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恋人同士になる試練

21番目の祠 2

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「これも違ったか…」
「でも、右側の扉の可能性は全部潰したな」

…扉の罠は、俺が考えていたよりは単純で、それでもまあまあ面倒な罠だった。

間違ったコースを辿ると、祠の外に出てしまうのだ。

祠の外から見てみると、お勝手口みたいな扉がいっぱい付いている。
だからどっかの勝手口から入っても良さそうだと思うじゃん?
でも勝手口の方から入ると、次の扉が無いわけで…

「また正面に回り直すのか…」
「地味に面倒ですね」
「徒労感が凄いんだよな…」

入口付近には着いてきた商人さんやリゲルさん、クリスチーヌさんもいるわけで、何だか気恥ずかしい…
しかも度々…

「お次は真ん中の扉からのルートつぶしだな」
「一旦休みたい…」
「手分けできたら楽なのに…」
「何回目が最後なのか、いまいち分からないからなぁ…」

そう、これが最後の選択、っていうのが分かれば、最後だけでも手分けして一気に開けられるのにな。

「だが、最後の扉のどれかから魔物が出てきても困るしな」
「そう考えると仕方ない、とはいえ…」

もう外に出るのも10回目だ。
早いとこ正解の扉を引かないと…次の日がきちゃいそう。

「真ん中の真ん中の真ん中…じゃ、駄目なのかな」
「思い付きで何度も失敗するより、一個一個潰していく方が分かりやすくはあるけど、飽きるな」

飽きたとか言ってる場合じゃないんだけどね。

「さ、頑張りましょう皆さん!」
「…なんでセトはそんなに元気なんだよ」
「空元気ですよ!」
「だめじゃん」

ほんと、どれが正解なんだろうな…

早い事引き当てたい!

***

左側の扉の、右の、右の、真ん中…

ここまで来て、ようやく前室らしきものが見つかった。

「長かった…」
「しかし、魔物が一匹も出なかったな」
「そうだな、それは有り難かった」
「明るかったしな!」
「ああ」

この罠も、200年後の浄化の巡礼の時には当たりの場所が変わってるんだろうな…
一応どんな罠かは書き残しておくって、トモアキは言ってるけど。

「じゃあ、封印の間に行ってくる…ミシェル」
「ああ、行こう」
「皆も休める限り休んでね」
「有難うございます、シゲル様」

俺はミシェルと手を繋ぎ、封印の間であろう場所の扉を開いた。

=====================

~トモアキ視点~

シゲルはミシェルと封印の間へ行った。
いつもの事ながら、二人が中へ入った瞬間に扉が一旦消えてしまうので、いつもちゃんと帰ってくるのか不安になる。

「いつも扉が消えるのが不安ですよね」

どうやら不安になるのは俺だけじゃないらしい。
マルちゃんがそう言うのを聞いて、そう言えば前世が聖女だったとか聞いたな…と思い出す。

「マルちゃんさあ、前世の記憶、どこまであるの」
「前世ですか…それほど覚えているわけじゃないんですけどね」
「覚えてる範囲で良いよ、聞かせて」
「そうですね…
 旦那の要望に応えようとし過ぎて無理をした事とか…その、旦那以外の生き物と会わせて貰えなくなって、病んだんですよね」
「とんでもない束縛野郎だな」

前世の旦那は最悪だったらしいが、その話は俺が聞いて良いことでも無さそうだ。

「他には?」
「うーん、他…ですか?」
「辛い記憶じゃなくて、ちょっと楽しげなやつは無いの?」
「楽しい記憶、ですか…う~~ん」

マルちゃんは少し考え込んで、言った。

「前世でも、浄化の巡礼…みたいな旅を、したかもしれないですね。
 祠を見たとき、懐かしい感じがすることもあって…でも、中の様子は全く記憶に無いですから、聖騎士団と聖女様が巡った後に旅をしたのかな…でも、そうなると部屋から出して貰えない事と矛盾するし…うーん」
「…ってことは、クリスチーヌさんみたいに、騎士団に同行してお世話する係だったのかもね」
「あ、あー!それ、ありそうですね」

ふーん…前世の記憶がある場合でも、祠の内部は記憶から消されるようになってんのかな。
やっぱ内部は完全に秘密なのか、ガラッと変わっちまうかのどっちか…。

だとしたら、スカートは、外観の事じゃないか?
ってことは…

「18番目の鳥籠、15番目がバンデリンの花…
 確か15番目の封印の間の扉は…四阿あずまやの真ん中に立ってたんだよな」

封印の間は、確か…シゲルによれば…大自然の中に遊牧民の移動式住居が立ってたんだっけな。
風呂は露天で、滝があって沢…

「そういう景色の場所が、バンデリンにもしあったとしたら…
 ゲートは15番目で確定…って事は、今とは逆回りって事だわな」

確か前世でもお遍路さんは1~88の順打ちと逆打ちで意味が変わるとかあったし、いつから逆回りになったのかは気にした方が良さそうだ。

「うん…ありがとマルちゃん、参考になった」
「いえいえ、この程度の事でよければ…」

あの神様以外の何かが、この儀式を操ってる可能性も無くは無い。
どうしても気になる。

全知全能の神様じゃない、という言葉が…。


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