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ざまぁしやがれください!
タダより高いものはなし
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「よーし、今日の授業、終了だ!」
「あざっした!」
や~、ようやく授業が終わったぞ。
本日最後は体術の授業だ。
体術と剣術は選択制で、どちらかというと剣術の方が人気があったりして人が少ない。
授業というよりグループレッスンだな。
先生が道場から出て行き、場の雰囲気が緩む。
そのほっとした空気の中、友だちが言った。
「ねぇロンバード、この後お茶しに行かない?」
「あー、ごめんニール、もう先約があって」
「そうなの?」
「うん…でも、場所はちょうど学生寮だし、途中まで一緒に行こうぜ」
「おっけー」
今日は朝言ってた通り、留学生の人に母国の言葉や文化なんかを教えてもらう予定なんだ。
っていうか、このニールも留学生なんだけどな。
ニールは山の向こうのドラーク帝国ってとこ出身で、その国は元々50以上の部族がそれぞれに集落を作って緩やかに繋がりを保って暮らしてたんだけど、およそ100年前、世界中が戦争に熱狂する時代が来る直前に、とある部族の長が「このままじゃいかん」って言って、その50以上ある部族を強引にまとめ上げて作ったんだ…
って、ニールから教えてもらった。
そん時ニールが言ってた事は今も覚えてる。
「おかげで今でもドラーク皇族は、恨みや恐怖の対象になってたりするけどね」
「そっか…やっぱ許すって簡単じゃないよな」
やられた方がやった奴を許すって相当難しい。
やられた方は一生ものの傷を負ったりもするし、そうなったら一生死ねって呪い続ける事の方が普通…
なのは、この世界でも同じなんだなって思った。
…そう、虐めなんてしない方がいいに決まってる。
いじめっ子が一人もいなくなれば、世界はもっとましになる。
そんなこと分かってるんだ、だけど…。
…なんて、俺はロッカールームで着替える間、ずっと考えていた。
***
ニールと授業の話で盛り上がりつつ歩き、いつの間にか学生寮。
「んじゃ俺、サリュール先輩の部屋行くから、ここで」
「えっ?ちょっと、ロンバード!?
婚約者がいるのに他の男と二人きりで会うとか」
「いや、執事っぽい人もいるし」
「それを人数に入れちゃ駄目だよ…」
うん、それは知ってた。
母さんが持ってた小説にもそんな話があったしな。
でも、悪役令息になるには「はしたない」事もやっていかなきゃだし…それに、こんな事でエッチしなくてもビッチになれるんなら利用しない手はないでしょ。
実質タダみたいなもんじゃん?
「大丈夫だよニール、俺一人で…」
「仕方ないね、僕がついていってあげる」
「えっ」
「僕が着いて行けば、少しはましでしょ?
さ、行こう!」
「えっ……あ、うん……」
…ニールの押しの強さに勝てず、俺はニールと一緒にサリュール先輩の部屋へ行った。
ノックして一言声を掛ける。
「すみませ~ん、サリュールせんぱーい。
ロンバード・キャンディッシュが参りました~」
すると部屋の扉がするりと開いて、サリュール先輩が俺を出迎えてくれた。
「今日も可愛いね、ロンバ…と、なんでいる?ニール・レア」
「ああ、婚約者のいる方と他の男性を2人きりにするわけにはいきませんからね」
「…ふーーーん、なるほどね」
サリュール先輩とニールが、何故か剣呑な雰囲気に…。
ほらぁ、やっぱ一人で来た方が良かったんじゃん!
「すみませんサリュール先輩…」
「ううん、ロンバードは悪いない、だからあやまるない。どこかサロン空いてるでしょ、そこ行こう」
そう言って、俺はサリュール先輩の案内でサロンとやらへ…。
腰に添えられた手は気になるけど、先輩の国ではこれが普通なんだって。
「そういえばロンバード、今日の噴水の事、噂なってるよ!」
「えっ、もう?」
俺はその話が気になって身を乗り出す。
「計画順調ね!我が国来る、歓迎よ!」
実はサリュール先輩やニールや、留学生の友だちには計画の事全部話してあるんだ…
話させられたとも言うけど。
「うん、行く行く!って、サリュール先輩に会いに行っても門前払いされそうだけど」
だってめちゃ小汚い恰好してるだろうし。
バックパッカーって言えば聞こえはいいけど、半分放浪者だろうしな…。
でも、サリュール先輩は真剣な顔で言う。
「そのような事は起こり得ぬ。
サリルに於いて、既にロンバードに関わる件は全て最優先事項だ…直ちに私自ら動けるようにな。
だから喩え何処にいようと迎えに行く」
「あ…と」
サリュール先輩は真剣になると何故か流暢になる。
いつもはカタコトでフランクだから話しやすいんだけど…。
妙な緊張感の中、言葉に詰まる俺にニールが助け舟を出してくれる。
「じゃあ無事に砂漠越えなきゃね!ロンバード」
「あ、そうそう、その話を聞きに…。
それと、サリル語も教えて欲しいです」
「……そうだったね!さっそくしよう」
