80 / 218
【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
チャラ令息の華麗なる転身
しおりを挟む
僕は宮廷官吏、メルバ・キャンディッシュ。
毎日ちゃんと出勤して仕事して、色んな人に会って真面目な話をする。
話の内容はもちろん「この国をより善くする為に何が必要か」って事。
ギゼルもいっぱい案をくれるんだけど、それをそのまま言う訳にはいかない。
それを実現した場合に起きるだろう「良い事・悪い事」を想定したり、実現に必要なものを考えたり…
しなきゃいけない事が山ほどある。
だから沢山の人と真面目な話をするし、沢山の文献や資料に埋もれる事もある。
やたらと計算している日もあるし…
ふふん、これでも算学は得意なんだ!
出来る男メルバ・キャンディッシュ!
この時のために家族にすら本当の姿を見せなかった切れ者、メルバ・キャンディッシュ!!
そうやって「遊び人は仮の姿、真実は貴族の鑑」という印象を着々と周りに植え付けているよ。
だけど…
「だけど、それだけじゃ足りない…」
来月からはそこに「一途な男」っていう印象を加えるべく、僕は労務課に申請書を提出した。
***
「…で、来月から毎日午後休だと?」
「はい、ギゼル殿が学園に復学するにあたり、多数の不安な点が確認されております。
私が侯爵家の威厳をもって、その解消に当たるのが一番効果的ではないかと」
「…で?本音は」
「毎日会いたい。
会ってイチャイチャしたい。
あわよくばキスしてセックスしたい」
「まだキスもしてないのか」
「……お触りしかしてない」
「普通逆じゃね」
申請書は意外と早くリブリーのところへ着いたらしく、朝から執務室に呼び出された。
っていうか隣の部屋なんだからこっちに来れば良いのに…
きっと少し怒ってるんだな。
「魔法無し貴族はもうみんな、僕とギゼルが結婚する事を歓迎してくれてるんだ。
最強の魔術師をこっちの派閥に引き入れるのにも必要だ、ってね」
「ほー、あの宴のおかげだな?」
「そうかもね!」
けど、本当はそれだけじゃない。
僕を変えてくれたのは間違いなくリブリーだ。
リブリーが僕に「見せかけだけでも真面目になれ」って言ってくれたから。
だから、僕はギゼルに「見せかけだけじゃない」ところを見せたくなったんだ。
「…本当にありがとう、リブリー」
「殊勝になるのは無事に結婚出来てからにしろ。
気持ち悪い」
「なんだよその言い方~!…ってね。
後、魔法有り貴族共を牽制したいってのもある…
堂々とうちに求婚しに来る馬鹿は湧くし」
「ああ…それは、すまん」
静養中も、ギゼルがうちにいる事は特に秘密にしていなかった。
だから変なのが次から次へと…
「ギゼル殿を囮にして、残党を処理する計画だったからな」
「それは分かってたけどさ、もうウンザリだよ…」
使用人を買収しようとするとか、不法侵入するとか、そういうのは捕まえて牢屋に入れられるけどさ。
求婚してくるのはどうしようもないじゃない?
「まさか向こうがそういう方向に作戦変更するとは思わなかったよ…
あれだけの事しといて、厚顔無恥すぎない?
僕としては、再起不能になる程度に悪い噂をたててあげるくらいしか出来ないからさ」
「…お前なぁ」
「半分くらい本当の事だもん…でもさ」
魔法が使えても驕る事なく、真面目にやってきた貴族もいるのは分かってる。
そういう人たちは少しずつ拾い上げていこうって話も出てる。
具体的には王宮勤めにしてそこそこの地位に付けようって話…僕がそうしているようにね。
「魔法が使えるから悪い、ってならない様にしないといけないね」
「魔法が使えなくても悪い奴はいるしな」
そう、魔法なし貴族でも金欲しさに備蓄を売り払ったり民に重税を課したりしてた奴もいる。
だけど、魔法が使えるからこそ、それを十二分に発揮して魔物の被害から領地を守った領主もいる。
そういう領主様は、領民から「元の領主様に戻してくれ」って嘆願書も来るし…
って、そんな人一人しかいないんだけどね!
魔物の大増殖が陸だけで済んだのは、その人のおかげって言われてるんだ。
滅多に領地からお出にならず、国事にも殆ど参加されないから、僕もリブリーの戴冠式でお見かけした程度にしか知らないんだけど…。
「あのさ、リブリー?僕、思うんだけど。
海の公爵様だけ例外ってことで良くない?」
「……海だからか?」
「うん、海だから」
「…………考えておく」
陸とは違うルールでもまあ…いいかなって。
っていうか、あの領を代わりに治められる人がいないもんな…。
あっ、そうそう。
「そういうわけだから、来月から午後休むね」
「誰が許可すると思ってんだこの馬鹿」
「むしろ何で許可してくれないのかと」
「お前の!仕事を!誰がするんだ!!」
「それは……リブリー?」
「てめえぶっ殺すぞ」
「やだこわーい」
……と言いつつ早上がりの許可をくれるあたり、リブリーはやっぱり優しいんだよね。
いい友達を持ったなぁ、僕!
