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ざまぁなど知らぬ!

火力VS権力 

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親父の声で目を覚ますと、そこは修羅場だった。

真っ赤な顔で何か怒って…

「あっ!!」

やばい、俺、服着てない!

「ちがう、親父っ、これは!」
「ちがわない!連れて帰るっ!!」
「してない、してないからっ!」

ぷんすこ怒る親父。
何とか宥めないと大変な事に…

「いい加減子離れしたらどうだ、ギゼル殿」
「!!!」

ぎらつく目で殿下を睨む親父。
やばい、今度は殿下を止めないと大変な事に!

「ロンバードは俺の息子だ!」
「ああ、だがすでに俺の婚約者であり、各国から頼りにされる新進気鋭の魔術師だ」
「うるさい!俺の息子なのには変わりない!」
「左様、だが多くの肩書を持つ一人の人間でもある」
「だからなんだ!不純だ、不純同性交友だっ!!貴族がしきたりを守らないなんて、」
「メルバに同じ事が言えるか?」
「ぅぐっ」

どうやらメルバ父さんの若気の至りに巻き込まれたらしい親父。
うん、まあ、うん…
メルバ父さんを見てれば分かるよ。
自分の息子すら牽制するあの態度。

それに色々話も聞いちゃったし…
押せ押せで押し倒されちゃったんだろうな。
ほら、顔が真っ赤…

「う、う、うるさーーい!!」

あ、やばい。
これ親父が爆発するやつだ!

「親父!ストップ!ダリル様も!!」
「ロンバードは黙ってなさい!!」
「そうだ、これは俺と義父殿の問題」
「まだ義父じゃない!!」

あ、駄目だこれは。
仕方ない、親父を魔法結界で包んで被害を食い止めるしか!

「魔法結界、親父を包み込め!」
「ロンバード!」
「ダリル様の部屋に魔法障壁、二重展開!
 ダリル様と俺に魔法結界、三重展開!!」
「こっちへ来なさい!!」

親父の魔法がさく裂する直前に、俺はダリル様に飛びつき魔法を展開する。
当然ながら俺の魔法結界なんか簡単にぶち壊すもんで、魔法結界と魔法障壁の重ね掛けでダリル様と部屋を保護。

「何遠慮なくぶっ放してんだよ親父!」
「ロンバード、そいつを庇うのか!?」
「人死にが出たら困るだろ!?」
「他人の事など知らん!!」

やばい、本気でブチギレてる。
ギリギリで被害が出るのは抑えたけど、これ以上やるとただじゃ済まない…
なのにダリル様は親父をさらに煽る。

「感情の制御もできんとは、それでも大魔術師か?」
「ダリル様もやめてください!」

何とかこの場を治めないと、マジで戦争になる。
この寮には各国の要人が集まってる、その人たちに何かあったら…!!

なのにダリル様はまだ怒る。

「うるさい、俺だって限界だ!!
 いつまで我慢させられればいいんだ、ロンは俺のものだっ!!」
「黙れ、ロンバードは俺の息子だ!!」
「ああもう!」

狭い部屋の中で、親父とガチ勝負することになるなんて!?


***


…寮の一室でそこそこの魔法合戦をやった結果、俺も親父も魔力が尽きた。

そこまでしてようやく我に返った親父は、明日修復用ゴーレムを連れて来る、と言って去って行った。

「…いい勝負だったな」
「だりる様…寮は…」
「問題無い、見物人にも怪我は無い」
「良かった…」

守備に徹したのが功を奏したらしい。
何とか引き分けに持ち込めて良かった…。

「ダリル様、今日はもう帰ります。
 ちょっと父の様子が気になるので」
「ふん、子離れできん父親など放っておけば良い」
「そんな事言わないで、仲良くしてくださいよ」

ダリル様のお怒りはごもっともだけど、俺は家族の事も大事にしたいんだ。
それに…

「大魔術師と王家が対立するような事になったら、俺どうしたらいいか分かんないじゃないですか」
「……」
「ちゃんと話をして、解決してきますから…
 親父だって、別に結婚自体を否定してはいないと思うし……ね?」

俺はダリル様を諭すように言った。
ダリル様はため息をつきながら一言、

「……分かった」

と言った後、にやりと笑って、

「俺と結婚するために父親を説得するというなら仕方ない」

…俺のほっぺにチュウをした。

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