その後は一転、穏やかな雰囲気の中、2時間程砂漠の話を聞いたり食べ物の話をしたり…。
なかなか充実した時間を過ごして、親父と一緒に馬車に乗って帰った。
「あざっした!」
や~、ようやく授業が終わったぞ。
本日最後は体術の授業だ。
体術と剣術は選択制で、どちらかというと剣術の方が人気があったりして人が少ない。
授業というよりグループレッスンだな。
先生が道場から出て行き、場の雰囲気が緩む。
そのほっとした空気の中、友だちが言った。
「ねぇロンバード、この後お茶しに行かない?」
「あー、ごめんニール、もう先約があって」
「そうなの?」
「うん…でも、場所はちょうど学生寮だし、途中まで一緒に行こうぜ」
「おっけー」
今日は朝言ってた通り、留学生の人に母国の言葉や文化なんかを教えてもらう予定なんだ。
っていうか、このニールも留学生なんだけどな。
ニールは山の向こうのドラーク帝国ってとこ出身で、その国は元々50以上の部族がそれぞれに集落を作って緩やかに繋がりを保って暮らしてたんだけど、およそ100年前、世界中が戦争に熱狂する時代が来る直前に、とある部族の長が「このままじゃいかん」って言って、その50以上ある部族を強引にまとめ上げて作ったんだ…
って、ニールから教えてもらった。
そん時ニールが言ってた事は今も覚えてる。
「おかげで今でもドラーク皇族は、恨みや恐怖の対象になってたりするけどね」
「そっか…やっぱ許すって簡単じゃないよな」
やられた方がやった奴を許すって相当難しい。
やられた方は一生ものの傷を負ったりもするし、そうなったら一生死ねって呪い続ける事の方が普通…
なのは、この世界でも同じなんだなって思った。
…そう、虐めなんてしない方がいいに決まってる。
いじめっ子が一人もいなくなれば、世界はもっとましになる。
そんなこと分かってるんだ、だけど…。
…なんて、俺はロッカールームで着替える間、ずっと考えていた。
***
ニールと授業の話で盛り上がりつつ歩き、いつの間にか学生寮。
「んじゃ俺、サリュール先輩の部屋行くから、ここで」
「えっ?ちょっと、ロンバード!?
婚約者がいるのに他の男と二人きりで会うとか」
「いや、執事っぽい人もいるし」
「それを人数に入れちゃ駄目だよ…」
うん、それは知ってた。
母さんが持ってた小説にもそんな話があったしな。
でも、悪役令息になるには「はしたない」事もやっていかなきゃだし…それに、こんな事でエッチしなくてもビッチになれるんなら利用しない手はないでしょ。
実質タダみたいなもんじゃん?
「大丈夫だよニール、俺一人で…」
「仕方ないね、僕がついていってあげる」
「えっ」
「僕が着いて行けば、少しはましでしょ?
さ、行こう!」
「えっ……あ、うん……」
…ニールの押しの強さに勝てず、俺はニールと一緒にサリュール先輩の部屋へ行った。
ノックして一言声を掛ける。
「すみませ~ん、サリュールせんぱーい。
ロンバード・キャンディッシュが参りました~」
すると部屋の扉がするりと開いて、サリュール先輩が俺を出迎えてくれた。
「今日も可愛いね、ロンバ…と、なんでいる?ニール・レア」
「ああ、婚約者のいる方と他の男性を2人きりにするわけにはいきませんからね」
「…ふーーーん、なるほどね」
サリュール先輩とニールが、何故か剣呑な雰囲気に…。
ほらぁ、やっぱ一人で来た方が良かったんじゃん!
「すみませんサリュール先輩…」
「ううん、ロンバードは悪いない、だからあやまるない。どこかサロン空いてるでしょ、そこ行こう」
そう言って、俺はサリュール先輩の案内でサロンとやらへ…。
腰に添えられた手は気になるけど、先輩の国ではこれが普通なんだって。
「そういえばロンバード、今日の噴水の事、噂なってるよ!」
「えっ、もう?」
俺はその話が気になって身を乗り出す。
「計画順調ね!我が国来る、歓迎よ!」
実はサリュール先輩やニールや、留学生の友だちには計画の事全部話してあるんだ…
話させられたとも言うけど。
「うん、行く行く!って、サリュール先輩に会いに行っても門前払いされそうだけど」
だってめちゃ小汚い恰好してるだろうし。
バックパッカーって言えば聞こえはいいけど、半分放浪者だろうしな…。
でも、サリュール先輩は真剣な顔で言う。
「そのような事は起こり得ぬ。
サリルに於いて、既にロンバードに関わる件は全て最優先事項だ…直ちに私自ら動けるようにな。
だから喩え何処にいようと迎えに行く」
「あ…と」
サリュール先輩は真剣になると何故か流暢になる。
いつもはカタコトでフランクだから話しやすいんだけど…。
妙な緊張感の中、言葉に詰まる俺にニールが助け舟を出してくれる。
「じゃあ無事に砂漠越えなきゃね!ロンバード」
「あ、そうそう、その話を聞きに…。
それと、サリル語も教えて欲しいです」
「……そうだったね!さっそくしよう」
その後は一転、穏やかな雰囲気の中、2時間程砂漠の話を聞いたり食べ物の話をしたり…。
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