別にこいつとは付き合ってませんけど?

紫蘇

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恋人同士になる試練

トライデント家の三男

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俺の質問にミシェルは戸惑いつつも答えてくれた。

「偶然…いや、自分で選んだのだ。
 前線で魔物に立ち向かう、自分の騎士像とも合っていたし、能力も戦闘向きだったし…」
「だったし?」
「青狼騎士団の旗が、トライデント家の旗と似ているから、親近感が湧いたんだ」
「ってことは、トライデント家の旗にも狼がいるの?」
「ああ」

つまり、トライデント家は元々狼と深い関係があるって事か。

「ミシェル…この家の記録って、見られる?」
「ああ、父に言えばすぐに」
「じゃあ、次に来る時に見せて貰ってもいい?」
「何か気になる事があるのか?」
「うん、隠された祠の事…ちょっと調べたくて」
「…本当にあるのか?」
「分かんない、でも調べてみる価値はあると思うんだ」

それに、狼と縁があるって話も何か気になる。
お兄さんが大きな狼になった事、絶対無関係じゃないじゃん。

ミシェルだって…その…

やたら匂いを気にするというか…。
お尻のにおいを嗅ぎたがるし。
しょんぼりすると犬っぽいし…
狼は犬の祖先だから、似てるのかも。
あと、バニーになった途端に理性無くすし…

さすがにそれは言えないけど。

「しかし、何故うちの記録なんだ?」
「…俺が元いた世界では、狼が先祖っていう民族とか、狼を信仰してる民族とかいてね。
 だから『狼と縁がある』って『歴史がある』ってイメージなんだけど」
「まあ、確かに古い家ではある」
「だから、古い記録もあるかなって思ってさ」
「なるほど」

それになんて言ったって貴族だしな。

「…じゃ、そろそろパブロさんに戻って貰って…」
「そうだった、厩舎にいるのだったな。
 シゲル、ああは言ったが、もしもの時は馬の浄化を頼めるだろうか」
「うん、街で暴れたら大変だもんね」

今のところ馬の魔物は出ていない。
けど、そもそも大きいのに、魔物になったらもっとデカくなって、建物を破壊して回りそう…

…っていうか、パブロさんは大丈夫なのか…?

「心配だから、早く行こう!」
「ああ」

そうして俺は一度屋敷の外へ…

そこで見た光景は!

***


玄関を出ると、門の前には人だかり…
いや、門の前だけでなく、お屋敷を取り囲むように、人・人・人。

「聖人様だ!」
「ミシェル様もご一緒だ!」
「皆様お静かに!お静かにお祈りください!」

それを何故かリゲルさんが仕切っている…
なんで?

「あの、リゲルさん…一体これは…?」

するとリゲルさんは申し訳なさそうに頭を掻き掻き言った。

「申し訳御座いません。
 私が宿に戻り、皆様に状況をお伝えしたところ、どうやらその話を聞いた方がおられたようで…」

よく見ると、遠くの方で聖騎士団のみんなが人員整理をしているのが見える…

しかし、これだけの人がまだ光の力を求めてるなんて、予想外だ。
もう夜だし、危ないから帰ってもらった方が…

「あの、リゲルさん。
 明日、塔から光を振らせるから、待てる人は…」

すると、またも予想外の答えが返ってきた。

「いえ、祈りが力になると知って、ご領主とそのご家族の為に祈りたい、と」

リゲルさんは言う。
多くの人が、もう問題なく動けるからこそ「駆けつける」ことが出来たのだ、と。
すでに彼らは光の力を自分には求めていない。
だから次は自分たちを守ってくれた領主様とご家族を助けて欲しい、その為の力になる為に、聖人様に感謝を祈るのだ…と。

ミシェルは言った。

「…そうか、皆に心配をかけたな」

ミシェルは無表情になって正面を向いた。
これは確実に照れ隠しだな。

俺でなくてもすぐ分かる。

「ミシェル、良かったねえ」
「私ではない、私の家族が立派なのだ」

分かるよ、照れくさいのは。
でも、ここはそういう場面じゃないと思う。
だから俺はミシェルに言った。

「ふふ、誉め言葉は素直に受け取った方がいいよミシェル。
 せっかく褒めたのに喜ばれなかったら、褒めたほうも悲しいじゃん」
「…そうか」
「そうだよ、だからこういう時は、『自慢の家族だ』って言うんだよ」
「なるほど…」

ミシェルは頷き、息を大きく吸った。
そして大きな声で言い直した。

「そうだ、私の家族だ。
 とても立派な、自慢の家族だ!!」

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