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ざまぁなど知らぬ!

晩餐会の前と後

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晩餐会で一つだけ用意されていたテーブルセットは、俺とダリル様とセジュールのものだった。

別に足の悪い人はいなかったんだな…
良かった。
でも…

「何のためにテーブルがあったのか、分かった気がする…」
「…ちなみにどんな理由だと思われます?」
「メモを書くのに必要だったんだな」

晩餐会では、やたらとメモした記憶がある。
言った・言わないで揉めないようにメモ。
モメないメモ…残念ながら回文にはならないな。

うんうん…と俺が一人納得していると、セジュールが呆れた声で言う。

「いいえ、僕とダリル様がお兄様の隣から絶対に離れない為の措置です」
「ぐふっ」

全然違った。
ガイコームズカシイ。

「それにしても、みんなにいっぱい話しかけられたなぁ」
「直截的な話も多かったですし、意外と切羽詰まってる国も多いのかと」
「うん、魔法で何とかならないか考えてみるか…戦争が起きない範囲で」

俺は昨日気になった話を書き留めたメモを取り出してみた。
最初に「火山の噴火はいかんともしがたい」…と書いてある。
それ自体を止める事はできないから、対処療法的な事しか出来ないよな…

「火山灰で太陽が遮られるなら、火山灰を空気中から取り除けたら…けど火山灰と機械は相性最悪で…だから…」

前世では諦めるしか無かったような記憶があるけど、魔法のあるこの世界なら何とかなるんじゃ…

「うーん…装置に灰が入り込まない対策…物理無効…緻密…うーん」

するとセジュールが呆れた声で言った。

「お兄様、外交バランス…」
「どこの国とも仲良くなれば良いんじゃないの?」
「仲の良すぎる国が出るのがまずいんです」

ふむ、どんな国でも同じくらい仲良く…

「うーん…だったら、大きい小さいで対応を分けるとかは駄目って事だよな?」
「いや違います、大きな国とは仲良く、その大きな国と仲の良い国とも仲良く、です」
「じゃあどの国も同じ様に仲良くじゃん」

そういう事じゃないの?
良く分からん。

そうして俺が首を捻っていると、セジュールが俺のメモを奪って、とあるページを開いて見せた。
そこには「小さい国は大きい国の子分」と書いてある…

「これ…セジュールか?」
「ええそうです。
 大きい国を差し置いて小さな国に何か便宜を図れば、大きな国は小さな国を脅してそれを奪うかもしれないでしょ?そうなったら戦争が起きるかもしれないでしょ?」
「あ、あー…なるほど、根回し?」
「そうですね、小さな国に便宜を図るなら、その国が追従する大国にも便宜を図る準備が必要です」
「大国と小国の二つと同時に話し合う?」
「そうですね、連合を組んでいるならその連合ごと話をするのが良いでしょうね」
「はー…そういう事ね」

この国とこの国は仲良し、この国とこの国は仲が悪い…
何か人間関係を引き延ばしたみたいだ。

「…いや、人間関係より大変だな」
「無辜の民が巻き込まれますからね」
「うん…」

人間関係は、逃げれば終わる。
他の土地か、他の世界か、あの世へ。

でも国って、逃げるとかできないしな。
セジュールの言う通り、何の罪もない人がいっぱい巻き込まれる。
何が何でも上手くやらないと…。

「…俺、やっぱ出来る気がしないや」


…逃げたし。
……でもあの時は、それしか。
………でも………。


「大丈夫です、お兄様。
 その為に僕がいるんです。
 ダリル殿下とお兄様がご成婚の後は、僕も宮廷入りしてお兄様を支えます。
 もうメルバ父様にもご相談しております」
「…っ、セジュール…!」

そうか、俺には味方がいる。

あの時には親父だけだったけど、今度はもう一人の父親と、賢くて頼もしい弟が…!!

「…付いて来て、くれるのか?」
「ええ、もちろん。僕はお兄様の側を離れません!」
「セジュール…っ!!」

俺はぎゅっとセジュールを抱きしめる。
そうだ、こんなにも賢くて可愛い弟がいる。
前世と今とは違う…

一生味方でいてくれる、家族が…。

「そうか、うん…うん?」

あれ、何か大事な事…あっ!?

「セジュール、領地は」
「ああ、弟が一人増えますから大丈夫です」
「えっ何で!?」
「まあ、領地を継ぐ子がいないと困るので…。
 従兄弟もいますし、そういう事をふまえて…」
「あ、ああ、養子って事か…なるほどね」

びびった、親父がまた一人産むんかなって思った。
っていうか、親父今何歳だっけ?
40過ぎて産むって、できる確率がそもそも…

けど、メルバ父さんの感じ。
親父が産んだ子以外の家族を許す気がしないんだけど…

大丈夫なんか?

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