【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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ざまぁなど知らぬ!

おせんにキャラメル

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重たい話題の多い昨今、我が国はオーセン王国であることをふまえ、俺はちょっと新しい事を考えた。

「別に飴じゃなくても良くない?」
「何ですかお兄様、急に」
「お煎餅せんにキャラメル…オーセンにキャラメル!
 新名物、オーセンのキャラメル!どうかな」
「…どうかな、と言われましても」

ただキャラメルもまあまあ大変みたいだ。
砂糖焦がしたのをキャラメリゼって言うから、飴より楽かなと思ったのに…。

「キャラメル味の飴で妥協するかしないか…」
「オセンとやらにはしないのですか?」
「お煎餅はな、米がいるんだ。だから…」

だからお煎餅は…って…

「あー…でも瓦せんべい系なら小麦粉でも良いのか…焼き印も押しやすそうだし…オーセンのお煎餅…オーセンセンベイ…オーセンベイ」
「…オゥセンベィ?」
「ううん、オーセンベイ。新しい名物。クッキーより硬くて割れにくい。軽くて持ち運びに便利」
「はあ」
「そうだな……お土産で買って帰って家で割った瞬間に、素敵なメロディが流れるとか」
「メロディ…」
「地方地方に伝わってる歌ってあるじゃん、それが流れるオーセンベイ」

地脈探しの役に立つんじゃないかな、って最近民俗学の本を読んだりしてるんだけど、オーセンの各地にも色んなお祭りや風習があって、歌がある。
それを活かして観光に役立たないかな…って。

工場立ててご迷惑かける場所の皆様に、何かお詫びのプレゼントもしなきゃいけないしね。

「それって何の役に立つんです?」
「地域活性化!」

俺はこの世界に、旅行の良さを広めたい。
旅行に行ったお土産に、ちょっと変わった名物があれば楽しい。
国中回ってこのお煎餅を集めようって人も出たら、旅行も普通になって、そしたら長期休暇貰って…

「…もしかして、ギゼル父様がメルバ父様に送った、あの指輪の…」
「そうそう、あれをちょっと頂いて作るの。
 あれは指輪の石に魔力集積回路を魔法で組み込んでるんだけど、俺のは印刷」

おおスゴイ、気づいたのかセジュール!
そうなんだよね、俺もちょっとやってみたくなったの…愛は囁かないけどね!

「まさか、そのオゥセンベィに直接回路を書くんですか?」
「うん、一回こっきりだし…うまく印刷できるか分かんないけどさ」

紙にハンコ押すんじゃないし、絶妙な力加減とかで職人技がいりそうなんだよな…

「でも、慣れさえすれば…。人間の地道にやる力を、俺は信じる!」

手芸やってて感じてた、職人のすごさ。
この世界にも職人がいて、俺はいつもその人たちを尊敬している。

…でも、セジュールの心配はどうやらそこじゃないらしい。

「僕が心配なのは、録音の魔力集積回路を全世界に公開することになるって所です。
 悪用される未来しか見えませんけど」
「えっ、どうやって…?」
「伝達に使われる物が食べて無くなるんですよ?犯罪者たちの連絡に使われたら…」
「いや、入れる音楽によって回路も変わるよ?」
「えっそうなんですか?
 って、それでも…不安しか無いですけど」
「うーん、そうかぁ…」

でもそろそろ飴ばっかじゃな。
俺、飴屋さんじゃないし…

「ふーむ…でも、そろそろ新しいお菓子…
 そうだ、図書館でお菓子の本探してみよう」
「お兄様、そもそもなぜお菓子に拘るのですか?」
「食べると幸せな気持ちになるから!」

お菓子は笑顔を作る。
俺の魔法もそうありたい!

「ちなみにキャラメルは何にするおつもりで?」
「食べると買った土地の景色が脳裏に浮かぶ」
「買った土地の事だけ?」
「うん、出来れば食べた人にも買った人の見た景色が見えるようにしたいんだ。
 そしたら遠くに行った我が子に、故郷からエールを送るキャラメルにもなるかなって」
「ええる?」
「頑張れー!って声援!」

留学生たちを見ながら思った。
故郷から遠く離れて頑張ってるみんなに、少しでも元気になって欲しいって。
だから故郷の美しい景色を見せたい…そして…

「ゆくゆくはグローバル展開…」
「ぐろーばる?」
「世界的にってこと」
「また世界!?」

世界はおやめください!とセジュール。



……何で?
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