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ざまぁしやがれください!

うっかり、夢中

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ダリル様からティユダイトとブラドゥイト、その他諸々を頂いた1週間後。

「ロンバードってさ、宝石に興味あるの?」
「あ、クレア!
 うん、ちょっと今ハマってるんだ~」

話しかけてきたのは留学生で友だちのクレア・ベルドルト君。
山を越えた向こうのセルナ神聖国からの留学生で、10人中12人が「カワイイ!」って思うタイプの子。

ちなみに、セルナ神聖国っていうのは宗教国家で、この辺の国の多くの国民が信仰している宗教の総本山があるとこで、まあバチカン市国の異世界版的なことかな。

「…っていうか、どこで聞いたの、それ」
「いや、図書館で宝石の本借りてたからさ。
 何か新しい事考えてるの?」
「いや、うーん…新しいかどうかでいうと、むしろ古式ゆかしい感じ?」

現在頂いた宝石を使ってあれこれと試行しているのは「回復魔法特化ブレスレット」。
魔法の杖を腕に巻く形にするだけだから、別に新しくはない…はずなんだけどな。

これがなかなか上手くいかなくて。

「でも、温故知新って感じで楽しいよ!」
「へえ~…それ、僕が宝石買って渡したら作ってもらえたりする?」
「いやぁ、まだ上手く行くか分かんないし、今すぐには無理かな」

魔法が使えるようにするのはすぐなんだけど、繰り返し使えるようにするのが難しい。
どうやって石の魔力を回復させるか…。
つまり、どっから魔力を集めるか、だ。
杖と違って魔法が使えない人でも使えるようにするとなると、宝石の魔力はすぐに切れる。
だから魔力を充填できないと、使い捨てになっちゃう…

勿体ない!!


「…ちなみにどんなのが良いの?」
「うん、僕の国さあ、とにかく風が凄いのね。
 だから防風の魔法を常時展開できるようなのがあったらなーって」
「えー、でももう何か道具か魔法はあるんでしょ?」
「魔法はあるけど道具は無いよ、根性一択」
「うええ…そりゃ大変だね」

魔法のデメリットは、誰でも使えない事だ。
その魔法を知らないと使えないし、知ってるだけでも使えない。
それにそもそも、魔力が少なくて魔法使えない人の方が圧倒的に多………ん?

「そっか、魔力は微弱でもみんな持ってるんだ…」
「うん、どしたの?」
「いや…ちょっと、考え事」
「ふーん…何かの役に立ちそうなの?」
「うん、もしかしたら、結構」

そうだ、一気に貯めるんじゃなくて、1ヶ月かけてチマチマ貯めるようにする…!

「俺、ちょっと頑張ってみよう…」
「本当?俺、何の宝石買えば良い?」
「それも明日までに調べて送る!じゃ!」
「えっ、ちょっ、ロンバード!もうすぐ授業、」
「魔術塔行ってくるー!先生に言っといて!」

そうだそうだ、何本も作ってローテーションすれば良いんだ。
それで、働けなくてお金の無い人に空っぽになったブレスレットを付けて生活してもらって、生活に支障のないレベルでちょっとずつ魔力を頂いて、その報酬を国から支払えば…

「何もしてない奴に金やるなんて、って非難を躱しつつ生活保護費を出せるかも…」

って、そうなるには大量生産が必要か。
あと、盗まない、勝手に売らない、偽造防止、とか…

「……福祉に繋げるのは後々だな」

でも、ただ新しくも無いものを作るより俄然やる気出てきた!
可能性があるのは良い事だ!

***

そうして俺は魔術塔に籠り、何とか「治癒ブレスレット」を完成させ…

「…で、お前は授業を1週間もサボったんだな?」
「…はい」

次の日ウキウキで学園へ行ったところ、ダリル殿下に捕まった。
今は執務室でお説教タイム…。

「出席日数が足りなくなったらどうするつもりだ」
「あっ、それなら大丈夫です!
 計算して休んでいるので!」
「賢しげにいう事か!」
「でも、ブレスレットも出来ましたし…ほら!」

俺は完成したばかりのブレスレットを見せた。
貰った石で10本ほど試作して、一番見栄えの良いのを持ってきたのだ…
あ、性能はどれも一緒になったから大丈夫!
最初の1~2本は酷い見た目だけどね…。

「確かに、これは素晴らしい成果ではあるがだな」
「この結果を元に、次は風除けブレスレットを…」
「…それは、誰にだ」
「え、えっと…クレア君に」

するとダリル様はいきなり怒鳴った。

「お、前…!ベルドルトと勝手に取引するんじゃない!」
「でも、もう宝石貰っちゃったし…」
「何だと!!?」

な、何でそんな怒るの?
クレア君の母国のセルナ神聖国とうちの国は仲良しだし、問題無くない?

「そういう問題じゃない!
 神聖国だけに便宜を図ったら、外交バランスが崩れるだろうが…!」
「え、あっ…!?」

まさか、ワガママ作戦が国際問題に…
嘘でしょ?
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