41 / 218
ざまぁなど知らぬ!
過去最大級のおねだり
しおりを挟む
その日の夕方、俺は戦々恐々とダリル様の私室に向かい、言った。
「ダリルさまぁ、ぼく国際会議を開きたいの♡」
「……………………………………………………………………………………」
「…すみません」
おねだりとかいう範囲の話ではない。
でも、セジュールに代わりに言いに行ってもらうのも違う気がして、自分でダリル様に言おうと思って…。
せめて可愛らしくお願いしたら、許されないかなと思ったんだけど駄目っぽい。
ダリル様は渋い表情を作った。
「内容が想像を超えすぎて……いっそ清々しい」
俺はただ縮こまるしかない。
だってこんな政治的な事おねだりするなんて、なんかさ…なんか駄目じゃん?
「すみません……」
「……………………………………………………………………………………」
だけどダリル様は、しばらくして渋い顔のまま言った。
「…お前が食糧問題をどうこう、と言い出した時点で父上にはご奏上している。
母上は既に親睦茶会の準備に入っている。
問題は無い…が、少しばかり早いな」
「それは…その…、レドモンド君が、いきなり…」
俺はダリル様に事の顛末を説明した。
レドモンド君はいつも話を大きくするんだ。
腕輪の時だって、いろんなやつをどの国でも買えるようにしたらどうかって…
生産体制も何もないうちから!
でもダリル様にも思う所があったのか、レドモンド君の名前を出した途端に何かが通じたらしい。
「は、さすが『雹雷』、その名の通り電光石火だ」
「へえー、レドモンド君、有名人なんですね」
「…お前、本気で言っているのか?」
ダリル様によると、レドモンド君はレドモンド・スフィーリア公爵と言って、アデア王国の護りを建国以来ずっと支えてきた武門の家系で、奇襲を得意とするスピード重視の部隊を束ねていて、グリフォンを一人で倒した事があるくらい強いらしい。
「へえー、すごいんだなぁ、レドモンド君」
「お前…なぜそこまで人の名を知らんのだ」
呆れた様にダリル様が言う。
だから俺は反論する。
「失礼な、名前と顔くらい一致します!
……爵位とか地位が一致しないだけで」
「……………………………………………………………………………………」
はい、すいません。
「…今すぐ、留学生の分だけでも全部覚えろ」
「…はい」
「国際会議までに、全部!」
「……はいっ!」
ちなみに現在留学生の数は68…
これは、厳しい…!
***
「…みんなこんなに偉い人だったんだな」
「何を急に仰っているんですか、お兄様」
「いや、パン爺から貰ってきた…名鑑?見てるんだけど、サリュール先輩、サリル国王の弟なのな」
「そうですね、末弟です」
「王様と20歳以上歳離れてるんだってさ」
「あそこはハーレム制で、後宮には女性が何人もいらっしゃるそうですよ」
「なるほど…」
「そんでカナデ君はおじいさんが将軍様なんだな」
「はい、長期戦にめっぽう強い駆け引きの天才と言われていますね」
「敵に回したくないなー」
って、どこも敵に回したくないけど。
「人間と争う前に、まず魔物だからな…」
「世界に5000種以上いますもんね」
「そうだな、人の住めないとこにも平気で住んでるから…」
「どうしてそんな事が可能なんでしょうね?」
「環境適応能力が高いんだろうな…
あと、魔力を動力にしてるって話」
「そうなんですね」
そうなんだよね、まるで生きてる兵器…
「って、セジュールは魔物詳しくないのか?」
「この国周辺に出る魔物と大型魔物については知っていますが、それだけです」
「そっか、まあそれくらい知ってれば充分だもんな」
そうかそうか…ふふっ。
「どうしたんですかお兄様?」
「いや、まだ俺がセジュールに教えられる事が残ってたんだなって思っただけ」
「そんなのいっぱいありますよ!
魔法の事は詳しくないですし、お兄様の方が優れているところはいっぱいあります」
「そっか…」
俺、兄としての自信がちょっと無くなってたとこだったから、何か嬉しい。
ここのところ、セジュールに助けられっぱなしで…。
「俺、ちゃんとセジュールの兄、出来てるか?」
「勿論ですお兄様!
お兄様は一生僕のお兄様です!!」
「そっか…ふふ」
なんかちょっと安心した。
出来の良い弟を持った兄も楽じゃないぜ…。
「ダリルさまぁ、ぼく国際会議を開きたいの♡」
「……………………………………………………………………………………」
「…すみません」
おねだりとかいう範囲の話ではない。
でも、セジュールに代わりに言いに行ってもらうのも違う気がして、自分でダリル様に言おうと思って…。
せめて可愛らしくお願いしたら、許されないかなと思ったんだけど駄目っぽい。
ダリル様は渋い表情を作った。
「内容が想像を超えすぎて……いっそ清々しい」
俺はただ縮こまるしかない。
だってこんな政治的な事おねだりするなんて、なんかさ…なんか駄目じゃん?
