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ざまぁしやがれください!
もうおやめになったら…? ~セジュール視点~
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「セジュール、すまん。作戦変更だ」
「えっ、急にどうされたのです?」
「…ちょっと、思うところがあって」
どうやら一旦「虐めっ子作戦」は中止らしい。
ようやくあのお芝居から逃れられる…と思ったのも束の間、お兄様はまたもおかしな事を言い始めた。
「次は、ウルトラ我儘お坊ちゃま作戦だ」
「はいっ?」
ちょっと待って、まだ何かする気なの!?
***
「高い物と言えば、宝石・服・不動産…だろ?」
「はあ」
「それで、最初は宝石から始めようと思う」
「はあ」
いや、買って頂く物が無くなって、頭を抱える未来しか見えませんが?
ダリル殿下の資金力を舐めてませんか、お兄様…。
「…それで、なにゆえ宝石なのです?」
「魔法の研究にって言えばいけそうだから」
「なるほど」
でもそれっておねだり…まあ、おねだりか。
我儘お坊ちゃまのおねだりじゃないだけで…。
僕は頭の端でそんな事を考えていたけど、お兄様は気づかず続きを喋り始める。
「宝石の中には、特定の属性がついた魔力を溜め込む性質があるのがあってさ。
それを上手いこと取り出してるのが、杖な」
「へぇ……じゃあ、杖を?」
「いや、杖って魔術師感が過ぎるだろ?」
「つまり、新しい形で杖の機能を持ったものを作るって事ですか?」
「正解!やっぱセジュールは賢いなぁ…」
うんうん、と兄様は頷き、僕の大好きな笑顔を浮かべ、直後にやたらと真剣な顔になって言った。
「だから、最近俺が宝石に興味を持ち始めた、みたいな噂をたてて欲しいんだ」
「…それはやめておいた方が良いかと」
「えっ、何で」
「そこら中から宝石を送られて頭を抱える未来が見えます」
「えっ……何で?」
「天才魔術師と接点を持ちたい人は山ほどいるんですよ?」
「あ、あー…まあ、そうかも知れないな。
けど、そこはちゃんと断るよ!
そうだな…『お父様の為じゃなくて俺の為にくれる物じゃなきゃイヤ!』みたいな感じは?これなら我儘坊ちゃんみたいで良くない?」
…どうやら、僕の言い方が間違っていたらしい。
兄様の中では、天才=ギゼルお父様。
自分だって充分過ぎる程その枠に入ってるのに…
本当、自覚が足らないんだから!!
今やお兄様はギゼル父様と同じぐらい有名で『これなら将来大魔術師の地位を継がせても問題ないな』って、みんなが勝手に納得してるくらいなのに!
はあ……困ったなぁ。
「天才魔術師は、お兄様の事ですよ?」
「いや、それは無いだろ!
俺、魔物は入れないけど人は出入りできる結界の魔法なんか作れないし」
「どこと何を比べてるんですか」
「あと、写真の魔法も作ってないし、空飛ぶ魔法も作ってないし…」
はあ…駄目だこれは。
本気で自分が大したことないって思ってる。
もうはっきり言うしかないか…。
「…この飴は?」
「それ、一回しか魔法使えないじゃん」
「一回使えるようにするだけでもすごいですよ、しかも副作用無しで」
「飴だもん」
「ええ、すごい飴ですよね」
「戦闘中には使えないじゃん」
ああもう、通じないなぁ!
僕はお兄様に自分のお立場を分かって貰おうと、反論を繰り返す。
「戦う時以外にも魔法は役立つでしょう?
例えば治癒魔法は病院でよく使われています」
「でも、毎日沢山食ったら病気になるぞ」
「それはそうでしょうけど…」
「だろ、だから…だ、から…だ、か…ら」
…ところがその話をきっかけに、お兄様には考えが浮かんだらしい。
「そっか、回復系に特化したアイテム…」
そしてポケットをポンポン叩いてから、ポケットより一回り大きなサイズのメモ帳を取り出して何か書き始める。
「それってつまり、それを付けている限り治癒魔法が無限に出せる…?」
「無限…うーーん、無限は…無限…永久…うーん…」
「それがあれば、大けがした人も死なずに済むかもしれない?」
「うーーん、じゃあ即死で無ければ命が助かるレベルの治癒…となると…うーん……、……。……、……」
「……お兄様?」
「………………………………………」
どうやらお兄様は思考の海に沈んでしまったみたい。
こうなると暫くはこのままだろう。
僕は仕方なくソファに座り、領地にある村や町の長からの報告書に目を通す。
それから領地を経営している叔父様が出した指示書にも目を通して、どうしてこの指示を出したのかを考えて書面に纏める。
領地経営の勉強だ…
自分が直接経営するとはまだ決まっていない。
一応叔父様にもお子様が2人おられるから…
でも、2人のうち1人は魔術師になる事が決まっていて、もう1人は騎士学校へ行ってしまった。
どうも一族の中では、僕が領主になるのが規定事項みたいで…
…って、そう言えば次男なのに僕が次期当主って、お兄様には思うところが無いのかしら。
「……で、うーーーん……」
……無いんだろうな。
でも、僕を殿下と結婚させたら、当主の地位が宙に浮く事には思い至らないんだな。
「本当、魔法以外の事はさっぱりなんだから」
困った人だなぁ。
「えっ、急にどうされたのです?」
「…ちょっと、思うところがあって」
どうやら一旦「虐めっ子作戦」は中止らしい。
ようやくあのお芝居から逃れられる…と思ったのも束の間、お兄様はまたもおかしな事を言い始めた。
「次は、ウルトラ我儘お坊ちゃま作戦だ」
「はいっ?」
ちょっと待って、まだ何かする気なの!?
