【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない！

ざまぁしやがれください！

【閑話】情報戦！ ～セジュール視点～

噴水での一件の後、僕は教室で皆から質問責めにあっていた。

「あの、セジュール様！」
「大丈夫…なのですか？」
「あんなに叩かれたり、蹴られたり…」
「今までも、その、色々…」

だから僕は答えた。

「はい、あれはただのお芝居ですから…。
　それに、お兄様がいつも僕に魔法で出来た鎧を着せて下さってますので、ちっとも痛くないんです。
　まだ効果は続いてますから、ちょっと叩いてみますか？」
「えっ…、良いんですか？」
「良いですよ！」
「じゃ、失礼して…」コンコン
「わっ、本当だ！手がはじき返される」
「すごい！僕も試して良いですか！？」
「僕も、僕も！」

今まで遠巻きに見ていたけど、もう我慢できない…って感じかな。

そりゃそうだ。

僕が入学して暫く後から始まった、謎の虐め劇…
入学直後は兄弟で仲睦まじかったのが急展開だもの、どうしていいか分からなかったんだろうな。

「さすがロンバード様の魔法だ！」
「まさか、今までのお芝居もこの魔法を？」
「そうなんです、この魔法の凄さを皆に知って欲しくて、お兄様がお芝居をしたらどうかって…」
「成る程そんな事情が…」
「あの、ロンバード様がその…おかしくなったんじゃないかって、みんな言ってて」

うーん、やっぱりそうだよね。

お兄様はそもそも困ってる人を見過ごせない体質だし、助けてもらった同級生も大勢いる。
それなのに急に虐めだなんて…しかも、演技は下手すぎるし台詞は忘れるし、何ていうか…お兄様の人柄が出過ぎてて…つらい。

「でも、今まで誰も気づいてくれなくて…。
　だから、おもいっきり派手にやろう、って」
「…でも、どうして虐めのお芝居なんですか？」
「それはですね、元々この魔法は、虐められてる子の為にお兄様が考えたもので…」

僕はすらすらと嘘を混ぜた真実を拡げる。
お兄様は「お優しくて変わり者」で有名だから、多少変な理由でもみんな納得してしまう。

お兄様は外国に行くために自分に悪評を立てようとしている。
僕はお兄様を外国にやりたくないから、悪評の裏に良い噂を流す。

「本当はお兄様、虐めなんて大嫌いなんです。
　家でも頑張ってお芝居の練習してるんですけど…ふふっ、全然駄目で」
「ああ、なるほど、だからあんな…」

…やっぱり善い人なんだな…
…あの芝居も、人が良すぎるからあんな…

そんな声がちらほら聞こえる。
みんなが納得したところで、僕はもう一手進める。

「…でも、みんなにお芝居だってバレてるの分かったら、お兄様はきっと悲しむと思うんです。
　だから皆、騙された振りをして貰えませんか」

すると、みんなが何故か難色を示す。

「ええー…出来るかなぁ」
「あの芝居に騙されてる演技はさすがに…」
「何も言わないくらいが精一杯というか…」

…なるほど。
つまり、お兄様の演技力の無さは僕の作戦の上をいく、と……さすがだ……でも負けない！

「そこを何とか…」

僕は何とか食い下がろうとした。
すると一人の女の子が閃いたように言った。

「ああ、でしたら皆様、『大丈夫ですか？』とお声を掛けるのはいかがでしょう？
　それなら騙されているようにも見えますし、セジュール様を心配しているのは本当なのですから、おかしな演技になることも御座いませんわ！」
「えっ…あ、確かに…？」
「なるほど！それなら出来る！」

なんと、僕の作戦を横から助けてくれる子が現れるとは。
しかも素晴らしく的を射た方法…！
えっと、確か彼女の名前は…

「ミリエッタさん、すごい…名案です！」
「ふふ…お褒め頂き、光栄ですわ！」

彼女は小さく胸を張ってそう言った。
謙遜しない態度が、何だか面白かった。