毎日ちゃんと出勤して仕事して、色んな人に会って真面目な話をする。
話の内容はもちろん「この国をより善くする為に何が必要か」って事。
ギゼルもいっぱい案をくれるんだけど、それをそのまま言う訳にはいかない。
それを実現した場合に起きるだろう「良い事・悪い事」を想定したり、実現に必要なものを考えたり…
しなきゃいけない事が山ほどある。
だから沢山の人と真面目な話をするし、沢山の文献や資料に埋もれる事もある。
やたらと計算している日もあるし…
ふふん、これでも算学は得意なんだ!
出来る男メルバ・キャンディッシュ!
この時のために家族にすら本当の姿を見せなかった切れ者、メルバ・キャンディッシュ!!
そうやって「遊び人は仮の姿、真実は貴族の鑑」という印象を着々と周りに植え付けているよ。
だけど…
「だけど、それだけじゃ足りない…」
来月からはそこに「一途な男」っていう印象を加えるべく、僕は労務課に申請書を提出した。
***
「…で、来月から毎日午後休だと?」
「はい、ギゼル殿が学園に復学するにあたり、多数の不安な点が確認されております。
私が侯爵家の威厳をもって、その解消に当たるのが一番効果的ではないかと」
「…で?本音は」
「毎日会いたい。
会ってイチャイチャしたい。
あわよくばキスしてセックスしたい」
「まだキスもしてないのか」
「……お触りしかしてない」
「普通逆じゃね」
申請書は意外と早くリブリーのところへ着いたらしく、朝から執務室に呼び出された。
っていうか隣の部屋なんだからこっちに来れば良いのに…
きっと少し怒ってるんだな。
「魔法無し貴族はもうみんな、僕とギゼルが結婚する事を歓迎してくれてるんだ。
最強の魔術師をこっちの派閥に引き入れるのにも必要だ、ってね」
「ほー、あの宴のおかげだな?」
「そうかもね!」
けど、本当はそれだけじゃない。
僕を変えてくれたのは間違いなくリブリーだ。
リブリーが僕に「見せかけだけでも真面目になれ」って言ってくれたから。
だから、僕はギゼルに「見せかけだけじゃない」ところを見せたくなったんだ。
「…本当にありがとう、リブリー」
「殊勝になるのは無事に結婚出来てからにしろ。
気持ち悪い」
「なんだよその言い方~!…ってね。
後、魔法有り貴族共を牽制したいってのもある…
堂々とうちに求婚しに来る馬鹿は湧くし」
「ああ…それは、すまん」
静養中も、ギゼルがうちにいる事は特に秘密にしていなかった。
だから変なのが次から次へと…
「ギゼル殿を囮にして、残党を処理する計画だったからな」
「それは分かってたけどさ、もうウンザリだよ…」
使用人を買収しようとするとか、不法侵入するとか、そういうのは捕まえて牢屋に入れられるけどさ。
求婚してくるのはどうしようもないじゃない?
「まさか向こうがそういう方向に作戦変更するとは思わなかったよ…
あれだけの事しといて、厚顔無恥すぎない?
僕としては、再起不能になる程度に悪い噂をたててあげるくらいしか出来ないからさ」
「…お前なぁ」
「半分くらい本当の事だもん…でもさ」
魔法が使えても驕る事なく、真面目にやってきた貴族もいるのは分かってる。
そういう人たちは少しずつ拾い上げていこうって話も出てる。
具体的には王宮勤めにしてそこそこの地位に付けようって話…僕がそうしているようにね。
「魔法が使えるから悪い、ってならない様にしないといけないね」
「魔法が使えなくても悪い奴はいるしな」
そう、魔法なし貴族でも金欲しさに備蓄を売り払ったり民に重税を課したりしてた奴もいる。
だけど、魔法が使えるからこそ、それを十二分に発揮して魔物の被害から領地を守った領主もいる。
そういう領主様は、領民から「元の領主様に戻してくれ」って嘆願書も来るし…
って、そんな人一人しかいないんだけどね!
魔物の大増殖が陸だけで済んだのは、その人のおかげって言われてるんだ。
滅多に領地からお出にならず、国事にも殆ど参加されないから、僕もリブリーの戴冠式でお見かけした程度にしか知らないんだけど…。
「あのさ、リブリー?僕、思うんだけど。
海の公爵様だけ例外ってことで良くない?」
「……海だからか?」
「うん、海だから」
「…………考えておく」
陸とは違うルールでもまあ…いいかなって。
っていうか、あの領を代わりに治められる人がいないもんな…。
あっ、そうそう。
「そういうわけだから、来月から午後休むね」
「誰が許可すると思ってんだこの馬鹿」
「むしろ何で許可してくれないのかと」
「お前の!仕事を!誰がするんだ!!」
「それは……リブリー?」
「てめえぶっ殺すぞ」
「やだこわーい」
……と言いつつ早上がりの許可をくれるあたり、リブリーはやっぱり優しいんだよね。
いい友達を持ったなぁ、僕!
81
お気に入りに追加
426
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる