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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
チート魔術師の過去 2
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前世を思い出したタイミングが良かったのか、よくある「魔力暴走で気を失う」展開にはならず、俺は子どもたちを守りながら馬車が行った方角へと進んだ。
子どもの足だからゆっくりとしか進めなかったけれど、魔物を倒したおかげで何とか食い物にはありつけた。
水は魔法で出した。
火も魔法で出した。
魔物の固い肉は風魔法で小さく切り刻んで食べやすくして、歩きすぎて痛くなった子どもたちの脚には回復魔法をかけた。
「ぎぜるにいちゃん、まほうつかいだったの?」
「うん、そうみたい…」
「村のまものも、倒せる?」
「どうだろうな…」
子どもたちは、どうやら死なずに済むようだと分かったらしく、俺を質問攻めにし始めた。
「どうして今まで、まほうできなかったの?」
「さあなぁ…もっと早く魔法が使えてたら、みんな助かったのにな」
「…うん」
みんな、俺のじいちゃん達が山へ行ったのを知っていた。
何故なら、みんなのじいちゃん達も同じく山へ入ったからだ。
「おじーちゃんも、とつぜんまほうがつかえてるといいな…」
「そうだな…」
「いきてるといいな」
「うん」
悲しい気持ちになりながら、街の方へ歩く。
村にはもう戻れないのだと、子どもたちには分かっていた。
もちろん、俺にも。
そうして、みんなで夜通し歩いた。
出てきた魔物は魔法で殺した。
朝日が昇るまでそうして前に進んで…
「ぎぜるにいちゃん…もう、あるけないよ」
「分かった、休もう。
みんな固まれ。
出来るかどうか分からないけど、結界の魔法を試してみる」
ここまで色々魔法を使って、使い方を何となく理解した俺は、子どもたちを包み込むように「なにもかもを跳ね返す魔法のドーム」を作った…
作れて、しまった。
「ありがとう、ぎぜるにいちゃん」
「うん、起きたらまたたくさん歩くから、しっかり休むんだぞ」
子どもたちは団子になって、俺を中心にして文字通り身を寄せ合って眠った。
俺は見張りをするために起きていようと思ったけれど、子どもたちの体温が温かくて…
一緒になって、寝てしまった。
***
「にいちゃん、おきて、おきて」
子どもたちに揺すられて、俺は跳び起きた。
「やべ、ねてたっ!?」
焦って立ち上がろうとして、足がガクガクで立ち上がれずへたり込む俺に、子どもたちが言った。
「このひとたちが、けっかいやめてって」
「うん…?」
促されて周りを見てみれば、立派だけど傷だらけの鎧を着てる人が2人いて…
「この結界、本当に君がやったの?」
「あ…はい」
「じゃ、解除もできるよな?やってよ」
一体彼らは何なのだろう。
味方なのか敵なのか…
新しい人買いかもしれない。
「…先にあなた方の素性を教えてください」
俺は警戒心からそう彼らに尋ねた。
すると『結界を解除して』と言った男が言った。
「ははっ…生意気な奴だな!
い~から結界を解けってば」
俺は言い返した。
「鎧を着た人買いもいるかもしれませんので」
すると、もう一人の男が怒りを露わにした。
「何だと!?」
……まあ、至極当然の事だろう。
子どもが偉そうに痛くもない腹を探ってくれば、どんな大人でも怒るものだ。
だが、恐ろしい目に会わされそうなら、相手が冷静になるまで結界を維持し続ければいいだけの事…
俺は頭の中でそこまで算段していたのだけど。
「君らの村には、人買いまで出ているのか…!?」
彼の怒りは俺に向いていなくて…
それどころか、地面に膝をついて…
「もっと早い時期に、討伐に出られていたら…っ」
そう言って、彼は拳を地面に叩きつけたのだった。
子どもの足だからゆっくりとしか進めなかったけれど、魔物を倒したおかげで何とか食い物にはありつけた。
水は魔法で出した。
火も魔法で出した。
魔物の固い肉は風魔法で小さく切り刻んで食べやすくして、歩きすぎて痛くなった子どもたちの脚には回復魔法をかけた。
「ぎぜるにいちゃん、まほうつかいだったの?」
「うん、そうみたい…」
「村のまものも、倒せる?」
「どうだろうな…」
子どもたちは、どうやら死なずに済むようだと分かったらしく、俺を質問攻めにし始めた。
「どうして今まで、まほうできなかったの?」
「さあなぁ…もっと早く魔法が使えてたら、みんな助かったのにな」
「…うん」
みんな、俺のじいちゃん達が山へ行ったのを知っていた。
何故なら、みんなのじいちゃん達も同じく山へ入ったからだ。
「おじーちゃんも、とつぜんまほうがつかえてるといいな…」
「そうだな…」
「いきてるといいな」
「うん」
悲しい気持ちになりながら、街の方へ歩く。
村にはもう戻れないのだと、子どもたちには分かっていた。
もちろん、俺にも。
そうして、みんなで夜通し歩いた。
出てきた魔物は魔法で殺した。
朝日が昇るまでそうして前に進んで…
「ぎぜるにいちゃん…もう、あるけないよ」
「分かった、休もう。
みんな固まれ。
出来るかどうか分からないけど、結界の魔法を試してみる」
ここまで色々魔法を使って、使い方を何となく理解した俺は、子どもたちを包み込むように「なにもかもを跳ね返す魔法のドーム」を作った…
作れて、しまった。
「ありがとう、ぎぜるにいちゃん」
「うん、起きたらまたたくさん歩くから、しっかり休むんだぞ」
子どもたちは団子になって、俺を中心にして文字通り身を寄せ合って眠った。
俺は見張りをするために起きていようと思ったけれど、子どもたちの体温が温かくて…
一緒になって、寝てしまった。
***
「にいちゃん、おきて、おきて」
子どもたちに揺すられて、俺は跳び起きた。
「やべ、ねてたっ!?」
焦って立ち上がろうとして、足がガクガクで立ち上がれずへたり込む俺に、子どもたちが言った。
「このひとたちが、けっかいやめてって」
「うん…?」
促されて周りを見てみれば、立派だけど傷だらけの鎧を着てる人が2人いて…
「この結界、本当に君がやったの?」
「あ…はい」
「じゃ、解除もできるよな?やってよ」
一体彼らは何なのだろう。
味方なのか敵なのか…
新しい人買いかもしれない。
「…先にあなた方の素性を教えてください」
俺は警戒心からそう彼らに尋ねた。
すると『結界を解除して』と言った男が言った。
「ははっ…生意気な奴だな!
い~から結界を解けってば」
俺は言い返した。
「鎧を着た人買いもいるかもしれませんので」
すると、もう一人の男が怒りを露わにした。
「何だと!?」
……まあ、至極当然の事だろう。
子どもが偉そうに痛くもない腹を探ってくれば、どんな大人でも怒るものだ。
だが、恐ろしい目に会わされそうなら、相手が冷静になるまで結界を維持し続ければいいだけの事…
俺は頭の中でそこまで算段していたのだけど。
「君らの村には、人買いまで出ているのか…!?」
彼の怒りは俺に向いていなくて…
それどころか、地面に膝をついて…
「もっと早い時期に、討伐に出られていたら…っ」
そう言って、彼は拳を地面に叩きつけたのだった。
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