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恋人同士になる試練
19番目の祠 4
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般若心経の不思議な効果で、祠の通路はほぼ浄化されてしまった。
「ねえミシェル、ここってお墓だったの?」
「そうだな、近くに墓地はあったと思う」
「じゃあそこから来てんのかな…」
この祠には「骸骨」と呼ばれる骨の魔物がいっぱいいたらしい。
「そこら中に骨が転がってんな」
「人間の頭蓋骨も結構多いな…」
「成仏してれば良いんだけどな」
人の骨…骨までいくとわりかし平気だな。
腐乱死体だったら半狂乱になりそうだけど。
「魔物に襲われて死んだ人も、魔物から街を守って死んだ人も沢山いるだろうし、闇の力に飲まれた人もいるだろうし…な」
誰も何も言わないけど、絶対死人は出てるはずだ。
村の診療所を見ても、街の病院を見ても、ギリギリで頑張って生きてた人が沢山いた…ということは、間に合わなかった人もいるだろう。
「もっと早く来てくれたら、っていう人も沢山いるだろうな…」
「そりゃいるだろうけど、言っても仕方ない事だって分かってんじゃん」
「けど、そんなすぐ割り切れるもんじゃない、と…思うんだけどなぁ」
俺、そう言って責めたてられるのも覚悟してたんだけどな。
みんな「ありがとう」しか言わないんだ…
「俺に気を遣って、言えないのかもしれないけど」
「この国の人が、恨むっていう心をどれくらい持ってるか…だよな」
トモアキが言うように、この国の人はとっても「人が良い」…負の感情があまりない。
恋愛における「嫉妬」以外に、人を傷つけたくなる様な感情が希薄なんだ。
不思議だよなぁ。
「人って生まれつき「恨む」っていう思考が備わってるわけじゃないよな?」
「さあ…考えた事無いけど、多分そう…じゃん?」
人間が生まれつき持っている心に「恨み」が無いなら、誰かが「恨み」を持たない様に教育してる…
騎士学校以外に学校は無いから、家や地域でそう育てるって事だ。
逆に生まれつき持ってるんなら、持たない様に細工されて産まれて来るってことだ。
「どっちにしたって、神の力を感じるな」
「意外と介入するタイプっぽいしな」
っていうか、この国で宗教ってどうなってんだろ。
教会も無いし、経典も無いし、神官もいない。
ラブラヴ神様を唯一の神様とする一神教、っていうだけで、教義も良く分からないし…。
「宗教で揉めるのを防ぐために、そういうのが無いのかもな」
「そんなだから信仰が弱くなるんじゃね?」
「んだ、そこんとこ難しいよな」
とにかく平和で仲良く、に拘られて創られてる…
そんな感じ。
トモアキが言う。
「一種のディストピア…かもな」
「ディストピア?」
「超・管理社会ってこと…あれ?あの扉…」
「あっ…もう着いたの?」
「早いな…戦闘が無ければこんなものか」
おしゃべりしながら歩いてるうちに、なんと前室の扉らしきものの前に着いてしまった。
「…まだ安心するのは早いですよ」
「ええ、扉の向こうが前室とは限りません」
そう言って、リラさんとセトさんが前に歩み出る。
「じゃあ、扉を開けたら魔法…頼むわね、セト」
「ああ、任せて」
そう言って二人が扉の前に立ち、セトさんは詠唱。
リラさんがノブに手をかけて…
***
…結論から言うと、そこは前室ではなかった。
「駄目だ、リラ!」
「分かった!一旦締めます!」バン!!
セトさんが飛び退いた瞬間リラさんが扉を閉める。
扉が向こうから激しく叩かれる。
その扉をハイドさんがおもいっきり塞ぐ。
セトさんが言う。
「……骸骨だらけです」
「やはり魔法でも無理か」
「はい、やはり…光の力しか、効かないようです」
そう、実は骸骨の魔物には普通の攻撃が効かないんだって。バラバラになってもすぐに元通りになって襲ってくるそうで…恐ろしいな。
マルコさんが言う。
「叩き壊しながら押し通るのも難しいか?」
「ああ、自分の攻撃に仲間を巻き込みかねん」
「そんなにいるのか?」
「山ほどいる」
「まじか」
扉を叩く音は収まる気配が無い。
押さえるのだって、扉が壊れないから出来るけど、割れたり穴が開いたりしたら…。
「シゲ、単純に浄化の光、いけるか」
「うん、まだ全然余力あるし。
セトさん、結構強めじゃないと無理そう?」
「そうですね、数がとにかく多いですから」
「んじゃ、頑張って出そう…いくよ」
闇の力め、死者をもてあそぶんじゃない…!
