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恋人同士になる試練
トライデント家の間取り
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厨房の中でそこそこの光を使ったので、ついでにそこにあった食料も浄化できた。
パンはカビもなく美味しそうな色に、水も透明に、買い置きの野菜も元通り…
なによりだ。
「パブロ、水と食料を。皆の様子を見に行く」
「はいっ!」
パブロさんは嬉しそうにパンを手に取り、水を入れた瓶と一緒に籠へ詰め込んでいく。
ミシェルはパブロさんに確認する
「パブロ、生きている、とはどういう状況だ」
「はい…実は数日前に部屋の中を見ぬ様にと、皆様から仰せつかりまして…。
ですが、まだ生きておられるはずです!毎朝扉の外へ置いておくパンが無くなります故」
「ふむ、食える程度には生きているか」
「……」
ミシェルの言い方が、なんて言うか…こう…身も蓋も無い。
もうちょっと気遣えばいいのにな…こういうところが、クリスチーヌさんが怒るポイントなんだろうな。
何でもズバズバ言い過ぎるとこ。
「食えるのなら希望は大いにあろう。
頼むぞ、シゲル」
「うん、分かった」
ま、一応フォローしてるから良いか。
……いいか?
***
1階と2階は現在人が居ないという事で、一気に3階へ上がる。
階段を上がってすぐの部屋の前で、ミシェルとパブロさんが立ち止まった。
「ここが父の部屋だ…パブロ、鍵を」
「はい」
ミシェルが鍵を開け、ノブに手をかける。
「シゲル、準備が出来たら言ってくれ」
「うん………………いいよ」
ミシェルが扉をそっと体一つ分開ける。
「光ーーっ!!」
俺がその隙間から部屋全体に光を流し込む。
流し込み終わったらミシェルが踏み込む…
厨房でやったのと同じ流れだ。
「…父上っ!生きておられるか!」
「……ぅ……」
「…父、上……か…?」
「……ああ…ミシェル、……」
大丈夫かな。
何だかしんどそう…直接光を浴びせた方が…
俺が心配していると、ミシェルが扉から半身だけ出てきて言う。
「パブロ!籠!!」
「はっ!!」
パブロさんが籠を差し出す。
ミシェルはそこからパンと水を一つずつ取り、また中へ…。
大丈夫かな、と思った矢先にミシェルが部屋から出てきて言う。
「では、次!!」
「えっ次っ!?」
「兄二人と姉、屋敷自体も浄化してもらわねばならん。
明後日は祠だ、使い過ぎは良くない」
「いやそうかもしれないけど!」
俺の訴えを聞かず、ミシェルはそのドアに鍵を掛けると、さっさと廊下を歩き始めた。
「パブロ、お母様は」
「奥様は窮状を伝えに、ひと月程前に王都へ」
「ご不在か、ならば良い」
そして次の次の扉に手をかけ、また言った。
「パブロ、鍵!」
「はい!」
いいの!?
本当に良いの!?
***
…とまあ、こんな感じで残り3つの部屋を回り、最後はお屋敷全体の浄化。
建物の造りを把握する為、3人で一緒に部屋の扉を開放して回る。
1階は…
「こちらは洗濯室で御座います」
「ここは武器庫だ」
「こちらは食糧庫で御座います」
「それと、ここから奥は使用人の部屋だ」
「すごい数だね…」
「狭いが一人一室だからな」
2階は…
「こちらは応接間でございます」
「こっちは執務室だ」
「こちらは遊戯室でございます」
「こっちは大食堂だ」
「お客様用のフロアと仕事部屋か…」
「そうだな、あっちは全部客間だ」
「広いわ~」
そして3階は、
「父、母、姉、ドリス兄、ユニス兄だな」
「お姉さんが一番上なの?」
「そうだ、嫁いでもう大分になる」
「それでも部屋はあるんだね」
「時々お戻りになられますから」
「部屋も余裕があるしな」
「ふーん…あ、ミシェルの部屋は?」
「さあ?」
何の感慨も無く、ミシェルが空き部屋をどんどん開けていく。
どれかが自分の部屋なんじゃないの?
見られて困るものは無いのかね。
「さて、ではここからは人がいる部屋だ」
「うん」
「すまんがパブロ、厩舎を頼む。
扉も窓も開け、馬が逃げぬ様見張りを」
「はい」
そう言ってミシェルはパブロさんをこのフロアから遠ざけた。
「…シゲル、覚悟してくれ。
父も、姉も、兄も…人の姿から、少々…外れている」
「えっ…まさか」
…ってことは、魔物化…?