***
「高い物と言えば、宝石・服・不動産…だろ?」
「はあ」
「それで、最初は宝石から始めようと思う」
「はあ」
いや、買って頂く物が無くなって、頭を抱える未来しか見えませんが?
ダリル殿下の資金力を舐めてませんか、お兄様…。
「…それで、なにゆえ宝石なのです?」
「魔法の研究にって言えばいけそうだから」
「なるほど」
でもそれっておねだり…まあ、おねだりか。
我儘お坊ちゃまのおねだりじゃないだけで…。
僕は頭の端でそんな事を考えていたけど、お兄様は気づかず続きを喋り始める。
「宝石の中には、特定の属性がついた魔力を溜め込む性質があるのがあってさ。
それを上手いこと取り出してるのが、杖な」
「へぇ……じゃあ、杖を?」
「いや、杖って魔術師感が過ぎるだろ?」
「つまり、新しい形で杖の機能を持ったものを作るって事ですか?」
「正解!やっぱセジュールは賢いなぁ…」
うんうん、と兄様は頷き、僕の大好きな笑顔を浮かべ、直後にやたらと真剣な顔になって言った。
「だから、最近俺が宝石に興味を持ち始めた、みたいな噂をたてて欲しいんだ」
「…それはやめておいた方が良いかと」
「えっ、何で」
「そこら中から宝石を送られて頭を抱える未来が見えます」
「えっ……何で?」
「天才魔術師と接点を持ちたい人は山ほどいるんですよ?」
「あ、あー…まあ、そうかも知れないな。
けど、そこはちゃんと断るよ!
そうだな…『お父様の為じゃなくて俺の為にくれる物じゃなきゃイヤ!』みたいな感じは?これなら我儘坊ちゃんみたいで良くない?」
…どうやら、僕の言い方が間違っていたらしい。
兄様の中では、天才=ギゼルお父様。
自分だって充分過ぎる程その枠に入ってるのに…
本当、自覚が足らないんだから!!
今やお兄様はギゼル父様と同じぐらい有名で『これなら将来大魔術師の地位を継がせても問題ないな』って、みんなが勝手に納得してるくらいなのに!
はあ……困ったなぁ。
「天才魔術師は、お兄様の事ですよ?」
「いや、それは無いだろ!
俺、魔物は入れないけど人は出入りできる結界の魔法なんか作れないし」
「どこと何を比べてるんですか」
「あと、写真の魔法も作ってないし、空飛ぶ魔法も作ってないし…」
はあ…駄目だこれは。
本気で自分が大したことないって思ってる。
もうはっきり言うしかないか…。
「…この飴は?」
「それ、一回しか魔法使えないじゃん」
「一回使えるようにするだけでもすごいですよ、しかも副作用無しで」
「飴だもん」
「ええ、すごい飴ですよね」
「戦闘中には使えないじゃん」
ああもう、通じないなぁ!
僕はお兄様に自分のお立場を分かって貰おうと、反論を繰り返す。
「戦う時以外にも魔法は役立つでしょう?
例えば治癒魔法は病院でよく使われています」
「でも、毎日沢山食ったら病気になるぞ」
「それはそうでしょうけど…」
「だろ、だから…だ、から…だ、か…ら」
…ところがその話をきっかけに、お兄様には考えが浮かんだらしい。
「そっか、回復系に特化したアイテム…」
そしてポケットをポンポン叩いてから、ポケットより一回り大きなサイズのメモ帳を取り出して何か書き始める。
「それってつまり、それを付けている限り治癒魔法が無限に出せる…?」
「無限…うーーん、無限は…無限…永久…うーん…」
「それがあれば、大けがした人も死なずに済むかもしれない?」
「うーーん、じゃあ即死で無ければ命が助かるレベルの治癒…となると…うーん……、……。……、……」
「……お兄様?」
「………………………………………」
どうやらお兄様は思考の海に沈んでしまったみたい。
こうなると暫くはこのままだろう。
僕は仕方なくソファに座り、領地にある村や町の長からの報告書に目を通す。
それから領地を経営している叔父様が出した指示書にも目を通して、どうしてこの指示を出したのかを考えて書面に纏める。
領地経営の勉強だ…
自分が直接経営するとはまだ決まっていない。
一応叔父様にもお子様が2人おられるから…
でも、2人のうち1人は魔術師になる事が決まっていて、もう1人は騎士学校へ行ってしまった。
どうも一族の中では、僕が領主になるのが規定事項みたいで…
…って、そう言えば次男なのに僕が次期当主って、お兄様には思うところが無いのかしら。
「……で、うーーーん……」
……無いんだろうな。
でも、僕を殿下と結婚させたら、当主の地位が宙に浮く事には思い至らないんだな。
「本当、魔法以外の事はさっぱりなんだから」
困った人だなぁ。
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