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恋人同士になる試練
トライデント家の古文書
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ドリスさんの耳は無事に元通りになり、三人で一緒にお茶を飲んでお菓子を食べて談笑…
「どのお菓子がお気に召しましたか?」
「えっと、この、固いクッキーが好きです」
「そうですか!この菓子は、この辺りの家庭で良く作られているものなのです」
「へえ…名物だったんですね」
お菓子には何の異常も無く、ただただ美味しかった。
疑って申し訳ない。
「ドリス兄上、何か企んでおられぬか」
「当然だ。
この菓子に『聖人様のお気に入り』という一言を付ければ、土産として喜ばれるかもしれんだろう?
皆収入が無いのだ、何か売れる物があれば助かるだろう」
行商も復活するし…とドリスさん。
それに対して、ミシェルは困り顔だ。
「兄上、勝手に聖人様の名を使うのは…」
「だから、このお菓子でシゲル様にひとまずの対価をお支払いできないかと思ったのだ。
なにぶん金が無いんだ、現物で用意するしか…」
どうやら、ドリスさんは商売っ気のあるタイプらしい。
だからちょっと企むような所もあるのか…
と言っても、騙すとかそういう気持ちはやっぱり無いみたい。
「別に、お好きな様に使って頂いて結構ですよ?」
「誠ですか!?良かった…」
こんなに一つ一つに一喜一憂してちゃ、他の国だとすぐカモにされそう…
トラネキサムから出たら大変だぞ。
「ところで、ご一緒に来られたマキタ様とクリスチーヌ殿は?」
「はい、少し確かめたい事がありまして、先にこちらの家の書庫へ案内して頂いております」
「ほう…確かめたい事、ですか」
「ええ、この先どうしても…自分が天寿を全うする為のヒントが無いかと」
俺は嘘をついた。
ミシェルは少し驚いたような顔をした。
…そう、俺にだって簡単な嘘はつけるのだ。
そう思うと、やっぱりこの国の人々の純真さは…変だと思う。
「それは大変な事ではありませんか!
今すぐ我々も書庫へ参りましょう」
ドリスさんも俺の嘘を頭から信じてしまうしな。
***
使用人の人たちにドリスさんの元気になった御姿をお披露目しつつ、書庫へ。
「お、シゲ!来たか!」
「お疲れ様ですシゲル様」
書庫へ入ると、トモアキとクリスチーヌさんが別々の場所でそれぞれ本をめくっていた。
俺は入口から近い方にいたクリスチーヌさんに声をかけた。
「クリスチーヌさん、何か見つかった?」
「私の方では何も。ですが相当古い物もありますので、もう少し探してみます。
ああ、すみませんがミシェル様、あちらの本を取って頂けませんか」
クリスチーヌさんは流れる様にミシェルを呼びつけ、俺から引き離した。
…ってことは、トモアキは何か見つけた?
俺はトモアキへそろそろと近寄った。
すると、待っていたかのようにトモアキが小声で話した。
「シゲ、この本。
…初代トライデント家当主の話、みたいな感じだと思うんだけど…多分シゲには読めると思って」
「えっ、他の人は?」
「多分無理。俺もざっくりしか…。
シゲ、外大に行きたいから英語頑張ってたじゃん?」
「うん」
「これ多分、英語だわ」
「は?」
「神様知識に、地球の言語は入ってないだろ?
だから俺もちょっと…だから任せた、シゲ」
「お、おう」
トモアキは俺に1冊の古びた本を渡して、手帳とペンを取り出した。
どうやら俺に全てを任せるつもりらしい。
「んじゃあ、ちょっと読んでみる…」
表紙を開き、タイトルを読む。
「えっと…『勇者召喚された俺、巨乳(美人)聖女と一緒に魔王を倒して異世界を救う』」
「えっまじで」
「うん」
こうしてみると、タイトルで大体の中身が分かるのって有難いな…。
さて、読み進めるとするか。
「どのお菓子がお気に召しましたか?」
「えっと、この、固いクッキーが好きです」
「そうですか!この菓子は、この辺りの家庭で良く作られているものなのです」
「へえ…名物だったんですね」
お菓子には何の異常も無く、ただただ美味しかった。
疑って申し訳ない。
「ドリス兄上、何か企んでおられぬか」
「当然だ。
この菓子に『聖人様のお気に入り』という一言を付ければ、土産として喜ばれるかもしれんだろう?
皆収入が無いのだ、何か売れる物があれば助かるだろう」
行商も復活するし…とドリスさん。
それに対して、ミシェルは困り顔だ。
「兄上、勝手に聖人様の名を使うのは…」
「だから、このお菓子でシゲル様にひとまずの対価をお支払いできないかと思ったのだ。
なにぶん金が無いんだ、現物で用意するしか…」
どうやら、ドリスさんは商売っ気のあるタイプらしい。
だからちょっと企むような所もあるのか…
と言っても、騙すとかそういう気持ちはやっぱり無いみたい。
「別に、お好きな様に使って頂いて結構ですよ?」
「誠ですか!?良かった…」
こんなに一つ一つに一喜一憂してちゃ、他の国だとすぐカモにされそう…
トラネキサムから出たら大変だぞ。
「ところで、ご一緒に来られたマキタ様とクリスチーヌ殿は?」
「はい、少し確かめたい事がありまして、先にこちらの家の書庫へ案内して頂いております」
「ほう…確かめたい事、ですか」
「ええ、この先どうしても…自分が天寿を全うする為のヒントが無いかと」
俺は嘘をついた。
ミシェルは少し驚いたような顔をした。
…そう、俺にだって簡単な嘘はつけるのだ。
そう思うと、やっぱりこの国の人々の純真さは…変だと思う。
「それは大変な事ではありませんか!
今すぐ我々も書庫へ参りましょう」
ドリスさんも俺の嘘を頭から信じてしまうしな。
***
使用人の人たちにドリスさんの元気になった御姿をお披露目しつつ、書庫へ。
「お、シゲ!来たか!」
「お疲れ様ですシゲル様」
書庫へ入ると、トモアキとクリスチーヌさんが別々の場所でそれぞれ本をめくっていた。
俺は入口から近い方にいたクリスチーヌさんに声をかけた。
「クリスチーヌさん、何か見つかった?」
「私の方では何も。ですが相当古い物もありますので、もう少し探してみます。
ああ、すみませんがミシェル様、あちらの本を取って頂けませんか」
クリスチーヌさんは流れる様にミシェルを呼びつけ、俺から引き離した。
…ってことは、トモアキは何か見つけた?
俺はトモアキへそろそろと近寄った。
すると、待っていたかのようにトモアキが小声で話した。
「シゲ、この本。
…初代トライデント家当主の話、みたいな感じだと思うんだけど…多分シゲには読めると思って」
「えっ、他の人は?」
「多分無理。俺もざっくりしか…。
シゲ、外大に行きたいから英語頑張ってたじゃん?」
「うん」
「これ多分、英語だわ」
「は?」
「神様知識に、地球の言語は入ってないだろ?
だから俺もちょっと…だから任せた、シゲ」
「お、おう」
トモアキは俺に1冊の古びた本を渡して、手帳とペンを取り出した。
どうやら俺に全てを任せるつもりらしい。
「んじゃあ、ちょっと読んでみる…」
表紙を開き、タイトルを読む。
「えっと…『勇者召喚された俺、巨乳(美人)聖女と一緒に魔王を倒して異世界を救う』」
「えっまじで」
「うん」
こうしてみると、タイトルで大体の中身が分かるのって有難いな…。
さて、読み進めるとするか。
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