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本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 7
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石碑に異常が見つかり、そして…
竜を殺した、一週間後。
そのたった一週間で、騎士団が到着した。
王都から少し北に行ったところの湖畔で演習をしていた第16騎士団だ。
結界に異常があれば魔物の動向も変わるだろう…と森の調査にやってきたついでに、修復作業に付いて来てくれる事になった。
「それでは、石碑の応急処置に向かいましょう」
「「オオ!」」
「はい…」
護衛の皆様は何だか肩身が狭そう…
せめてこれぐらいはと、今日は荷物持ちだ。
なかなかの大所帯での移動。
一週間前親父を連れてきてから、何やかんや言ってそのまま村に滞在してるグウェン様も一緒だ。
西の石碑を修繕する時の参考にするから、って…
一週間も帰らなくて大丈夫なの?
旦那様怒らないの?
人んちの事情に首を突っ込むつもりはないけど。
「それで、材料はこれで良いのか?」
「ええ」
修繕に使う材料は、カブレギの樹液(前世で言うと漆)、小麦粉、水、それから…親父が転移魔法で送ってくれた火山灰。
村にありそうなもので考えると、金継ぎ的なやり方が一番合ってそうだなと思ったんだよね…
これでうまくいけば良いんだけど。
「西でもこの材料が揃うと良いんだけどなぁ…」
「西だったら漆喰があるじゃないですか」
「えっ、漆喰でも良いのか?」
「取り敢えずしっかりくっつけば良いんです、石垣にも使ってるでしょ?」
「ふむ…確かに」
グヴェン様のいる西の公爵領は海がある。
だから消石灰は結構身近で、漆喰がある。
こっちは山だから、漆的なものがある…
なかなかうまく出来てるよな。
「しかし、西の石碑も被害に遭っているとは」
「ああ、母上が来る数日前に大嵐があったから、その影響かもしれんが…
どっちにしろ倒れたら大惨事だぜ」
「まあ、こっちのも地竜がじゃれた結果かもしれないですしね」
あの巨体がズシンズシンと周りを歩き回ったら、偶然地面すれすれに真っ直ぐ走るようなヒビの一つも入っておかしくない…
そう、たまたま、他の場所にダメージがないまま、地面と同じ高さに、真っ直ぐヒビが入るようなことだってあるかもしれない…って…
そんなわけないのは、分かっているけど。
「ともかく、倒れないうちに何とかしよう。
原因究明はその後だ」
「そうですね」
とにかく今は応急処置だ。
急いで行こう!
***
石碑に着くと、本日の石碑見張り役である魔術師のゼルさんと剣士のカンテさんが手を振って迎えてくれた。
「ロンバード様!お待ちしてました~!!」
「ゼルさん、カンテさん、見張り有難う!
異常は無かった?」
「はい、今日も異常は無しです!」
あからさまにほっとした顔だ。
この前の地竜を見ていない二人だけど、他の三人が相当話を盛って話したらしく「もう出ませんよね?出ませんよね!?」ってずっと言ってたからな。
「それではロンバード様、我々は結界の外側に参ります」
「宜しくお願い致します」
「お任せください!27の連中には負けませんよ」
第16騎士団は第27騎士団のライバル騎士団だ。
親父曰く「魔物に恨みを持つ人間の集まり」だそうで、各騎士団から魔物をぶち殺したい奴が集まって結成されたイレギュラーな騎士団らしい…
王都でもカルト的人気を誇っている。
「地竜をこの手で殺れなかったのは残念ですが、この石碑に近づく魔物は全部ブチ殺します!ご安心ください!」
「あっ…と、はい、怪我の無い範囲でお願いします…」
仰る事も中々物騒だ。
「お前ら!扇形、3-1!」
「「オオ!」」
団長の掛け声で、三人一組になって森の中へ散っていく団員たち…そんな中、一人の騎士さんが俺に駆け寄って来て言った。
「ロンバード様、地竜討伐、有難う御座います!」
「えっ、あ、はい…」
「奴らは身内の仇であります。
いつかは両親を食った個体を討伐するのが俺の目標です!では!」
騎士さんはそう言ってビシッと敬礼を決め、皆を追って走っていった。
「…そうか、魔物に家族を…」
そうだよな。
自分の家族を殺した魔物が憎いのは当たり前だ。
その憎しみをパワーに変えて、彼らは悲しみから立ち上がったんだ。
生きて、戦う、その為に…。
「……恨み、か」
家族を理不尽に奪われる悲しみは、俺には想像もつかない。
だけど、そういう思いをした人は沢山いて…。
「人を亡くした悲しみを、癒す…か」
その人が生きていた時の記憶。
それを呼び戻せるものがあれば…
何か、変えられるだろうか。
竜を殺した、一週間後。
そのたった一週間で、騎士団が到着した。
王都から少し北に行ったところの湖畔で演習をしていた第16騎士団だ。
結界に異常があれば魔物の動向も変わるだろう…と森の調査にやってきたついでに、修復作業に付いて来てくれる事になった。
「それでは、石碑の応急処置に向かいましょう」
「「オオ!」」
「はい…」
護衛の皆様は何だか肩身が狭そう…
せめてこれぐらいはと、今日は荷物持ちだ。
なかなかの大所帯での移動。
一週間前親父を連れてきてから、何やかんや言ってそのまま村に滞在してるグウェン様も一緒だ。
西の石碑を修繕する時の参考にするから、って…
一週間も帰らなくて大丈夫なの?
