別にこいつとは付き合ってませんけど?

紫蘇

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世界をひもとく

お城の一番高い所

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夕食会の翌朝。

「おお~高い」
「ここからなら、王都がほぼ一望できまする」

王様の直接の案内で、お城の塔へ上がる。
大きな鐘がついていて、緊急時にはこれを叩いて鳴らすのだそう…
昨日寄った広場もバッチリ見えるな。

「シゲ、おだやか~なやさし~い光って、行ける?」
「ん、あ~、やってみんと分かんない」
「ちょっと試してみてよ。
 あんまりビカーってなると、みんなびっくりするしさ」
「んだな…やさし~くだな…」

ん~…そよ風~的な…払うって意識じゃなく…包む…
包み込む…闇の力を……清浄…空気清浄機…うん。

俺はラジオ体操の深呼吸みたいにして、思いっきり息を吸い、ゆっくりと吐く。
もう一度深呼吸して、ゆっくりと吐く…
吸った息を…光の息にして吐く…

「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」
「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」

いつの間にか深呼吸のとこの音楽を口ずさんでる俺。
その音楽を同じ様に口ずさみ始めるトモアキ、そして…王様。

「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」
「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」
「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」

ついでに、動きも付けてくるトモアキ。
見よう見まねでついてくる王様…

そうしているうちに、優しい光がとろとろと溢れて来る。
こんな優しい光ならもっと出せそう…ゆっくり、王都中に広がるように…

「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」
「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」

何故か3人で、ラジオ体操の深呼吸の部分だけを延々と合わせ続ける。
何事か、とお城のいろんな場所から俺たちをみてた人も、見よう見まねで動きを合わせて来る…
ふと騎士団の練兵場を見ると、そこではミシェルの号令で深呼吸をバッチリ合わせている集団がいる…

「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」

そのおかげか、光はとろとろと溢れ続け…
それを優しい風が、運ぶように…
みんなに、優しい気持ちが、届くように。
街の方を見て、意識しながら、より遠く…

「ふん、ふふふん、ふん、ふんふんふん…」

街の人たちが足を止め、お城の方をみているのが目に入った。
彼らはその場で静かに祈ってくれる…
俺に感謝してくれる。
頼ってくれる…

光のうねりはふうわりと広がり、薄い光のベールが広がっていくように城の中を、街の中を包んでいく。
上から降り注ぐ、柔らかな光…

「よし、つぎ最後!」
「うん…、ふん、ふふふん、ふん、ふん、ふん、ふんふんふん…」

これは新しい使い方だな…
それほど消耗もしないし、目覚めも良くなるし。

「お城にいる間は、これを毎日しよう」
「まじか、真面目だなぁシゲは」
「新しい事は繰り返しやって覚えないとだろ!
 んでトモ、さっきの光…」
「うん…そうだな、ちょっと浄化のが多いか。
 けど、できるだけ浄化寄りにした方がいいぞ。
 そこら中に治癒魔法かけまくるの良くない気がする」

トモアキ曰く、治癒魔法の乱用は人間本来の回復機能に異常が出るっていう話も多いらしい。
この世界はどうか分からないけど、またマルコさんに聞いてみようかな。

「そっか、じゃあ浄化メイン…………
 難しいな、それ」
「分かる、今までずっと勢いよく吹きとばして払ってたからな。
 けど、それを少しずつ祓うに変えていく為にも必要だと思うからさ」
「んじゃやっぱ毎日練習しなきゃじゃん!」
「んだな」
「是非とも!私も参加させて頂きます」

という事で、毎朝ここから王様と共にラジオ体操の深呼吸パートのみを繰り返しお伝えする事になった。
俺はどうせなら朝飯をしっかり食べる事にも繋げられたら…と提案する。

「朝食前にやると良いかもしれませんね」
「ええ、では明日はそのように致しましょう」
「すみません、我儘言いまして…」
「はは、聖人様の我儘は可愛らしいものばかり…いや、一つ難しいものもありましたな」
「えっ…すいません、なんかご迷惑…」
「いやいや、作る者達は楽しそうにしとります!一度見に行ってやってください!」
「あ、はい…?」

なんのこっちゃか分からないけど取り敢えず返事だけして、俺とトモアキは部屋へ戻り…
迎えに来たクリスチーヌさんに工房へ連れて行かれるまで、何やらピンとこないまま過ごした。




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