【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息

チャラ男令息、メルバ 1

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「メルバ、今日こそ真面目に釣書を、」
「そんなもの、学園を卒業してからで良いでしょう?では行ってまいります」
「メルバ!」

キャンディッシュ侯爵家お決まりの朝の一幕は、当主のミルコ・キャンディッシュと息子のメルバの言い争いから始まる…

なんてね。

僕が18歳になってからというもの、父上はとにかく釣書、釣書…と口煩くなった。

大体学園に行けば「釣書を送った」って奴が寄ってくるんだから、そんなもの見なくても人となりやそいつの家の事くらい知ってる。

その上で言う。

どいつも「抱けなくはない」けど「抱きたいわけではない」。
心を揺さぶられないんだよね。
まあ、政略結婚なんて「抱けなくはない」程度でするもんなんだろうけどさ…

今からそんな我慢を強いられるなんて、嫌。

だってまだ10代だよ?
今からそんな事達観しなくても良いじゃない。
だから結婚までは色んな子と遊ぶつもりだし、それを許してくれる相手じゃなきゃ結婚しないって公言もしてる。

まあ、誠意のない奴だとか、下半身が緩い奴とか、色々とお叱りを受けたりもするんだけどさ。

そもそも「政略」の現実より「結婚」に夢持っちゃう人とはやってけないかな…

だって、貴族ぼくらに必要なのは現実の方でしょ。

夢なんてのは、それこそ、この前帰ってきた第27騎士団みたいな人たちの仕事さ。
膨大な数と種類の魔物を倒して凱旋し、全員が陞爵したり叙爵したり…

そうそう、農民から騎士になった人がいたんだっけ?

そういう人が夢を担当する係なの。
僕らみたいに安全なとこで計算したり文章書いたりする人間は、夢を見たい大衆の為に現実を見るのが仕事…

「メルバ様、学園に着きまして御座います」
「えっもう?…仕方ないね」
「行ってらっしゃいませ」

ちょっと考え事をしてたら着いちゃったな…
あーあ、あんまり授業出る気分じゃないや。

「図書館で昼寝でもしようかな…」

僕は軽い気持ちで図書館へ向かった。
そこで運命の出会いをするなんて、考えもしないまま…。

***

図書館に入り、受付に学生証を見せてから書架へ行き、適当な本を取って閲覧机へ向かう。
いてるからどこでも座り放題だ。
あの柱の陰なんかは一層暗くて寝やすそう…

僕はそこへ狙いを定め机の間を縫う様に、

「うわっ」
「あ、すいません」
「いえ、こちらこ…そ」

僕はその少年の存在に気付かず、うっかり彼の鞄を蹴ってしまった。
だから、

「ごめんね、鞄を蹴ってしまって。
 お詫びにお昼を奢るよ、何年何組?迎えに行くから教えてくれないかな、あと、名前も」

と声を掛けた。

だって、仕方ないんだ。
彼を見た瞬間、本能が動いたんだから。

この子しかいない!って…

だってね、まず可愛い。
結論から言うと可愛い。
最初から言っても可愛い。

柔らかそうな蒼髪は短く切りそろえられて、まるで騎士に憧れる男の子みたいで。
藍の大きな瞳は蠱惑的な宝石のように陰を含んでいて。
木綿のように白い肌は自然な美しさを湛えて。
その細い首は、簡単に手折れてしまいそう。

守ってあげたい。
そしてこの子のすべてが欲しい。

そう思ったんだ。

僕はニコニコして彼の言葉を待った。
彼は静かに言った。

「3-5、ギゼル。
 鞄に関して詫びは不、」
「分かった、3年5組だね。
 迎えに行くから待ってて!」
「いや、」
「また後でね!」

断られるのは想定内。
だから迅速に行動し、断れない状況を作る。
強引な誘いには慣れている…

誘う側だけじゃなく、誘われる側としてもね!

僕はさっさと彼から離れ、1人の受付に本を借りる手配を頼み、もう1人に聞く。

「あそこにいる彼、いつもこの曜日のこの時間にはここにいるのかな」
「ええ、そうです」
「ふーん…他には?」
「他には、とは?」
「他にあの子がここにいる時間と曜日は?」
「…存じ上げません」
「ふーん、良いのかなぁ?そんな態度で。
 嘘つきは泥棒の始まりだよ?」
「…存じ上げません、と言ったら存じ上げません。
 お帰りください」

ちっ、何だ…お堅いな。
まあいい、昼食の時に本人から聞くさ。

「~♪」

待っててね、ギゼル。
必ず君を迎えに行くから…。
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