旦那様怒らないの?
人んちの事情に首を突っ込むつもりはないけど。
「それで、材料はこれで良いのか?」
「ええ」
修繕に使う材料は、カブレギの樹液(前世で言うと漆)、小麦粉、水、それから…親父が転移魔法で送ってくれた火山灰。
村にありそうなもので考えると、金継ぎ的なやり方が一番合ってそうだなと思ったんだよね…
これでうまくいけば良いんだけど。
「西でもこの材料が揃うと良いんだけどなぁ…」
「西だったら漆喰があるじゃないですか」
「えっ、漆喰でも良いのか?」
「取り敢えずしっかりくっつけば良いんです、石垣にも使ってるでしょ?」
「ふむ…確かに」
グヴェン様のいる西の公爵領は海がある。
だから消石灰は結構身近で、漆喰がある。
こっちは山だから、漆的なものがある…
なかなかうまく出来てるよな。
「しかし、西の石碑も被害に遭っているとは」
「ああ、母上が来る数日前に大嵐があったから、その影響かもしれんが…
どっちにしろ倒れたら大惨事だぜ」
「まあ、こっちのも地竜がじゃれた結果かもしれないですしね」
あの巨体がズシンズシンと周りを歩き回ったら、偶然地面すれすれに真っ直ぐ走るようなヒビの一つも入っておかしくない…
そう、たまたま、他の場所にダメージがないまま、地面と同じ高さに、真っ直ぐヒビが入るようなことだってあるかもしれない…って…
そんなわけないのは、分かっているけど。
「ともかく、倒れないうちに何とかしよう。
原因究明はその後だ」
「そうですね」
とにかく今は応急処置だ。
急いで行こう!
***
石碑に着くと、本日の石碑見張り役である魔術師のゼルさんと剣士のカンテさんが手を振って迎えてくれた。
「ロンバード様!お待ちしてました~!!」
「ゼルさん、カンテさん、見張り有難う!
異常は無かった?」
「はい、今日も異常は無しです!」
あからさまにほっとした顔だ。
この前の地竜を見ていない二人だけど、他の三人が相当話を盛って話したらしく「もう出ませんよね?出ませんよね!?」ってずっと言ってたからな。
「それではロンバード様、我々は結界の外側に参ります」
「宜しくお願い致します」
「お任せください!27の連中には負けませんよ」
第16騎士団は第27騎士団のライバル騎士団だ。
親父曰く「魔物に恨みを持つ人間の集まり」だそうで、各騎士団から魔物をぶち殺したい奴が集まって結成されたイレギュラーな騎士団らしい…
王都でもカルト的人気を誇っている。
「地竜をこの手で殺れなかったのは残念ですが、この石碑に近づく魔物は全部ブチ殺します!ご安心ください!」
「あっ…と、はい、怪我の無い範囲でお願いします…」
仰る事も中々物騒だ。
「お前ら!扇形、3-1!」
「「オオ!」」
団長の掛け声で、三人一組になって森の中へ散っていく団員たち…そんな中、一人の騎士さんが俺に駆け寄って来て言った。
「ロンバード様、地竜討伐、有難う御座います!」
「えっ、あ、はい…」
「奴らは身内の仇であります。
いつかは両親を食った個体を討伐するのが俺の目標です!では!」
騎士さんはそう言ってビシッと敬礼を決め、皆を追って走っていった。
「…そうか、魔物に家族を…」
そうだよな。
自分の家族を殺した魔物が憎いのは当たり前だ。
その憎しみをパワーに変えて、彼らは悲しみから立ち上がったんだ。
生きて、戦う、その為に…。
「……恨み、か」
家族を理不尽に奪われる悲しみは、俺には想像もつかない。
だけど、そういう思いをした人は沢山いて…。
「人を亡くした悲しみを、癒す…か」
その人が生きていた時の記憶。
それを呼び戻せるものがあれば…
何か、変えられるだろうか。
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