった。
「ダリル様、一体、これは……」
どんな力を使ったのか分からない。
でもダリル様が何かをしたのは分かった。
だから聞いた。
何だか恐ろしかったからだ。
ダリル様は俺の目を見ないで言った。
「これが異能の結果だ。
強力に使えば、人を操る事もできる……
人の感情や感覚を、増幅させる力」
「ひとを、あやつる……?」
「ああ、さっきクレーに喋らせるのを見ただろう?あれもだ」
ダリル様に依れば、人は異能で承認欲求を増大させると、聞かれた事をペラペラ喋ってしまうものらしい。
つまり「おだてて喋らせる」の強力バージョン…
なるほど俺も気を付けよう。
「異能でしたことは同じ異能でもって解除できる…が、異能の影響が濃ければ時間もかかる。
奴がここまで出来るとは、思わなかった。
確かに一筋縄ではいかないな」
「つまり、クレーさんはあの人に操られてた…?」
「そうだ、黒幕を逃がす為の囮だろう。
カンテも同じく操られている、と考えたほうが良いだろうな」
そんな馬鹿な。
だったら、もしかして、今まで俺が…裏切られたと思ってた人たちは、彼に操られて……?
「メルバから進言は受けていた。
増幅させる感情を組み合わせれば、そういった事も可能なのではないか……と」
「そうだったんですか!?」
「ああ、だから俺はずっと研究していたんだ…」
学園に研究生として残った期間をそれに充てた、とダリル様は言って、俺を見た。
「その上で、分かった事がある。
自分の感情は操れない事と…
誰の恋心も操れない事だ」
「えっ!?」
コイゴコロ!?
一体誰のを操ろうとしたの!?
えっ、まさか、俺……
「実は、色々試したんだ、その…ミリエッタに。
ミリエッタとセジュールが、そういう関係にならないものかと思って」
「えーーーー!?」
俺じゃなかった!
そしてまさかの実験台!!
何してんのダリル様!?
「何でそんなことしたんですか!?」
つい俺はダリル様を責めた。
するとダリル様は真っ赤な顔で俺を睨んでから叫んだ。
「だって!あの2人がくっつけば、邪魔者がいなくなると思ったんだ!
あいつら、俺とロンバードの間に遠慮なく入ってこようとしやがって、許せなかったんだ!」
「ひーーー!」
何という告白!
そして重めの発言!!
あまりの事にドン引きする俺。
それに気づいて瞬時に顔を作るダリル様。
「それに、俺はお前と二人で愛を育みたい。
無理やり恋心を抱かせるなど虚しいだけだ…」
そう言ってダリル様は微笑み…
「愛してるよ、ロンバード」
と……
いやいやいや、誤魔化されませんよ!?
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