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ざまぁなど知らぬ!

国際会議と諸々

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「ついに始まってしまった」

本日はついに国際会議の日。
俺はスーパーバイザー的位置に座らされ、質問に対して答えるお仕事を頂いた…

発言ボタンを押す権限は無い。
いや、無い方が良いと言うか。

前世の常識をこの世界に反映させるには相当の時間がかかるぞ、って親父に言われたんだ。
ただでさえユニセフ的な機関を作ろうなんてそれだけでも進歩的な事なのに、他の事にまで首を突っ込んでたら終わらないぞ、って…

んで、俺も思ったんだよね。

何でも手を付けて放ったらかしは駄目だ。
一度作り始めたら最後まで作りきらないと!って。

俺は困ってる人を助けたい。
だから今はそれに集中したい!

そう言って宰相様と外務大臣に議席を任せてきた。
宰相様と大臣は「余計な心配をしなくて済む!」と大変に有り難がってくれたし、Win-Winだよね。

ちなみに隣には親父が座っている。
争いが起きたら鎮圧する係だそうだ…物騒だな。

「緊張する…」
「ああ、上手くいくといいな。
 感謝祭的システム共々」

さざめく緊張の中、議場にオーセン国王、リブリー・オーセン陛下が登場し、参加者全員が起立。
その陛下の後ろに控えていたメルバ父さんが議長席へと陛下を誘導し、その席から陛下が参加者全員を見渡し…そして。

「お集まりの方々、準備はよろしいか。
 …では只今より、国際会議の開会を宣言する!」

場内は拍手に包まれ、そして…

「皆様、ご着席ください。
 最初の議題に入ります。
 魔物の増殖を防ぐ為の方策について、ご意見のある方はお手元のボタンを押してください。
 発言は押した順で指名させて頂きます。
 順番はあちらのスクリーンに出て参ります…」

俺は最初の仕事、感謝祭的システムの説明をした。

***


会議は終始和やかに…とはいかなかった。


まずは魔物の増殖を防ぐ世界的取り組みについて。

これは集落を守る結界の張り方を各国で共有する事で決着。
来週から順次魔術塔で親父が指導する事になった。



それから魔法のブレスレットの件。

各国から格安で材料を仕入れる代わりに、手頃な値段で売ってくれと言うものだ。
その国で取れる宝石が、購入したいブレスレットで使うものでは無い場合にどうするのか、宝石の産出できない国もこの輪の中に入れるべきか…。

結果、全ての国が材料も完成品も正規の値段で取引すると決まった。
宝石代とブレスレット代を相殺すれば事足りる話ではあるので、全員がすぐに納得した。



それから、俺が作っている魔法の飴について。

正規の流通ルートがないから信用の低い商人てんばいヤーが横行する、との指摘があった。
偽物も出回っているらしく、なかなか深刻。
なので、包み紙に細工をして本物と偽物の区別をつけることと、軽々に配らない事、毎年量を決めて国同士で取引する事が決まった。

ただの飴ちゃんが大出世だ。
どんな細工にするかは決まり次第報告する。



それから、各地の気候に対応した強化作物の実験について。

現在学園内の敷地のみで行っているが、各国に希望する種を配布し、定期的に実験結果を報告してもらう事になった。
問題が起きた場合には適宜報告、それから安全性が確認出来るまでは輸出入禁止。

視察に来てくれとの要望が激しく、リブリー陛下が「息子の新婚旅行のついでで良ければ」と一言。
俺とダリル様が結婚しないと国際的にマズい事態に発展してしまった。



最後に、災害救助のための国際機関の設立…

「今までの実績や経験から、セルナ神聖国が音頭を取るのが妥当では?」
「それは構いませんが、うちは風が強すぎてね…。
 本部を置くのはちょっと難しいかと」
「では、本部は別の国で…取り敢えずオーセンに置いておけば良いのではないか?」
「そうだな、言い出しっぺもいるし中立国だし」

…というわけで、さっくりとオーセンに本部が設置される事になり、

「即時対応する為にも、災害時の救助活動を専門にする部隊を作って各国に配置すべきでは」
「うちのような小さな国には負担が大きすぎます」

……ということで、補助金を出しましょうという話になったのだが…。

「財源はいかが致しましょうか?」
「国の大きさに応じた額を寄付するのは?」
「大国だから金がある訳じゃない。勘弁してくれ」

さすがにお金の事となると全員が払いたくないオーラを出しまくる。

「そうだ、アデアだって土地が広くても半分以上は不毛の地だぞ」
「ドラークだって帝国と名乗っちゃいるが、中身は弱小部族の寄り合い所帯だ。
 そもそも何をもって大国と中小国を分ける?」

特にレドモンド君とニールは納得しない模様。

仕方なく俺が

「うーん…寄付を募れる物を作って売るのは?」

と発言すると、すかさずサリュール先輩が言う。

「そうだ、この前学園で護身用首飾りというのを掛けている女性を見つけたのだが、あの首飾りなら富裕層から広く寄付を募れるのではないか?」
「ああ、あれなら少々高くても売れそうだ。
 ……ロンバード君、原価はいくらだい?」
「あれは君の作品だろ?材料に希少性はある?複製は可能?」

と、ミリエッタさんにあげた3点セットの話が急に出てきて、個人から個人だったら騒ぎにならないと思ってた俺は泡を食った。

「ええと…材料に希少性はそれほど無いかな。
 ただ量産は考えてなかったからレシピが無くて、原価計算は今すぐには無理…」
「……れしぴ?」
「えっと、材料や作り方を書き出したもの…」
「何でいつもちゃんと作らないの?
 信じらんない!!」

カナデ君の叫びに乗っかるように、わあわあと野次が飛んだ。

「一点物にするべきでないと何故分からぬ!」
「でもただの護身用で、戦闘向きじゃないし」
「いや暴漢から身を守れるだけでも充分に素晴らしいんですよ!?」
「どうして戦闘に向くかどうかで判断するの!?」
「作った本人が何故価値を理解してないんだ!」
「うう…申し訳御座いません」

嘘でもあるって言っときゃ良かった…。

あんまりにも各所から責められるもんで、メルバ父さんと親父が頭を下げる事態に発展。

「今後きちんと教育しますので、その辺で…」
「申し訳御座いません」
「頼みますよ!?」
「貴方の息子さんが作るものには、常に世界が注目してるんですからね!!」
「申し訳御座いません」

怒られてるのか褒められてるのか分からない。
外交って難しいな……。

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