【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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本気のざまぁを見せてやる!

魔術師は結婚を断りたい 4

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診療所を出て、結界の点検に行く前に遅い昼飯を食う。

この村に飲食店は無いので、村長さんの家の台所を借りる。
申し訳ないと村長さんの奥さんがやってきて言う。

「ロンバード様、調理なら私が」
「いえ、これも研究の一環ですので…
 こちらこそ、台所を占拠してすみません」

やっぱりどこに行っても毒だけは気を付けないと、と思う。
うっかりポケットにしまいっぱなしになっていた砂糖壺は検分に回してきた。
結果を聞かないうちに出てきてしまったけど。

「ところで、この村の家の台所は、ここと似たような造りですか?」
「ええ、これがごく普通かと思います」
「なるほど…やっぱり手首は回らないと…いや、肘か?うーん…」
「もう魔法の腕作りを考えていらっしゃるんですか?」
「ええ…こうやって日常生活の動作をすると、少しずつですが見えて来るんです」

半分は嘘で半分は本当の話をする。
特に難しそうな案件は、こうやってずっと頭のすみっこに話がある事が大事だ。

「そうだ、魔物の被害は出ていませんか?」
「いえ、今のところ問題はありません」
「結界の機能が落ちているような兆候はありませんか」
「いえ…多分、無いとは思います」

難しい事は分からない、と微笑む奥さん。

まあ、魔力のよどみとか歪みとか、そんなもの普通は見えないもんな…
魔術師なら感覚で分かったりするもんだけど。

「魔力が見えるアイテムがあったら便利かなぁ…」
「あ!ロンバード様、鍋が!!」
「え!あ、うわぁ!!」

***

ややコゲたパンと煮詰まったポトフの昼飯を食べて、結界を確認しに村の外へ。

「ロンバード様、次からは我々がしますから」
「いや、キャンディッシュたるもの料理ぐらい出来ないと…メルバ父さんは無理でも、親父は超えたい」

実は、うちの飯は全部メルバ父さんが作ってるんだ。
どの料理も美味しいからすごい。
時々弁当も作ってくれるし。

「大丈夫です、そこはもう超えてますから」
「えっ、そうですか?」
「ですから次から」
「はい、次も頑張ります!」
「「……」」

料理の腕を褒められたりしながら、森との境目を歩く。
確か親父が、ちょっと森に入ったところに結界用の魔力集積回路を設置したって言ってたんだけど…どこだろう?
石碑っぽくしといた、って言ってたんだけど…

「ロンバード様!あの……岩?」
「えっあれ!?想像の5倍でかい!」

こんなにデカく無きゃ駄目だなんて、やっぱ広範囲の結界は桁が違う。
早速石碑に埋め込まれたプレートにある魔力集積回路を確認…

「しかし、これが魔力湧出地点か…
 魔力が地面から出てきてる感じがするな」

森の中には魔力が湧く場所がいくつもあり、基本的に魔力が多い。
教科書で読んだだけだと分からないけど、体感してみて「なるほどな」と思った。
だから森にすむ魔物が多いんだって説が有力になるわけだなって。

「ざっと見たところ…問題無さそうだな」

俺はプレートに触れ、回路に微量の魔力を流す。
異常な地点があればそこに魔力がわだかまる。
魔力集積回路を検査するときの常套手段だ。

「ふーん…ふん、ふん…」

こうしていると、この魔法がどういう理論で出来ているのか分かる。
魔物の嫌いな周波数の音と、結界壁に触れたら電流が流れる仕組みに、顔認証システムの応用で人間と判断できる者が通過するときにはそこだけ結界がゆるむ仕組み…

さすが元エンジニア…まさかの顔認証。
やっぱ実際の経験って強い。

「うん…悪い所は…ない、な…」

石碑のプレートがほわり…と明るくなる。
検査が終わって異常が無い事を示すサインだ。

「よーし、検査終了」

プレートから手を離すと、護衛さんが一人話しかけて来る。

「…これが、『大魔術師の国土結界』…ですか」
「ええ、これが…です。完成度高いですよね。
 プレート自体の耐久力を増強させる回路も組み込まれているうえに、少々傷が入った程度じゃびくともしない設計になってますから」

話しかけてきたのは、護衛で剣士のブレックさん。
まだ寮に残ってるサリュール先輩・レドモンド君・クレア・ニール・カナデ君の5人がお金を出し合って頼んでくれた護衛さんで、ついでに旅先で得るものがあれば持ち帰って欲しいと頼まれているんだって。

「でも、結界を作っただけじゃ駄目ですからね。
 時々魔物を狩って数を減らさないと、大雨で堤が決壊した時みたいに、増えすぎた魔物が一気になだれ込んできてしまうかもしれませんから」
「それは……恐ろしい」

他にも注意点があるかもしれないけど、細かい事は親父に聞けるように国際会議で決まったから…と、俺はその護衛さんに言って、その場を…

「ん?」
「どうされました?」
「…もう一回、チェックしてみます。
 妙な…違和感が、ある」

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