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ざまぁなど知らぬ!

国際協力の第一歩

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明日の早朝、火山灰問題を少しでも解決するための試作機を飛ばすために、俺は夕食後すぐに魔術塔へ向かった。

「来たかロンバード」
「うん、何か久々だね親父」
「転移魔法が大詰めだからな…まずは動物からだ」
「人間はまだ先?」
「ああ、ネズミや鳥が成功したら、少しずつ体の大きさや知能を上げていく…
 最後、人間の実験は、悪いが死刑囚でだ」
「…恐ろしいことになってきたね」

やっぱ転移魔法は怖いな。
成功したらとんでもない成果だけど…

「俺には無理だな…」
「父さんだって人体実験があるようなのを、おまえにはやらせたくないからな…さ、行くか」
「……うん」

親父は俺の頭をナデナデすると、付いて来いと言わんばかりに歩き始めた。

***

魔術塔は広い。
塔というけど、広大な土地があって、でかい倉庫もあって、完全に実験施設なのだ。

前世で例えると自衛隊の駐屯地みたいな?

「一緒に飛んでくれる魔術師を紹介するよ。
 ヨーク・ルーシャ軍曹…って、ロンバードは知ってると思うが」
「宜しくお願いします、ヨークさん」
「こちらこそ!」

ヨークさんは実戦に出る方の魔術師だ。
俺は大体研究所のほうにいるので会うことは少ないけど、魔法以外も何だか強そうな人で、親父の幼馴染というか、弟分的な存在だ。

「…無人飛行集塵機のこと、宜しくお願いします。
 できるだけ早く、解決したいんです。
 飢えに苦しむ人が沢山いるから…」
「おう、任しとけ!
 俺の箒も今回の任務に合わせて特別製にしてもらったし、ぶっ飛ばしてやるぜ!」

見ると、先端に空気抵抗を無くす装置がつき、ハンドルにごつめのシートを備えた…レース用バイクのタイヤ部分が箒、みたいな乗り物がそこにある。

「それ、箒だったんですね…カッコいい!」
「だろ?うちの箒班は腕利きだからな!」

親父曰く、魔術塔には空飛ぶ箒作りに魂を削っている集団があるのだそうで…

転生者かな?

ちょっと会ってみたい気もする。

「じゃあ、俺、集塵機の最終チェック入ります。
 ローター部分に砂が入り込まないように…」

するとヨークさんから質問がある。

「集塵機能はどのように?」
「これは竜巻を作って空気を吸い込んでこの部分へ灰を溜めます。
 これは空気を捉えてフィルターで灰を漉しとります。
 これは空気を吸って紙袋へ集めます。
 使い方はこの取扱説明書に詳しく書いてあります。
 出来たら逐次この通信ブレスレットで、俺に連絡下さい」
「了解!」
「魔力が足りなくなった場合の飴がこちらに入っています。
 これは眠気覚まし用のお菓子…」
「こいつはありがたい」

そうやってヨークさんにあれこれと託し、俺は集塵機ドローンの最終チェックを始めた…

***

そして朝。
火山の噴火で困っている国の留学生とダリル殿下、それからセルナ神聖国を代表してクレア君が出発式にやってきた。

「では、行ってまいります!」
「宜しくお願いします」
「しっかり頼むぞ」
「ヨーク・ルーシャ軍曹に敬礼!」
「敬礼!」

ヨークさんがバイク型箒に乗って飛び立つ。
その後ろを俺の作った集塵機たちが付いていく…無事に飛んだ!

「よし…!無事にそのまま、着いてくれよ…!」

集塵機ドローンたちはすごい速度で飛んで行く…
ヨークさんが魔法で引っ張ってくれているみたいだ。

どうか役に立ちますように…
着く前に壊れませんように。

祈る俺に、クレア君が言った。

「これが上手く行けば、今後の火山噴火に対する対策になるね」
「うん、セルナ神聖国のほうでも、この機械の情報を共有して欲しいんだ。
 まだ完成とは言えないんだけど…きっと完成させて、みんなの助けになるから」
「分かった、セルナを通じてオーセンに発注するよ。
 お金は立て替える事にすればいいしね」
「うん、でも残りのお金は融資してあげてね」
「分かってる、大丈夫だよ」

火山で困ってた国の留学生さんが言った。

「…こんなにも、早く対応して、頂けるとは…」
「いえいえ、まだお役に立てると決まったわけではありません。
 お礼を言って頂くのはまだ気が早いですよ」
「ですが、それでも…!」

留学生さんは頭を深く下げた。

俺が行動する事で、彼の心が少しでも軽くなればいいな…と、思った。

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