128 / 218
向かえ!大団円
【閑話】キャンディッシュ邸の秘密
しおりを挟む
父親の出産に合わせてキャンディッシュ邸に戻ったセジュールは、混乱していた。
「……えっ?」
執事のエバンスが来客を告げに来たので応接間へ行ってみれば、そこには大きなトランクを2つも抱えたミリエッタがいたからである。
「申し訳ありません…その、今日からここで暫く、お世話になりに参りました…」
彼女は申し訳無いという言葉通り、大変に申し訳無さそうな顔をしてそこにポツンと立っていた。
***
ミリエッタは、一通の書状をセジュールに渡した。
それを読んでセジュールは言った。
「…ミリエッタさんもうちで仕事を?」
「ええ、そうなのですわ…。
少々きな臭くなるかもしれないから、キャンディッシュ邸に居た方が良いと…カリーナ様が」
父が産気づいたその日、ダリル殿下がロンバードのいるマイアンへ向かう事になった。
だからその間は自宅で仕事をしろ…と、大量の報告書やら資料やら何やらかんやらを詰め込んだ馬車が来たのは昨夜のことだ。
自分は一人寂しく紙の束と戦わされる…
兄を守る為だとは分かっているものの、ダリル様だけずるい!と思っていたら、急にこの事態である。
なんてこったい。
「本当に…本当に、申し訳ございません…!」
「いや、それは…」
考えてみて欲しい。
出産直後に他人が泊りがけでやってくる。
このスペシャルかつハイパーデリケートな時に。
何をお構いしろというのか。
非常識極まりない。
……それが日本におけるごく一般的な感覚である。
この世界、こと貴族家に於いてそれが一般的かどうかはさておいて。
「お構いなく…本当にお構いなく、ですわ!
私、倉庫の中でじっとしておりますから!」
前世の記憶があるミリエッタは恐縮しまくりだ。
実際それはそれでウザイ事も分かっているが、王妃の命令には逆らえない宮仕えである。
だがこの世界の貴族家に生まれたセジュールには、なぜミリエッタがそこまで恐縮するのかの方が謎だった。
王妃様の命令なのだから従うのが普通。
それがセジュールの感覚だった。
「大丈夫、ミリエッタさんはここで待ってて」
「えっ、その……分かりましたわ……?」
「その間に、僕は客間を整えて来るから。
フランネル!ミリエッタさんにお茶、お願い」
「かしこまりました」
「!!?」
急にどこかから現れた男に、ミリエッタは驚く。
索敵能力に引っ掛からない気配の断ち方…
普通ではない。
「フランネル様、あなた…」
「『様』は不要で御座います、ミリエッタ様。
どうかフランネルとお呼びください」
「では…フランネル、貴方一体何者ですの?」
「セジュール坊ちゃまの従者で御座います。
あ、セジュール様、客間の方はエバンス殿がもうご用意なさってましたよ!」
「そうなの?じゃあ僕にもお茶をくれるかい」
「かしこまりました」
フランネルは二人分の紅茶の用意をすると、お荷物お運びしておきます、と言ってミリエッタのトランクをひょいと持ち上げて出て行った。
……音もなく。
「セジュール様…あの方、一体」
「ギゼル父様がこの家に輿入れされた時から働いてる使用人の一人で、今は僕の従者です」
「ただものではありませんわ!