「すみません……」
「……………………………………………………………………………………」
だけどダリル様は、しばらくして渋い顔のまま言った。
「…お前が食糧問題をどうこう、と言い出した時点で父上にはご奏上している。
母上は既に親睦茶会の準備に入っている。
問題は無い…が、少しばかり早いな」
「それは…その…、レドモンド君が、いきなり…」
俺はダリル様に事の顛末を説明した。
レドモンド君はいつも話を大きくするんだ。
腕輪の時だって、いろんなやつをどの国でも買えるようにしたらどうかって…
生産体制も何もないうちから!
でもダリル様にも思う所があったのか、レドモンド君の名前を出した途端に何かが通じたらしい。
「は、さすが『雹雷』、その名の通り電光石火だ」
「へえー、レドモンド君、有名人なんですね」
「…お前、本気で言っているのか?」
ダリル様によると、レドモンド君はレドモンド・スフィーリア公爵と言って、アデア王国の護りを建国以来ずっと支えてきた武門の家系で、奇襲を得意とするスピード重視の部隊を束ねていて、グリフォンを一人で倒した事があるくらい強いらしい。
「へえー、すごいんだなぁ、レドモンド君」
「お前…なぜそこまで人の名を知らんのだ」
呆れた様にダリル様が言う。
だから俺は反論する。
「失礼な、名前と顔くらい一致します!
……爵位とか地位が一致しないだけで」
「……………………………………………………………………………………」
はい、すいません。
「…今すぐ、留学生の分だけでも全部覚えろ」
「…はい」
「国際会議までに、全部!」
「……はいっ!」
ちなみに現在留学生の数は68…
これは、厳しい…!
***
「…みんなこんなに偉い人だったんだな」
「何を急に仰っているんですか、お兄様」
「いや、パン爺から貰ってきた…名鑑?見てるんだけど、サリュール先輩、サリル国王の弟なのな」
「そうですね、末弟です」
「王様と20歳以上歳離れてるんだってさ」
「あそこはハーレム制で、後宮には女性が何人もいらっしゃるそうですよ」
「なるほど…」
「そんでカナデ君はおじいさんが将軍様なんだな」
「はい、長期戦にめっぽう強い駆け引きの天才と言われていますね」
「敵に回したくないなー」
って、どこも敵に回したくないけど。
「人間と争う前に、まず魔物だからな…」
「世界に5000種以上いますもんね」
「そうだな、人の住めないとこにも平気で住んでるから…」
「どうしてそんな事が可能なんでしょうね?」
「環境適応能力が高いんだろうな…
あと、魔力を動力にしてるって話」
「そうなんですね」
そうなんだよね、まるで生きてる兵器…
「って、セジュールは魔物詳しくないのか?」
「この国周辺に出る魔物と大型魔物については知っていますが、それだけです」
「そっか、まあそれくらい知ってれば充分だもんな」
そうかそうか…ふふっ。
「どうしたんですかお兄様?」
「いや、まだ俺がセジュールに教えられる事が残ってたんだなって思っただけ」
「そんなのいっぱいありますよ!
魔法の事は詳しくないですし、お兄様の方が優れているところはいっぱいあります」
「そっか…」
俺、兄としての自信がちょっと無くなってたとこだったから、何か嬉しい。
ここのところ、セジュールに助けられっぱなしで…。
「俺、ちゃんとセジュールの兄、出来てるか?」
「勿論ですお兄様!
お兄様は一生僕のお兄様です!!」
「そっか…ふふ」
なんかちょっと安心した。
出来の良い弟を持った兄も楽じゃないぜ…。
149
お気に入りに追加
426
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
【完結】鳳凰抱鳳雛 ~鳳凰は鳳雛を抱く~
銀タ篇
BL
ちょっと意地悪なスパダリ攻め×やんちゃ受け
◎愛重めの攻めと、強がりやんちゃ受けの二人が幾多の苦難を経て本当の幸せを掴み取る、なんちゃって仙侠ファンタジー。
◎本編完結済。番外編を不定期公開中。
ひょんなことから門派を追放されてしまった若き掌門の煬鳳(ヤンフォン)はご近所門派の青年、凰黎(ホワンリィ)に助けられたことで、あれよという間にライバル同士の関係から相思相愛に発展。
しかし二人きりの甘い日々は長く続かず、少々厄介な問題を解決するために二人は旅に出ることに。
※ルビが多いので文字数表示が増えてますがルビなしだと本編全部で67万字くらいになります。
※短編二つ「門派を追放されたらライバルに溺愛されました。」を加筆修正して、続編を追加したものです。
※短編段階で既に恋人同士になるので、その後は頻繁にイチャこらします。喧嘩はしません。
※にわかのなんちゃって仙侠もどきなので、なにとぞなにとぞ笑って許してください。
※謎と伏線は意図して残すもの以外ほぼ回収します。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる