【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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本気のざまぁを見せてやる!

【国王】息子からの通信

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「親父、あんたの父親か弟かが、どっかで子ども作ったりしてないか」
「は?」
「殺意の増幅!異能の力ならやれるだろ?」
「……なるほど、調べてみる」
「頼むぜ、じゃ!」

これだけで、久しぶりの次男との会話は終わった。
緊急時は最低限の会話で要件を伝えろと言ったものの、少々淋しい…

などと言っている場合ではない。
王か弟に隠し子がいて、その子にも異能の力が引き継がれたとしたら…

あいつらは女好きだ。
女性を抱く自分が好きだとも言うが。

ということは、隠し子を作ったのはどこかの女性との間だろう…
ということは、異能がその隠し子に遺伝している可能性は非常に高い。

おまけに、アレらには「避妊具を付ける」知恵も無いだろう。
弟などは度々「生で中出しするのが」だと俺に自慢をしていたし、父親も俺を「女を知らない憐れな息子」と嘲笑っていたしな。

ああ…王になって暫くは、誰も隠し子だと名乗り出て来ませんようにと祈っていたが…
まさか名乗り出ないという選択をする者がいるとは思わなかった。
そして、まさか自分から探すことになろうとは…

はぁ~~~。

「父親と弟の遺物でも調べるか…
 保管しておくものだな」

何か手がかりになるようなものを残しているかもしれない。
一度証拠固めをするのに精査したが、全てを見たわけでは無いし…視点を変えて見てみれば、まだ発見があるかもしれん。

「母上の遺品も、調べてみるか…」

お亡くなりになった時に、俺の方で隠した物がいくつかある。
あいつらに奪われてたまるか、と思って。
案の定、宝石や金貨、果てはお祖母様がお母様に遺した指輪も首飾りも全て奪われてしまったが、日記や書簡は探される事なく無事だった。

悲しくて、見る気になれずここまで来たが…
今こそ読んでみるべきだろう。

「…と、その前にメルバを呼ぶか…」

何か気になる噂話を持っているかもしれないし、一人で母上の想い出と対峙するのは気が重いから、な…。

***

メルバと共に、地下倉庫へ行く。

ここには過去の重大な裁判記録から証拠品までを納めてある。
その倉庫の奥、王家の秘匿すべき事項…いわば国家機密に当たる物が納めてある場所へ入る。

「なるほど、ご落胤がいれば、その子が異能を引き継いでるかもって事ね」
「父や弟の下半身事情など、当時全く興味が無かったというか…それどころでは無かったしな」

父や弟を裁く時、母を殺したか尋ねた。
愛人との逢瀬を邪魔されたとか、結婚に反対されたとか、恨み言を言うばかりで最後まで言質を取ることは出来なかったが…

物証もあることだし、殺したと断定するには充分だったので裁いた。

母の命を奪った毒と同じ毒が入った小瓶が弟の部屋から出てきたことや、母の食事に毒を盛らされたという従者の証言もあった。
可哀想に、老いた父親を人質に取られて追いこまれたのだ…

奴らはいつもそういう事をする。

金を積まなくても人が言う事を聞くのなら、その方が安上がり…という最低の計算だ。

だから「誘拐=死刑」に法改正した。

多くの貴族に「人の命は金より重い」ことを教育せねばならないことも分かった。
領民の命を守る為に借金した魔法無し貴族もいるというのに、どうしてこんなに差が開いたのか…。

「余りに人間的で無さ過ぎた、やつらは」
「人の命を軽く扱うものは、自分の命も軽く扱われると分からせないといけなかったものね」

平民を殺しただけで死刑にするのか、など、裁判官が言ってしまうような事態ではどうにもならん。
そういう考えの裁判官は全員首にし、残った者で昼夜問わず裁判をし…
俺もほぼ毎日裁判官の真似事をした。

「しかしやつらの『貴族以外は人間でない』という思考はどこから来たんだ」
「う~~~~~~~ん……分かんない」

膨大な証拠を集め続けた騎士や官吏の中には、奴らの道徳心の無さに心を病んだ者も多い。
特に高い道徳心を叩き込まれた騎士たちは、こんな奴らを守って仲間が死んだのかと思うとやりきれなかっただろう。

「…死刑、死刑で執行人も足りなくなるし」
「裁判を結審したら刑を執行せねばならんことをすっかり忘れていたからな…そこの人手が足りなくなる事には考えが及ばなかったんだ」
「リブリーもたまにはうっかりするんだねえ」

そう、だから執行人の真似事もした。
父や弟の首を落とすついでに…

「まあ、死刑より大変なのは強制労働…送る手間も監視もいるし」

あれから20年と少し。
強制労働先で更生しきれたかと言われれば、出来てもいないだろう。
魔法が使えなくはなっているかもしれないがな。

「…もっと刑期の短い奴もいたよね?」
「ああ、脅されていう事を聞かされていた者はな。
 首謀者に近い者たちは…っと…
 何だこれは?手紙…?」

それは弟の所持していた本の間に挟まっていた。
宛先は、父…
ではこれを、書いた者は?

「弟の字ではないな」

父宛に来た手紙を、弟が隠した…のか?
何故だ?

「ここに来ての面倒事、か…」

ともかく読んでみるしかあるまい。
大変気が重い事ではあるがな。
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