俺はミシェルの目を見た。
ミシェルは頷いた。
…やっぱり、そうか。
「理性はある、だがドリス兄は…分からん」
「…じゃあ、いつでも光が出せるようにしとく」
「すまん…頼む」
元に、戻さなきゃ。
俺は緊張しつつ、ミシェルの後に続いた。
パンはカビもなく美味しそうな色に、水も透明に、買い置きの野菜も元通り…
なによりだ。
「パブロ、水と食料を。皆の様子を見に行く」
「はいっ!」
パブロさんは嬉しそうにパンを手に取り、水を入れた瓶と一緒に籠へ詰め込んでいく。
ミシェルはパブロさんに確認する
「パブロ、生きている、とはどういう状況だ」
「はい…実は数日前に部屋の中を見ぬ様にと、皆様から仰せつかりまして…。
ですが、まだ生きておられるはずです!毎朝扉の外へ置いておくパンが無くなります故」
「ふむ、食える程度には生きているか」
「……」
ミシェルの言い方が、なんて言うか…こう…身も蓋も無い。
もうちょっと気遣えばいいのにな…こういうところが、クリスチーヌさんが怒るポイントなんだろうな。
何でもズバズバ言い過ぎるとこ。
「食えるのなら希望は大いにあろう。
頼むぞ、シゲル」
「うん、分かった」
ま、一応フォローしてるから良いか。
……いいか?
***
1階と2階は現在人が居ないという事で、一気に3階へ上がる。
階段を上がってすぐの部屋の前で、ミシェルとパブロさんが立ち止まった。
「ここが父の部屋だ…パブロ、鍵を」
「はい」
ミシェルが鍵を開け、ノブに手をかける。
「シゲル、準備が出来たら言ってくれ」
「うん………………いいよ」
ミシェルが扉をそっと体一つ分開ける。
「光ーーっ!!」
俺がその隙間から部屋全体に光を流し込む。
流し込み終わったらミシェルが踏み込む…
厨房でやったのと同じ流れだ。
「…父上っ!生きておられるか!」
「……ぅ……」
「…父、上……か…?」
「……ああ…ミシェル、……」
大丈夫かな。
何だかしんどそう…直接光を浴びせた方が…
俺が心配していると、ミシェルが扉から半身だけ出てきて言う。
「パブロ!籠!!」
「はっ!!」
パブロさんが籠を差し出す。
ミシェルはそこからパンと水を一つずつ取り、また中へ…。
大丈夫かな、と思った矢先にミシェルが部屋から出てきて言う。
「では、次!!」
「えっ次っ!?」
「兄二人と姉、屋敷自体も浄化してもらわねばならん。
明後日は祠だ、使い過ぎは良くない」
「いやそうかもしれないけど!」
俺の訴えを聞かず、ミシェルはそのドアに鍵を掛けると、さっさと廊下を歩き始めた。
「パブロ、お母様は」
「奥様は窮状を伝えに、ひと月程前に王都へ」
「ご不在か、ならば良い」
そして次の次の扉に手をかけ、また言った。
「パブロ、鍵!」
「はい!」
いいの!?
本当に良いの!?
***
…とまあ、こんな感じで残り3つの部屋を回り、最後はお屋敷全体の浄化。
建物の造りを把握する為、3人で一緒に部屋の扉を開放して回る。
1階は…
「こちらは洗濯室で御座います」
「ここは武器庫だ」
「こちらは食糧庫で御座います」
「それと、ここから奥は使用人の部屋だ」
「すごい数だね…」
「狭いが一人一室だからな」
2階は…
「こちらは応接間でございます」
「こっちは執務室だ」
「こちらは遊戯室でございます」
「こっちは大食堂だ」
「お客様用のフロアと仕事部屋か…」
「そうだな、あっちは全部客間だ」
「広いわ~」
そして3階は、
「父、母、姉、ドリス兄、ユニス兄だな」
「お姉さんが一番上なの?」
「そうだ、嫁いでもう大分になる」
「それでも部屋はあるんだね」
「時々お戻りになられますから」
「部屋も余裕があるしな」
「ふーん…あ、ミシェルの部屋は?」
「さあ?」
何の感慨も無く、ミシェルが空き部屋をどんどん開けていく。
どれかが自分の部屋なんじゃないの?
見られて困るものは無いのかね。
「さて、ではここからは人がいる部屋だ」
「うん」
「すまんがパブロ、厩舎を頼む。
扉も窓も開け、馬が逃げぬ様見張りを」
「はい」
そう言ってミシェルはパブロさんをこのフロアから遠ざけた。
「…シゲル、覚悟してくれ。
父も、姉も、兄も…人の姿から、少々…外れている」
「えっ…まさか」
…ってことは、魔物化…?
俺はミシェルの目を見た。
ミシェルは頷いた。
…やっぱり、そうか。
「理性はある、だがドリス兄は…分からん」
「…じゃあ、いつでも光が出せるようにしとく」
「すまん…頼む」
元に、戻さなきゃ。
俺は緊張しつつ、ミシェルの後に続いた。
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