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ざまぁなど知らぬ!
王家の婿としての自覚
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ミリエッタさんに言われて、俺とセジュールは部屋に戻った。
部屋に戻るなりセジュールが言った。
「お兄様、ミリエッタさんの仰る事、どう思います?」
「ん、ああ…結婚しても家族は家族って話?」
「はい、兄様はどう思われますか?」
「そりゃまあそうだよね、って…
俺、ずっとミリエッタさんの言うような事を、正しいと思ってた…から」
やっぱり、俺の結婚観は異質なのかな。
うちは他の家と比べて特殊だからさ。
親父も俺も転生者だし、基本的人権ってやつが無い世界を変だと思うタイプだから。
それに、親父には実家が無い。
実家と婚家の関係なんか、最初から無いんだ。
だからメルバ父さんも、親父に実家がどうこうの話なんてしない。
それに親父は、何をしても許されるしな。
あんまり自覚は無いみたいだけど…。
「王家の婿としてあり得ない、ってご批判はよく聞くし、相応しくないって話もよく聞くよ。
実力を傘に着てやりたい放題だ、とかさ」
「…そんなに?」
「慎みが足りないとか、謙虚さが無いとか、下品だとか、まあ…ご指導したい人が沢山いるんだよ」
王家の一員になる努力をしろ。
王家の婿はこうしないと駄目だ。
王家の婿は、王家の婿は、王家の婿は…。
親父くらいの火力があれば、全員が黙るのに。
「だから、あんた方がやればいいじゃんって。
俺はこの国から出て…せっかくなら色々見たいし、自分にしか出来ない旅がしたいなって。
だから、バックパッカーに……俺は、一人でどこにでも行ける旅人になりたかったんだ」
「兄様…」
慎み深く、目立たず、王を支え、子どもを産み、次世代の育成に務め、決して表に出てくるな。
魔法の道具作りみたいな、汚れる手仕事は禁止だ。
お前が立派な婿殿になる為に必要な事だ。
お前の為を思って言ってやってる…
それ全部、本気だったんだな。
「だから、決められた相手と結婚させられる上に、一挙手一投足に文句言われながら好きな事も出来なくて家族にも会えないんだったら、結婚なんかしないほうがまし…っていうのは、そうだと思うよ」
ミリエッタさんの言う事はごもっともだ。
結婚が人生の墓場になるなら、しないほうがまし。
「うちはさ、メルバ父さんが王様の側近してるし、親父は誰も逆らえない程の魔力持ちだし、何とでもなると思ってたんだけど…
考えてみたら、自分の事だけじゃなくて他の人の事も考えるのが王家の婿としての務めなのかもな」
俺は何となく、セジュールの頭を撫でる。
可愛い弟、俺の為に領主の地位を捨てても良いと言ってくれた弟。
「セジュールが側にいる。
メルバ父さんも王宮にいて、親父を追い返せる人はいない。
俺は恵まれてる…だから、考えた事無かった。
多くの人にとって結婚は搾取と同じなんだったら、許せない」
「お兄様…!」
セジュールが俺に抱き着く。
「僕、お兄様と過ごす時間が減って、寂しいです。
ご結婚なさったら仕方ないと諦めもつきます、でもまだ結婚してないのに…同じベッドで寝られるのも、お風呂に入れるのも、あと少ししかないのに、こんなんじゃ…」
そうか、セジュールには「王家の婿になる」という意味が分かっているんだ。
だから俺よりナーバスになってるんだ。
「分かった。
俺、出来る限りセジュールと一緒にいるよ。
遅く帰って来ても、同じベッドで寝る。
お風呂も出来る限り、一緒に入ろう」
「お兄様……!」
自分ばっかじゃなくて、家族の事も考えなきゃ。
そして自分以外の人、そう、国民の事も…
俺は、王子様と結婚するんだから。
俺たちを支えてくれる人たちの為に働くんだ。
なるべくたくさんの人が幸せになるように…
最大多数の最大幸福から、はみ出た人も救うんだ。
「俺は、俺の思う『王家の婿』になる。
だから、自分の家族も、大事にしないとな」
「お兄様…!!」
大事なものに順位なんかない。
全部一番大事にしていこう。
今度生まれる兄弟も、同じ様に…。
「じゃあセジュール、そろそろお風呂に入ろうか」
「はい、おにいさま!!」