俺は多少の怒りも込めて、清めるための光を手の中にがっつり溜め込んだ。
「ねえミシェル、ここってお墓だったの?」
「そうだな、近くに墓地はあったと思う」
「じゃあそこから来てんのかな…」
この祠には「骸骨」と呼ばれる骨の魔物がいっぱいいたらしい。
「そこら中に骨が転がってんな」
「人間の頭蓋骨も結構多いな…」
「成仏してれば良いんだけどな」
人の骨…骨までいくとわりかし平気だな。
腐乱死体だったら半狂乱になりそうだけど。
「魔物に襲われて死んだ人も、魔物から街を守って死んだ人も沢山いるだろうし、闇の力に飲まれた人もいるだろうし…な」
誰も何も言わないけど、絶対死人は出てるはずだ。
村の診療所を見ても、街の病院を見ても、ギリギリで頑張って生きてた人が沢山いた…ということは、間に合わなかった人もいるだろう。
「もっと早く来てくれたら、っていう人も沢山いるだろうな…」
「そりゃいるだろうけど、言っても仕方ない事だって分かってんじゃん」
「けど、そんなすぐ割り切れるもんじゃない、と…思うんだけどなぁ」
俺、そう言って責めたてられるのも覚悟してたんだけどな。
みんな「ありがとう」しか言わないんだ…
「俺に気を遣って、言えないのかもしれないけど」
「この国の人が、恨むっていう心をどれくらい持ってるか…だよな」
トモアキが言うように、この国の人はとっても「人が良い」…負の感情があまりない。
恋愛における「嫉妬」以外に、人を傷つけたくなる様な感情が希薄なんだ。
不思議だよなぁ。
「人って生まれつき「恨む」っていう思考が備わってるわけじゃないよな?」
「さあ…考えた事無いけど、多分そう…じゃん?」
人間が生まれつき持っている心に「恨み」が無いなら、誰かが「恨み」を持たない様に教育してる…
騎士学校以外に学校は無いから、家や地域でそう育てるって事だ。
逆に生まれつき持ってるんなら、持たない様に細工されて産まれて来るってことだ。
「どっちにしたって、神の力を感じるな」
「意外と介入するタイプっぽいしな」
っていうか、この国で宗教ってどうなってんだろ。
教会も無いし、経典も無いし、神官もいない。
ラブラヴ神様を唯一の神様とする一神教、っていうだけで、教義も良く分からないし…。
「宗教で揉めるのを防ぐために、そういうのが無いのかもな」
「そんなだから信仰が弱くなるんじゃね?」
「んだ、そこんとこ難しいよな」
とにかく平和で仲良く、に拘られて創られてる…
そんな感じ。
トモアキが言う。
「一種のディストピア…かもな」
「ディストピア?」
「超・管理社会ってこと…あれ?あの扉…」
「あっ…もう着いたの?」
「早いな…戦闘が無ければこんなものか」
おしゃべりしながら歩いてるうちに、なんと前室の扉らしきものの前に着いてしまった。
「…まだ安心するのは早いですよ」
「ええ、扉の向こうが前室とは限りません」
そう言って、リラさんとセトさんが前に歩み出る。
「じゃあ、扉を開けたら魔法…頼むわね、セト」
「ああ、任せて」
そう言って二人が扉の前に立ち、セトさんは詠唱。
リラさんがノブに手をかけて…
***
…結論から言うと、そこは前室ではなかった。
「駄目だ、リラ!」
「分かった!一旦締めます!」バン!!
セトさんが飛び退いた瞬間リラさんが扉を閉める。
扉が向こうから激しく叩かれる。
その扉をハイドさんがおもいっきり塞ぐ。
セトさんが言う。
「……骸骨だらけです」
「やはり魔法でも無理か」
「はい、やはり…光の力しか、効かないようです」
そう、実は骸骨の魔物には普通の攻撃が効かないんだって。バラバラになってもすぐに元通りになって襲ってくるそうで…恐ろしいな。
マルコさんが言う。
「叩き壊しながら押し通るのも難しいか?」
「ああ、自分の攻撃に仲間を巻き込みかねん」
「そんなにいるのか?」
「山ほどいる」
「まじか」
扉を叩く音は収まる気配が無い。
押さえるのだって、扉が壊れないから出来るけど、割れたり穴が開いたりしたら…。
「シゲ、単純に浄化の光、いけるか」
「うん、まだ全然余力あるし。
セトさん、結構強めじゃないと無理そう?」
「そうですね、数がとにかく多いですから」
「んじゃ、頑張って出そう…いくよ」
闇の力め、死者をもてあそぶんじゃない…!
俺は多少の怒りも込めて、清めるための光を手の中にがっつり溜め込んだ。
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