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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
いつの間にか、丸裸
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ナヴェント公を宥めるのに忙しくて気づかなかったが、茶会には多くの学園生とその親が招かれていたらしい。
所属する派閥に関係なく、抽選で決まった招待客たち。
そんな多くの貴族が集まるこの場で、俺は事も有ろうに公爵様の背中に隠れたってわけだ。
そのせいで、俺はナヴェント公の庇護を受けているという事になり…
その公爵様は魔法が使える貴族からも魔法が使えない貴族からも一目置かれる存在であり…
そんな公爵様がバックについている俺は、もはやただの平民ではなく。
「ただの平民どころか、ただものじゃないからね?ギゼルは」
「うう…」
「自分の立場がちゃんと分かったでしょう?
僕とギゼルが結婚しても、何の問題も無い」
あの後、万雷の…まさに万雷の、拍手で…
カリーナ様なんかちょっと涙してたりして…
もう「嫌です」なんて言える雰囲気じゃなくて。
それに…
俺だって、メルバの事、好きかもって…
だ、だって、あんなことされて、俺、受け入れちゃってるし。
男同士だって事も、この世界に生まれ直したせいか、気にならないっていうか…
とても普通の事だったから。
それに、メルバなら…
信用できる気が、するんだ。
「大丈夫だよ、ギゼル。
君に『貴族らしさ』なんて誰も求めていない。
君は今までと同じ様に、最強の魔術師様でいてくれれば良いんだ」
「…うん」
だけどメルバは俺の不安が、身分の事だけだと思ってる。
年齢の事だって、単に詐称してるだけだと思ってる…だけど。
ちゃんと言わなきゃ、いけない。
自分の過去を…前世の、この世界じゃない世界の記憶があることを、ちゃんと受け止めてもらえるか、試さなきゃならない…
「…メルバ、ごめん。
俺、お前にずっと隠してた事…ある」
「うん」
「その、俺…」
メルバの目を見る。
途端に話すのが怖くなる。
どうしよう、嫌われたら、俺…。
あんなに派手なプロポーズを受けた後で、やっぱり無しっていうわけにはいかないだろうし。
いっそ墓場まで持っていく事にした方が…
「……俺、俺……その」
どうしよう、どうしたらいい?
ここから誤魔化す方法はある?
「……その、メルバ、俺……」
悩んで言い澱む。
葛藤する…自分の気持ちが固まらないうちに、プロポーズなんか受けなきゃ良いのに、何であの時俺は、渡されたそれを、受け取ってしまったんだろう。文机の上にある、あの小箱…その中に指輪が納められてる事ぐらい、分かってたのに。
「やっぱり、言えない?」
「……」
俺は小さく丸まって、メルバの問いに身を固くする。
メルバはそんな俺の頭を撫でて…言った。
「生まれる前の記憶が、あるんでしょ?」
あまりに唐突な言葉だった。
俺が話すかどうか、悩んでいた事そのもの。
それをメルバは、事も無げに…
「…………なんで?」
知って…もう、とっくに知ってて?
いつ、どこで、何で、どうして…?
「ごめんね、気になって、調べた」
メルバはばつが悪そうな顔で教えてくれた。
キャンディッシュ邸に匿われた初日、俺がうなされながらユートと何度も呼んだ事。
必ず見つけるって、言った事。
だから気になって、家に出入りしてた第27騎士団の面々に聞いた事……
根負けするまで問い詰めて、全てを聞いた事。
「良いんだ、前世で君が誰と結婚してたって。
その人との間に最愛の子がいたとしたって。
その子を今も探してるって知っても…」
それでもいい。
年齢も、前世も、何もかも関係ない…。
ただ好きで、愛してるんだと、メルバが言う。
「僕は君が好きだ。
この世界で、今一番君を愛してるのは僕だ。
それだけは自信がある」
「…………信じて、くれるのか?」
俺が恐る恐る尋ねると、メルバは笑顔で頷く。
「『ユート』を探し出すことは難しい。
だけど、もう一度…今度は君が産んだ子どもを、その腕に抱かせたい」
そう言うと、メルバは俺の顔をずっと…見て。
「愛してる。
僕の子どもを、産んでください、ギゼル」
2度目のプロポーズ。
こんな風に愛を伝えられたのは、初めてで。
前世でも、俺は妻に…こんなに愛を口に出して伝えた事、あっただろうか。
余命宣告があっても、なお…
愛を口に出しては、言えなくて。
なあ、さゆり。
俺は君の名前を呼ぶのも恥ずかしくて、数えるほどしか呼んであげられなかったね。
ごめんね。
こんな男で、ごめん。
次はもっと、良い男と一緒になって…
いっぱい愛の言葉を、かけてもらってね。
どうか、幸せに…幸せに、なってください。
「メルバは、格好いいな」
「……そう?」
嬉しそうに笑うメルバ。
その笑顔に…
「……すきだよ」
俺はやっぱり、蚊の鳴くような声でしか、返せない。
所属する派閥に関係なく、抽選で決まった招待客たち。
そんな多くの貴族が集まるこの場で、俺は事も有ろうに公爵様の背中に隠れたってわけだ。
そのせいで、俺はナヴェント公の庇護を受けているという事になり…
その公爵様は魔法が使える貴族からも魔法が使えない貴族からも一目置かれる存在であり…
そんな公爵様がバックについている俺は、もはやただの平民ではなく。
「ただの平民どころか、ただものじゃないからね?ギゼルは」
「うう…」
「自分の立場がちゃんと分かったでしょう?