私、気配を感じませんでしたわ…!」
ミリエッタの索敵は常時展開能力。
だから申し訳無さ全開でも気がついたはずなのだ…
普通なら。
「…それでカリーナ様は…王宮よりこちらの方が安全だと仰ったのでしょうか」
ミリエッタは小さく呟いた。
彼女は知っている。
索敵能力を逃れられる能力のいくつかを。
その能力とは「隠形」、そして…「暗躍」。
二つが合わされば「職業:忍者」である。
忍者。
それは伝説の職業。
本物を見た人がほぼいない人々。
だって忍んでるから。
「ま、まあ、その2つのスキルを同時にお持ちの方なんて、そうそういらっしゃいませんわよね」
ミリエッタはまたも呟いた。
今度の呟きは、セジュールにも届いた。
「?まあ、フランネルとエバンスがいれば大体の事は問題ありませんから」
セジュールはまだ知らない。
フランネルがここに来る前、何をしていたかを。
そして執事のエバンズが何者なのかを……。
「……えっ?」
執事のエバンスが来客を告げに来たので応接間へ行ってみれば、そこには大きなトランクを2つも抱えたミリエッタがいたからである。
「申し訳ありません…その、今日からここで暫く、お世話になりに参りました…」
彼女は申し訳無いという言葉通り、大変に申し訳無さそうな顔をしてそこにポツンと立っていた。
***
ミリエッタは、一通の書状をセジュールに渡した。
それを読んでセジュールは言った。
「…ミリエッタさんもうちで仕事を?」
「ええ、そうなのですわ…。
少々きな臭くなるかもしれないから、キャンディッシュ邸に居た方が良いと…カリーナ様が」
父が産気づいたその日、ダリル殿下がロンバードのいるマイアンへ向かう事になった。
だからその間は自宅で仕事をしろ…と、大量の報告書やら資料やら何やらかんやらを詰め込んだ馬車が来たのは昨夜のことだ。
自分は一人寂しく紙の束と戦わされる…
兄を守る為だとは分かっているものの、ダリル様だけずるい!と思っていたら、急にこの事態である。
なんてこったい。
「本当に…本当に、申し訳ございません…!」
「いや、それは…」
考えてみて欲しい。
出産直後に他人が泊りがけでやってくる。
このスペシャルかつハイパーデリケートな時に。
何をお構いしろというのか。
非常識極まりない。
……それが日本におけるごく一般的な感覚である。
この世界、こと貴族家に於いてそれが一般的かどうかはさておいて。
「お構いなく…本当にお構いなく、ですわ!
私、倉庫の中でじっとしておりますから!」
前世の記憶があるミリエッタは恐縮しまくりだ。
実際それはそれでウザイ事も分かっているが、王妃の命令には逆らえない宮仕えである。
だがこの世界の貴族家に生まれたセジュールには、なぜミリエッタがそこまで恐縮するのかの方が謎だった。
王妃様の命令なのだから従うのが普通。
それがセジュールの感覚だった。
「大丈夫、ミリエッタさんはここで待ってて」
「えっ、その……分かりましたわ……?」
「その間に、僕は客間を整えて来るから。
フランネル!ミリエッタさんにお茶、お願い」
「かしこまりました」
「!!?」
急にどこかから現れた男に、ミリエッタは驚く。
索敵能力に引っ掛からない気配の断ち方…
普通ではない。
「フランネル様、あなた…」
「『様』は不要で御座います、ミリエッタ様。
どうかフランネルとお呼びください」
「では…フランネル、貴方一体何者ですの?」
「セジュール坊ちゃまの従者で御座います。
あ、セジュール様、客間の方はエバンス殿がもうご用意なさってましたよ!」
「そうなの?じゃあ僕にもお茶をくれるかい」
「かしこまりました」
フランネルは二人分の紅茶の用意をすると、お荷物お運びしておきます、と言ってミリエッタのトランクをひょいと持ち上げて出て行った。
……音もなく。
「セジュール様…あの方、一体」
「ギゼル父様がこの家に輿入れされた時から働いてる使用人の一人で、今は僕の従者です」
「ただものではありませんわ!
私、気配を感じませんでしたわ…!」
ミリエッタの索敵は常時展開能力。
だから申し訳無さ全開でも気がついたはずなのだ…
普通なら。
「…それでカリーナ様は…王宮よりこちらの方が安全だと仰ったのでしょうか」
ミリエッタは小さく呟いた。
彼女は知っている。
索敵能力を逃れられる能力のいくつかを。
その能力とは「隠形」、そして…「暗躍」。
二つが合わされば「職業:忍者」である。
忍者。
それは伝説の職業。
本物を見た人がほぼいない人々。
だって忍んでるから。
「ま、まあ、その2つのスキルを同時にお持ちの方なんて、そうそういらっしゃいませんわよね」
ミリエッタはまたも呟いた。
今度の呟きは、セジュールにも届いた。
「?まあ、フランネルとエバンスがいれば大体の事は問題ありませんから」
セジュールはまだ知らない。
フランネルがここに来る前、何をしていたかを。
そして執事のエバンズが何者なのかを……。
93
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる