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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
ちょっとした洗礼
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入学試験をパスして改めて学園生になった俺は、一足早く寮へ入る事になった。
子どもが安心して生活できる場所か確認してくれ…
と、ちょっとしたよしみでとある大物貴族から直々にご指名があったんだ。
一般の寮生に紛れ込ませて、娘を学園に通わせるつもりなんだと。
そう、娘……つまり女の子!!
そりゃ気合い入れてチェックしないとって事で、完成早々に新しく地図に書かれた「学園寮」の場所にやってきたのは良いんだが…
「…やっぱり、これで合ってる…よな?」
地図が間違ってるんじゃないかって、散々探し回ってはみたがやっぱりこれが寮らしい。
「…まあ、男子学生の一人暮らし物件だと思えば…ありなのかもしれんが」
2階建ての文化住宅…と、言うか。
女の子が住む所としては、ちょっと…。
「取り敢えず…管理人に挨拶だな」
っと、管理人室…管理人室は…無しか。
……そうなると、鍵をどこで貰うんだ?
「まあいい、解錠の魔法くらい使える」
自分の部屋を探して入る。
一階の一番端…まあ、端から詰めるってことかな。
ドアノブに鍵は…いや、鍵自体無いってどうよ?
さて、部屋の中は…と。
「……ここまで来ると、いっそ清々しいな」
家具なし。
風呂なし。
便所なし。
他の部屋も見てみたが、同じだ。
そして、どこも風呂ではないし便所でもない。
「…共同風呂も便所も無くて、どうやって生活させる気なのかね?」
まさか、まだ作ってる途中か?
……にしちゃ資材も綺麗に片付いてるな。
「しょうがねえ、作るか」
便所の設営も風呂の設営も何百回とやってきたから、お手の物…ではあるがな。
俺は部屋に荷物を放り込み、魔法で扉を封じて、ついでに窓も封じてから外へ出た。
「んじゃ、やりますかね…!」
***
作業に没頭していたら、いつの間にか夕方。
うっかり昼飯を食い忘れたが、まあいい。
一応は形になったから、後はベッドを作って…
と考えていたら、向こうから知った顔が来た。
「ギゼル、ここにいたの!」
「メルバ……来なくて良いって言っただろ」
「そういうわけにはいかないよ!」
どうやら俺の事を心配して見に来たらしい。
全く、過保護なやつだ…やれやれ。
「……ところで、これ、何してるの?」
「ああ、風呂と便所を作ってたんだ。
凝り始めたら止まらなくなってな…やっぱり風呂は大きい方が良いだろ?便所も水洗にしたいし。
だから自動で湯が出る魔力集積回路と、風呂の残り湯を汲み上げて便所の水に再利用する装置と、便所に流した水を汚水処理場へ送る穴を掘ってた」
「……えっ?」
あーあ…困ったな。
いきなり心配事に遭遇させちまった。
でもまあ、宮廷にも報告しとかなきゃと思ってたから丁度いいか…。
「つーか、ここ本当に寮だよな?」
「えっ!?これ寮なの!?」
「もしかしたら倉庫かと思ったんだが…まあ、倉庫にしちゃ鍵もないから、寮で合ってるとは思うんだけど」
「……は?」
3日後には俺以外の寮生も入ってくるのに、早いとこ何とかしないと知らんぞ。
その寮生の中には、とある大物貴族の娘さんがいるんだぞ。
俺と違って、そっちは公爵様…
あ、そっちにも報告しなきゃならないのか。
まあ、ありのままを言うしかないよな…
可哀想だけど。
「……中を見ても?」
「ああ、俺の部屋は封じてるから、隣の部屋でも良ければ」
メルバは恐る恐る隣の部屋を明けた。
そして、暫く固まった後、いい笑顔で言った。
「……僕、ちょっと学園長にお話ししてくる」
「ん、ああ…行ってらっしゃい」
「後で迎えに来るから」
「そうか?有り難う」
どっちにしろ、この部屋では寝られない。
近くの宿を借りるか…。
せめて部屋の鍵があるとこでな。
「しかし、なかなかの洗礼だなぁ」
建てる気が無いなら資材だけでも置いといてくれりゃいいものを……
「ああ、そうだ…資材だけ貰って、こっちで建てればいいのか。
その方が安心だな…」
俺はメルバの後を追っかけて走った。
若いからすぐ走れる…有り難いね。
「もしかして…金が無かったのかね?」
よく考えりゃ、嫌がらせの為の建物なら最初っから掘っ立て小屋でも建てときゃ良い。
中途半端に2階建ての文化住宅立てるよりずっと安上がりだ…
うーん。
「さっさとメルバに追いつかないとな」
全く、妙に根が深そうな話だ。
初日から疲れるな…。
子どもが安心して生活できる場所か確認してくれ…
と、ちょっとしたよしみでとある大物貴族から直々にご指名があったんだ。
一般の寮生に紛れ込ませて、娘を学園に通わせるつもりなんだと。
そう、娘……つまり女の子!!
