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本気のざまぁを見せてやる!

【?】残滓の野望

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王都の商業区は、大きく3つに分かれている。

1つは高いものを高く売る「特撰街」。
1つは安いものを安く売る「商店街」。
そしてもう1つは、競りが行われる「問屋街」。

問屋街には倉庫のような殺風景でだだっ広い建物が並んでおり、一般客の出入りは殆どない。
月一回の骨董市に、商店主の案内で数寄者の貴族がやってくる程度だ。

平常、問屋街では特撰街や商店街で販売される品の競りが行われている…と同時に、後ろ暗い取引も行われている。

怪しい薬、無修整春画エロ本、人気俳優の下着…
かつては人間まで売られていた。

人身売買はご法度となって久しいが、今上陛下による「大改革」の混乱に乗じて、何人もの女・子どもが売りに出された事があった。
殆どが貴族の子どもたちであり、妻であった。

質の良い奴隷が買えると集まった者たちと、高い金で買わされた人買いたちの競りは白熱し…
そして全員が一網打尽になった。

辣腕と呼ばれた王の作戦で、人身売買に関与した者たちは全員が終身刑または死刑となった。

だが、話は「めでたしめでたし」では終わらない。

売られた者たちの中で、帰る場所のある者は殆どいなかったのだ。
だから皆一様に、施設に預けられる事となった。

今まで一人部屋が当たり前で、使用人がいて当たり前の暮らしをしてきた者が、いきなり集団生活を迫られ、身の回りの事を自分でやらされるようになったのだ…
しかも、食事は質素の一言。
3食あるだけ有り難いと思う者は1人も居ない。
今まで遥かに豊かな暮らしを享受してきたのだ…

それが搾取の上に成り立っていたなど、知る由もないまま。



===========


「……それで、ロンバード殿の様子はどうだ」
「はい、随分とお悩みのご様子です」
「ふふ…もう少しだな」

作戦は順調に進んでいる。


「次に会う時、その不安をさらに増幅させて…
 姿を消す理由を、彼自身に作って貰う」

そうしておいて、自分が優しく彼を迎え入れる。
きっと彼はすぐに心を許すだろう。
僕だけを信じさせる事も簡単だ……

「あの能力を手に入れ、さらに金を稼ぐ。
 ロンバード殿はここで匿っていますよ、と告げれば、ギゼル様とて手を出せまい。
 上手く行けば…我々のもとへ、来て下さる」

前王がしくじったのは、あの強大な力を味方につけようとしなかったからだ。
殺せ殺せと、周りに唆されて見誤った…

つまり、周囲にいた奴らが阿呆だったのだ。
そして前王もまた、ど阿呆だった。
前王のお妃様さえ生きていれば、まだ何とかなっただろうに…その人すらただ殺してしまったのだから、阿呆の極みとしか言い様が無い。

「貴族で魔法を独占する事に腐心しすぎて大局を見誤り、ものに出来たはずの戦力をみすみす逃した。
 君たちの親は愚かだった…分かるだろう?」
「はい」
「大事なのは、魔法も使えないエセ貴族を追い落とす事だ。
 それがオーセンを強国にする、唯一のやり方」

僕は彼らに言ってやる。

魔法無し共のように、何でもかんでも人力に頼るやり方では金もかかるし時間もかかる。
つまり無駄だ。
魔法さえあれば、無駄な時間、無駄な金をもっと他の事へ回せるだろう。

大事なのは金。
そして…力だ、と。

「君たちの様に魔法を使える「真の貴族」がこの国を導けば、より効率的に富を集める事が出来る」
「正に、仰る通りです」
「我々は、自らの力で貴族に返り咲く!」

……単純なものだ。

親に裏切られ、平民へと落ち、貧しい生活をさせられたことで生まれた「反骨精神」とやらを増幅させてやれば…この通り、僕の言葉を疑いもしない。

「国をより良くするのは、君たちの仕事だ」
「「はいっ!」」

彼らは僕に忠誠を誓う様に頭を下げ、各々の仕事へ散っていった。

そして僕はひとり、ほくそ笑む。

真実、オーセンという国などどうでも良い。
僕は僕の王国を作る。
ダリルとかいう男に、ロンバードもギゼル様も勿体ない。

ロンバードは僕の妻に、
ギゼル様は僕の父に…。

「ふふっ」

そうすればこの国を盗るなど造作もない事。
その後は、もちろん…

「まずは国名を変えてオーセンの名をこの世から消してしまわないとね」

魔物の大増殖、その責任をお前たちにも取って貰わなければな。

「王家の血を引く連中は、全て処刑だ」

そうすれば、この僕に与えられた異能は唯一のものになる。
そうして僕はこの力で…

正しい国を作るんだ。
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