上 下
116 / 208
本気のざまぁを見せてやる!

【国王】息子からの通信

しおりを挟む
「親父、あんたの父親か弟かが、どっかで子ども作ったりしてないか」
「は?」
「殺意の増幅!異能の力ならやれるだろ?」
「……なるほど、調べてみる」
「頼むぜ、じゃ!」

これだけで、久しぶりの次男との会話は終わった。
緊急時は最低限の会話で要件を伝えろと言ったものの、少々淋しい…

などと言っている場合ではない。
王か弟に隠し子がいて、その子にも異能の力が引き継がれたとしたら…

あいつらは女好きだ。
女性を抱く自分が好きだとも言うが。

ということは、隠し子を作ったのはどこかの女性との間だろう…
ということは、異能がその隠し子に遺伝している可能性は非常に高い。

おまけに、アレらには「避妊具を付ける」知恵も無いだろう。
弟などは度々「生で中出しするのが」だと俺に自慢をしていたし、父親も俺を「女を知らない憐れな息子」と嘲笑っていたしな。

ああ…王になって暫くは、誰も隠し子だと名乗り出て来ませんようにと祈っていたが…
まさか名乗り出ないという選択をする者がいるとは思わなかった。
そして、まさか自分から探すことになろうとは…

はぁ~~~。

「父親と弟の遺物でも調べるか…
 保管しておくものだな」

何か手がかりになるようなものを残しているかもしれない。
一度証拠固めをするのに精査したが、全てを見たわけでは無いし…視点を変えて見てみれば、まだ発見があるかもしれん。

「母上の遺品も、調べてみるか…」

お亡くなりになった時に、俺の方で隠した物がいくつかある。
あいつらに奪われてたまるか、と思って。
案の定、宝石や金貨、果てはお祖母様がお母様に遺した指輪も首飾りも全て奪われてしまったが、日記や書簡は探される事なく無事だった。

悲しくて、見る気になれずここまで来たが…
今こそ読んでみるべきだろう。

「…と、その前にメルバを呼ぶか…」

何か気になる噂話を持っているかもしれないし、一人で母上の想い出と対峙するのは気が重いから、な…。

***

メルバと共に、地下倉庫へ行く。

ここには過去の重大な裁判記録から証拠品までを納めてある。
その倉庫の奥、王家の秘匿すべき事項…いわば国家機密に当たる物が納めてある場所へ入る。

「なるほど、ご落胤がいれば、その子が異能を引き継いでるかもって事ね」
「父や弟の下半身事情など、当時全く興味が無かったというか…それどころでは無かったしな」

父や弟を裁く時、母を殺したか尋ねた。
愛人との逢瀬を邪魔されたとか、結婚に反対されたとか、恨み言を言うばかりで最後まで言質を取ることは出来なかったが…

物証もあることだし、殺したと断定するには充分だったので裁いた。

母の命を奪った毒と同じ毒が入った小瓶が弟の部屋から出てきたことや、母の食事に毒を盛らされたという従者の証言もあった。
可哀想に、老いた父親を人質に取られて追いこまれたのだ…

奴らはいつもそういう事をする。

金を積まなくても人が言う事を聞くのなら、その方が安上がり…という最低の計算だ。

だから「誘拐=死刑」に法改正した。

多くの貴族に「人の命は金より重い」ことを教育せねばならないことも分かった。
領民の命を守る為に借金した魔法無し貴族もいるというのに、どうしてこんなに差が開いたのか…。

「余りに人間的で無さ過ぎた、やつらは」
「人の命を軽く扱うものは、自分の命も軽く扱われると分からせないといけなかったものね」

平民を殺しただけで死刑にするのか、など、裁判官が言ってしまうような事態ではどうにもならん。
そういう考えの裁判官は全員首にし、残った者で昼夜問わず裁判をし…
俺もほぼ毎日裁判官の真似事をした。

「しかしやつらの『貴族以外は人間でない』という思考はどこから来たんだ」
「う~~~~~~~ん……分かんない」

膨大な証拠を集め続けた騎士や官吏の中には、奴らの道徳心の無さに心を病んだ者も多い。
特に高い道徳心を叩き込まれた騎士たちは、こんな奴らを守って仲間が死んだのかと思うとやりきれなかっただろう。

「…死刑、死刑で執行人も足りなくなるし」
「裁判を結審したら刑を執行せねばならんことをすっかり忘れていたからな…そこの人手が足りなくなる事には考えが及ばなかったんだ」
「リブリーもたまにはうっかりするんだねえ」

そう、だから執行人の真似事もした。
父や弟の首を落とすついでに…

「まあ、死刑より大変なのは強制労働…送る手間も監視もいるし」

あれから20年と少し。
強制労働先で更生しきれたかと言われれば、出来てもいないだろう。
魔法が使えなくはなっているかもしれないがな。

「…もっと刑期の短い奴もいたよね?」
「ああ、脅されていう事を聞かされていた者はな。
 首謀者に近い者たちは…っと…
 何だこれは?手紙…?」

それは弟の所持していた本の間に挟まっていた。
宛先は、父…
ではこれを、書いた者は?

「弟の字ではないな」

父宛に来た手紙を、弟が隠した…のか?
何故だ?

「ここに来ての面倒事、か…」

ともかく読んでみるしかあるまい。
大変気が重い事ではあるがな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

処理中です...