そりゃ気合い入れてチェックしないとって事で、完成早々に新しく地図に書かれた「学園寮」の場所にやってきたのは良いんだが…
「…やっぱり、これで合ってる…よな?」
地図が間違ってるんじゃないかって、散々探し回ってはみたがやっぱりこれが寮らしい。
「…まあ、男子学生の一人暮らし物件だと思えば…ありなのかもしれんが」
2階建ての文化住宅…と、言うか。
女の子が住む所としては、ちょっと…。
「取り敢えず…管理人に挨拶だな」
っと、管理人室…管理人室は…無しか。
……そうなると、鍵をどこで貰うんだ?
「まあいい、解錠の魔法くらい使える」
自分の部屋を探して入る。
一階の一番端…まあ、端から詰めるってことかな。
ドアノブに鍵は…いや、鍵自体無いってどうよ?
さて、部屋の中は…と。
「……ここまで来ると、いっそ清々しいな」
家具なし。
風呂なし。
便所なし。
他の部屋も見てみたが、同じだ。
そして、どこも風呂ではないし便所でもない。
「…共同風呂も便所も無くて、どうやって生活させる気なのかね?」
まさか、まだ作ってる途中か?
……にしちゃ資材も綺麗に片付いてるな。
「しょうがねえ、作るか」
便所の設営も風呂の設営も何百回とやってきたから、お手の物…ではあるがな。
俺は部屋に荷物を放り込み、魔法で扉を封じて、ついでに窓も封じてから外へ出た。
「んじゃ、やりますかね…!」
***
作業に没頭していたら、いつの間にか夕方。
うっかり昼飯を食い忘れたが、まあいい。
一応は形になったから、後はベッドを作って…
と考えていたら、向こうから知った顔が来た。
「ギゼル、ここにいたの!」
「メルバ……来なくて良いって言っただろ」
「そういうわけにはいかないよ!」
どうやら俺の事を心配して見に来たらしい。
全く、過保護なやつだ…やれやれ。
「……ところで、これ、何してるの?」
「ああ、風呂と便所を作ってたんだ。
凝り始めたら止まらなくなってな…やっぱり風呂は大きい方が良いだろ?便所も水洗にしたいし。
だから自動で湯が出る魔力集積回路と、風呂の残り湯を汲み上げて便所の水に再利用する装置と、便所に流した水を汚水処理場へ送る穴を掘ってた」
「……えっ?」
あーあ…困ったな。
いきなり心配事に遭遇させちまった。
でもまあ、宮廷にも報告しとかなきゃと思ってたから丁度いいか…。
「つーか、ここ本当に寮だよな?」
「えっ!?これ寮なの!?」
「もしかしたら倉庫かと思ったんだが…まあ、倉庫にしちゃ鍵もないから、寮で合ってるとは思うんだけど」
「……は?」
3日後には俺以外の寮生も入ってくるのに、早いとこ何とかしないと知らんぞ。
その寮生の中には、とある大物貴族の娘さんがいるんだぞ。
俺と違って、そっちは公爵様…
あ、そっちにも報告しなきゃならないのか。
まあ、ありのままを言うしかないよな…
可哀想だけど。
「……中を見ても?」
「ああ、俺の部屋は封じてるから、隣の部屋でも良ければ」
メルバは恐る恐る隣の部屋を明けた。
そして、暫く固まった後、いい笑顔で言った。
「……僕、ちょっと学園長にお話ししてくる」
「ん、ああ…行ってらっしゃい」
「後で迎えに来るから」
「そうか?有り難う」
どっちにしろ、この部屋では寝られない。
近くの宿を借りるか…。
せめて部屋の鍵があるとこでな。
「しかし、なかなかの洗礼だなぁ」
建てる気が無いなら資材だけでも置いといてくれりゃいいものを……
「ああ、そうだ…資材だけ貰って、こっちで建てればいいのか。
その方が安心だな…」
俺はメルバの後を追っかけて走った。
若いからすぐ走れる…有り難いね。
「もしかして…金が無かったのかね?」
よく考えりゃ、嫌がらせの為の建物なら最初っから掘っ立て小屋でも建てときゃ良い。
中途半端に2階建ての文化住宅立てるよりずっと安上がりだ…
うーん。
「さっさとメルバに追いつかないとな」
全く、妙に根が深そうな話だ。
初日から疲れるな…。
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