【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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向かえ!大団円

【閑話】キャンディッシュ邸の秘密

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父親の出産に合わせてキャンディッシュ邸に戻ったセジュールは、混乱していた。

「……えっ?」

執事のエバンスが来客を告げに来たので応接間へ行ってみれば、そこには大きなトランクを2つも抱えたミリエッタがいたからである。

「申し訳ありません…その、今日からここで暫く、お世話になりに参りました…」

彼女は申し訳無いという言葉通り、大変に申し訳無さそうな顔をしてそこにポツンと立っていた。

***

ミリエッタは、一通の書状をセジュールに渡した。
それを読んでセジュールは言った。

「…ミリエッタさんもうちで仕事を?」
「ええ、そうなのですわ…。
 少々きな臭くなるかもしれないから、キャンディッシュ邸に居た方が良いと…カリーナ様が」

父が産気づいたその日、ダリル殿下がロンバードのいるマイアンへ向かう事になった。

だからその間は自宅で仕事をしろ…と、大量の報告書やら資料やら何やらかんやらを詰め込んだ馬車が来たのは昨夜のことだ。

自分は一人寂しく紙の束と戦わされる…
兄を守る為だとは分かっているものの、ダリル様だけずるい!と思っていたら、急にこの事態である。
なんてこったい。

「本当に…本当に、申し訳ございません…!」
「いや、それは…」

考えてみて欲しい。

出産直後に他人が泊りがけでやってくる。
このスペシャルかつハイパーデリケートな時に。
何をお構いしろというのか。
非常識極まりない。

……それが日本におけるごく一般的な感覚である。
この世界、こと貴族家に於いてそれが一般的かどうかはさておいて。

「お構いなく…本当にお構いなく、ですわ!
 私、倉庫の中でじっとしておりますから!」

前世にほんの記憶があるミリエッタは恐縮しまくりだ。
実際それはそれでウザイ事も分かっているが、王妃じょうしの命令には逆らえない宮仕えである。

だがこの世界の貴族家に生まれたセジュールには、なぜミリエッタがそこまで恐縮するのかの方が謎だった。
王妃様の命令なのだから従うのが普通。
それがセジュールの感覚だった。

「大丈夫、ミリエッタさんはここで待ってて」
「えっ、その……分かりましたわ……?」
「その間に、僕は客間を整えて来るから。
 フランネル!ミリエッタさんにお茶、お願い」
「かしこまりました」
「!!?」

急にどこかから現れた男に、ミリエッタは驚く。
索敵能力に引っ掛からない気配の断ち方…

普通ではない。

「フランネル様、あなた…」
「『様』は不要で御座います、ミリエッタ様。
 どうかフランネルとお呼びください」
「では…フランネル、貴方一体何者ですの?」
「セジュール坊ちゃまの従者で御座います。
 あ、セジュール様、客間の方はエバンス殿がもうご用意なさってましたよ!」
「そうなの?じゃあ僕にもお茶をくれるかい」
「かしこまりました」

フランネルは二人分の紅茶の用意をすると、お荷物お運びしておきます、と言ってミリエッタのトランクをひょいと持ち上げて出て行った。

……音もなく。

「セジュール様…あの方、一体」
「ギゼル父様がこの家に輿入れされた時から働いてる使用人の一人で、今は僕の従者です」
「ただものではありませんわ!
 私、気配を感じませんでしたわ…!」

ミリエッタの索敵は常時展開能力パッシブスキル
だから申し訳無さ全開でも気がついたはずなのだ…
普通なら。

「…それでカリーナ様は…王宮よりこちらの方が安全だと仰ったのでしょうか」

ミリエッタは小さく呟いた。
彼女は知っている。
索敵能力を逃れられる能力のいくつかを。
その能力とは「隠形」、そして…「暗躍」。
二つが合わされば「職業:忍者」である。

忍者。

それは伝説の職業クラス
本物を見た人がほぼいない人々。
だって忍んでるから。

「ま、まあ、その2つのスキルを同時にお持ちの方なんて、そうそういらっしゃいませんわよね」

ミリエッタはまたも呟いた。
今度の呟きは、セジュールにも届いた。

「?まあ、フランネルとエバンスがいれば大体の事は問題ありませんから」

セジュールはまだ知らない。
フランネルがここに来る前、何をしていたかを。
そして執事のエバンズが何者なのかを……。

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