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ざまぁなど知らぬ!

ロンバード争奪戦 ~ダリル視点~

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いつものように気をったロンバードを胸に抱いていると、激しく扉が叩かれた。

「…何だ、一体」

今からイイ所なのに…。
仕方ない、出てやるか。

火急の用で無ければ左遷してやる、と思いながらロンバードをそっと抱き寄せ、唇にキスをして…
と、その時。

ガチャン、という音とともに厳重な鍵が破られ、扉が激しく開かれ、入って来るなり

「このクソ王子、これはどう言うことだ!!」

……と叫んだのは、世界で最も高名な魔術師の1人、オーセン王国魔術局長、つまりロンバードの父親であるギゼル殿だった。

彼は俺とロンバードの状況を見て、叫んだ。

「こっ、こ、婚前交渉は禁止だと、あれほど!
 節度のある付き合いが出来ないなら、息子は返してもらう!!」
「婚前交渉?ああ、セックスの事か」

俺がそう言うとギゼル殿は一瞬にして茹で上がり、ひどく歯切れの悪い口調で俺に言い返した。

「そそそそうだ、むっ、む、むすことっ、せ、せっ、セッ……、し、し、しただろう!?」
「したら何だというのだ」
「なっ!?」

どうやら、俺とロンバードの関係が進んだのに気づいたらしい。
だが今更返せなどと無理な話。
とっくに周囲は、ロンバードが俺の伴侶だという前提で動いている。
堂々とゴネているのは魔術塔くらいだ。
つまりお前の部下だけだ。

ただ「どうにかしろ」とは言えん。
それはギゼル殿が、俺とロンバードが結婚する前提でいる事の証左だからだ。
そこは押さえておかねばならん。

「ん…、ふ…」

俺の腕の中でロンバードが身じろぐ。
それを見てギゼル殿は我に返ったように喋り出す。

「っ、息子を返せ!こんな爛れたところへ置いておけない!!」
「爛れるどころか、健全な生活だと思うが」
「何がだ、こ、こんなっ」
「将来を誓い合った者同士で愛を交し合っている事の何が問題だ?
 達も、婚約を契機に随分とだったらしいじゃないか」
「!!!」

知らないとでも思うのか?
メルバとギゼル殿が学園で一体何をしていたか……

……まあ、メルバのやり方に巻き込まれた事には同情しなくもないが。

縁談を全て無視してフラフラ遊んでいたことすら自分の強みに変え、国益を屁理屈に利用し、宮廷をも巻き込みギゼルを囲い込んだ手腕…

俺も学ばせてもらった。

「自分の事を棚に上げて、息子には貞淑を命じるのか?」
「そ、それは、め…、メルバ、が……っ」
「他人を言い訳にするとは、らしくないじゃないか大魔術師殿」
「う、う、ううう~…」

顔を真っ赤にして俺を睨みつけるギゼル殿。
もう少し追い込んでやりたいところだが……
これ以上はメルバが怒るだろう。
そろそろ切り上げ時…

と、その時。

「…ん、お、やじ…?」

最悪のタイミングで、ロンバードが目覚めてしまったのだった。

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