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向かえ!大団円

攫われて、知らぬ場所

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「…うーん…」

はっ、ここは!?

「目を覚まされたかな、我が花婿殿」
「!?」

誰、この人!?
全然知らない人なんですけど!!
あと距離近っ!!

「人違いなのでは?」
「人違いなものか、ロンバード・キャンディッシュ次期大魔術師殿」
「いや次期大魔術師ではないです」

急に出てきて何言ってんだろこの人。
親父が『魔術局長と王妃の兼務なんて無理はさせられない』って言って、その話は無しになったんだけど?
…って、魔術塔に居ないと知らないか、そんな話。

俺は彼から距離を取りつつ聞く。

「ところで、貴方は?」
「ああ、ご挨拶が遅れましたね。
 私はバレン、バレン・ロフィーシュ」
「ロフィーシュ……」

頭の中の貴族名鑑には、ロフィーシュ家は当主が罪を償うにあたり取り潰されたと書かれていた。
そして、残った家族には温情で名字を名乗る事を許したとも書かれていた。

「俺が、あなたの、婿?」
「そうだよ、ロンバード殿」
「急な話すぎて付いていけないんですが?」
「ああ、そうか。
 

それは少しとげのある言い方だった。
違和感…という程ではないから、多分これは異能とかではない…
と思うけど、距離を詰めて来るので怖い。

っていうか、異能って結局何なのかを聞きそびれたままなんだけど。
あと、ゼルさんの正体とかゼルさんが何で俺の護衛に紛れ込んだのかとか聞きそびれたままなんだけど。

「分からない事ばっかで申し訳ないんですけども」
「何だい、花婿殿」
「結婚って婚約してなくても出来るんです?」
「出来るよ?」
「どこで俺の事見てたんです?」
「気づかなかった?君の事を随分つけ回していたんだけど」
「ストーキングを自供した!?」

ええ…やだなあ、俺ストーカーと結婚するの。
っていうか、この人何歳なんだろ。

「すみませんが、お歳は」
「今年24歳だね」
「結構年上だった!」

6歳…6歳差かぁ。
無くは無い年齢差なのかな…
でも、20歳の時に14歳の子をストーキングしてんのってヤバ…ん?

この人が俺をストーキングしてるんなら、俺が配ってた飴の事もいち早く知ったはずだ。

って事は、魔法の飴が高く売れる事に最初に気付いたのは…

「…俺の飴、転売しました?」
「えっ、転売って何?
 私は商人ではないから、商売の話は分からないんだ」
「……本当に?」
「本当さ、君の飴を他にやるくらいなら、私が全部貰いたいよ」
「……」

上手い事はぐらかされてしまった。
うーむ。

「それでも、君の飴の事はよく知っているよ。
 君の困った人を救いたいという思いもね。
 私はそういうところに惹かれたんだ…
 私には、君のなんだ……
 ロンバード、結婚してくれるだろう?」

今度は明らかに違和感のある言葉。
これはきっと異能だろう。
真に受けると良くない気がして、俺は後ずさる。

「逃げないで、ロンバード。
 君の優しさで救ってくれ」
「いや、知らない人とは、ちょっと」

ついに俺はベッドの端っこへ追いやられた。
これ以上後ずされない…
どうしよう。

「なら、知った後なら構わないの?」
「いや、知ってから考えます」

何で急に結婚を迫られてるんだ、俺。
勘弁してもらいたいんだが?

「…しかし、ここは一体どこなんです?」
「それを教えるわけにはいかないね」

そう言うと、バレンさんは俺を押し倒した。

「なっ!!何ですか急に!」
「…君に、私の事を知って欲しくて。
 駄目かい?」
「駄目に決まってるでしょ!?」

この状況で良いよって言えるやつがいたら見てみたいよ!

「じゃあ、仕方ないね。
 無理矢理になってしまうけど、良いかい」
「良くない!!」

ちょ、この人おかしいんですけど!!
誰か助けて!?

***

とはいえ、誰が助けに来てくれる感じも無いので、仕方なく目眩ましの魔法をぶっ放して部屋から逃げた。
部屋の鍵は解錠の魔法と、後は身体強化を使って腕力で強引にこじ開けた。

扉を開けたら暗かったから、暗視の魔法を使って視界を確保しつつ走った。

「窓、窓さえあれば…!」

外に出られさえすれば、飛んで逃げられる。
暗い通路だけど、追っかけて来る方だって暗いのは同じ…
逃げてきた方から声が聞こえる。

、ロンバード!」
「嫌ですぅー!!」

何で戻らないかんのじゃ!!
逃げるに決まってんだろ!!

階段があったので、登る。
どうやら入口が蓋をされている模様。
取り敢えずさっきの身体強化が切れないうちに蓋を跳ね上げる。

「うわっ!暗視止めっ!!」

急に光が見えて眩しかったので魔法を一つ強制終了して、上に出るとそこは…

「ロンバード様っ!?」
「クレーさん!?」

やっぱり知らない部屋の中で、戦闘が繰り広げられていた…!

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