僕とギゼルが結婚しても、何の問題も無い」
あの後、万雷の…まさに万雷の、拍手で…
カリーナ様なんかちょっと涙してたりして…
もう「嫌です」なんて言える雰囲気じゃなくて。
それに…
俺だって、メルバの事、好きかもって…
だ、だって、あんなことされて、俺、受け入れちゃってるし。
男同士だって事も、この世界に生まれ直したせいか、気にならないっていうか…
とても普通の事だったから。
それに、メルバなら…
信用できる気が、するんだ。
「大丈夫だよ、ギゼル。
君に『貴族らしさ』なんて誰も求めていない。
君は今までと同じ様に、最強の魔術師様でいてくれれば良いんだ」
「…うん」
だけどメルバは俺の不安が、身分の事だけだと思ってる。
年齢の事だって、単に詐称してるだけだと思ってる…だけど。
ちゃんと言わなきゃ、いけない。
自分の過去を…前世の、この世界じゃない世界の記憶があることを、ちゃんと受け止めてもらえるか、試さなきゃならない…
「…メルバ、ごめん。
俺、お前にずっと隠してた事…ある」
「うん」
「その、俺…」
メルバの目を見る。
途端に話すのが怖くなる。
どうしよう、嫌われたら、俺…。
あんなに派手なプロポーズを受けた後で、やっぱり無しっていうわけにはいかないだろうし。
いっそ墓場まで持っていく事にした方が…
「……俺、俺……その」
どうしよう、どうしたらいい?
ここから誤魔化す方法はある?
「……その、メルバ、俺……」
悩んで言い澱む。
葛藤する…自分の気持ちが固まらないうちに、プロポーズなんか受けなきゃ良いのに、何であの時俺は、渡されたそれを、受け取ってしまったんだろう。文机の上にある、あの小箱…その中に指輪が納められてる事ぐらい、分かってたのに。
「やっぱり、言えない?」
「……」
俺は小さく丸まって、メルバの問いに身を固くする。
メルバはそんな俺の頭を撫でて…言った。
「生まれる前の記憶が、あるんでしょ?」
あまりに唐突な言葉だった。
俺が話すかどうか、悩んでいた事そのもの。
それをメルバは、事も無げに…
「…………なんで?」
知って…もう、とっくに知ってて?
いつ、どこで、何で、どうして…?
「ごめんね、気になって、調べた」
メルバはばつが悪そうな顔で教えてくれた。
キャンディッシュ邸に匿われた初日、俺がうなされながらユートと何度も呼んだ事。
必ず見つけるって、言った事。
だから気になって、家に出入りしてた第27騎士団の面々に聞いた事……
根負けするまで問い詰めて、全てを聞いた事。
「良いんだ、前世で君が誰と結婚してたって。
その人との間に最愛の子がいたとしたって。
その子を今も探してるって知っても…」
それでもいい。
年齢も、前世も、何もかも関係ない…。
ただ好きで、愛してるんだと、メルバが言う。
「僕は君が好きだ。
この世界で、今一番君を愛してるのは僕だ。
それだけは自信がある」
「…………信じて、くれるのか?」
俺が恐る恐る尋ねると、メルバは笑顔で頷く。
「『ユート』を探し出すことは難しい。
だけど、もう一度…今度は君が産んだ子どもを、その腕に抱かせたい」
そう言うと、メルバは俺の顔をずっと…見て。
「愛してる。
僕の子どもを、産んでください、ギゼル」
2度目のプロポーズ。
こんな風に愛を伝えられたのは、初めてで。
前世でも、俺は妻に…こんなに愛を口に出して伝えた事、あっただろうか。
余命宣告があっても、なお…
愛を口に出しては、言えなくて。
なあ、さゆり。
俺は君の名前を呼ぶのも恥ずかしくて、数えるほどしか呼んであげられなかったね。
ごめんね。
こんな男で、ごめん。
次はもっと、良い男と一緒になって…
いっぱい愛の言葉を、かけてもらってね。
どうか、幸せに…幸せに、なってください。
「メルバは、格好いいな」
「……そう?」
嬉しそうに笑うメルバ。
その笑顔に…
「……すきだよ」
俺はやっぱり、蚊の鳴くような声でしか、返せない。
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