俺の言葉に、いそいそと風呂の準備をするセジュールを見ながら、ふと気がついた。
親父のお腹にいる子が、男だって決まったわけじゃない事に…。
部屋に戻るなりセジュールが言った。
「お兄様、ミリエッタさんの仰る事、どう思います?」
「ん、ああ…結婚しても家族は家族って話?」
「はい、兄様はどう思われますか?」
「そりゃまあそうだよね、って…
俺、ずっとミリエッタさんの言うような事を、正しいと思ってた…から」
やっぱり、俺の結婚観は異質なのかな。
うちは他の家と比べて特殊だからさ。
親父も俺も転生者だし、基本的人権ってやつが無い世界を変だと思うタイプだから。
それに、親父には実家が無い。
実家と婚家の関係なんか、最初から無いんだ。
だからメルバ父さんも、親父に実家がどうこうの話なんてしない。
それに親父は、何をしても許されるしな。
あんまり自覚は無いみたいだけど…。
「王家の婿としてあり得ない、ってご批判はよく聞くし、相応しくないって話もよく聞くよ。
実力を傘に着てやりたい放題だ、とかさ」
「…そんなに?」
「慎みが足りないとか、謙虚さが無いとか、下品だとか、まあ…ご指導したい人が沢山いるんだよ」
王家の一員になる努力をしろ。
王家の婿はこうしないと駄目だ。
王家の婿は、王家の婿は、王家の婿は…。
親父くらいの火力があれば、全員が黙るのに。
「だから、あんた方がやればいいじゃんって。
俺はこの国から出て…せっかくなら色々見たいし、自分にしか出来ない旅がしたいなって。
だから、バックパッカーに……俺は、一人でどこにでも行ける旅人になりたかったんだ」
「兄様…」
慎み深く、目立たず、王を支え、子どもを産み、次世代の育成に務め、決して表に出てくるな。
魔法の道具作りみたいな、汚れる手仕事は禁止だ。
お前が立派な婿殿になる為に必要な事だ。
お前の為を思って言ってやってる…
それ全部、本気だったんだな。
「だから、決められた相手と結婚させられる上に、一挙手一投足に文句言われながら好きな事も出来なくて家族にも会えないんだったら、結婚なんかしないほうがまし…っていうのは、そうだと思うよ」
ミリエッタさんの言う事はごもっともだ。
結婚が人生の墓場になるなら、しないほうがまし。
「うちはさ、メルバ父さんが王様の側近してるし、親父は誰も逆らえない程の魔力持ちだし、何とでもなると思ってたんだけど…
考えてみたら、自分の事だけじゃなくて他の人の事も考えるのが王家の婿としての務めなのかもな」
俺は何となく、セジュールの頭を撫でる。
可愛い弟、俺の為に領主の地位を捨てても良いと言ってくれた弟。
「セジュールが側にいる。
メルバ父さんも王宮にいて、親父を追い返せる人はいない。
俺は恵まれてる…だから、考えた事無かった。
多くの人にとって結婚は搾取と同じなんだったら、許せない」
「お兄様…!」
セジュールが俺に抱き着く。
「僕、お兄様と過ごす時間が減って、寂しいです。
ご結婚なさったら仕方ないと諦めもつきます、でもまだ結婚してないのに…同じベッドで寝られるのも、お風呂に入れるのも、あと少ししかないのに、こんなんじゃ…」
そうか、セジュールには「王家の婿になる」という意味が分かっているんだ。
だから俺よりナーバスになってるんだ。
「分かった。
俺、出来る限りセジュールと一緒にいるよ。
遅く帰って来ても、同じベッドで寝る。
お風呂も出来る限り、一緒に入ろう」
「お兄様……!」
自分ばっかじゃなくて、家族の事も考えなきゃ。
そして自分以外の人、そう、国民の事も…
俺は、王子様と結婚するんだから。
俺たちを支えてくれる人たちの為に働くんだ。
なるべくたくさんの人が幸せになるように…
最大多数の最大幸福から、はみ出た人も救うんだ。
「俺は、俺の思う『王家の婿』になる。
だから、自分の家族も、大事にしないとな」
「お兄様…!!」
大事なものに順位なんかない。
全部一番大事にしていこう。
今度生まれる兄弟も、同じ様に…。
「じゃあセジュール、そろそろお風呂に入ろうか」
「はい、おにいさま!!」
俺の言葉に、いそいそと風呂の準備をするセジュールを見ながら、ふと気がついた。
親父のお腹にいる子が、男だって決まったわけじゃない事に…。
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