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恋人同士になる試練
南の祠 4
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飯を食ったら眠くなる。
さっき寝たのにもう眠い…。
「俺、最近、やたら眠くなるんだよね…」
「成長期なのではないか?
背丈が伸びる時期はそうなる者もいると聞くが」
「成長期!?まじで!?」
そうならめっちゃ嬉しい!
ガリを脱出した今、チビも脱却できれば子ども扱いされなくて済む様になるかも!
「俺も大人になれるかなぁ」
「大人?」
「そう、見た目の話」
「モテたいとか、そういう事か?」
「違うよ、俺はあの『子どもなのに偉いわね』っていう視線が嫌なの。
子どもが頑張ってるんだから、みたいな感じで大目に見てもらっても嬉しくない…
まあ、個人的なプライドの話だよね」
「そうか…なるほどな」
ミシェルの「言葉の端っこにも嫉妬する」癖はなかなか治らないようで、いちいち俺がモテようとしていないか確認してくる。
困ったもんだ。
「…ミシェルは俺の体型が変わるの、嫌?」
「そんな事はない。
むしろ大きくなってくれた方が嬉しい」
「じゃあ、俺がハイドさんくらい大きくなったらどうする?」
「どうもしないが、想像も付かないな…」
「大丈夫、俺も想像つかないから」
そう言って二人で笑い合う。
こんな感じでこれからも一緒にいられると良いな…なんて思ったりして。
「さ、お皿片付けてお風呂入ろっか。
じゃないと俺このまま寝ちゃいそう」
「そうだな…そういえば『距離なし』はどうする」
「あ、そうだった…入る前にやろうか」
何だかんだで「距離なし」も続けている。
というか、これをしないとやっぱり出して貰えないんだ…
相当気に入ってるな、神様。
俺は残った唐揚げとポテトサラダを小さな皿に盛り直し、鍋の蓋を上に乗せる。
その間にミシェルは洗い物をしてくれる。
こんな風に家事を分け合えるって良いな。
一人で全部するのもそれほど苦じゃないけど、食べた後で「なんでこんなに皿出したんだろう」とか考えなくて良いもん。
「…浄化の巡礼が終ったら、俺たちどうなるんだろうね」
「私はずっとシゲルと一緒だぞ」
「…そっか」
流浪のハンバーグ屋さんをしながら、みんなに文字や計算を教える施設を作る。
そんな未来を思い描いていたけど…
「ミシェルは、実家に帰らなくても良いの?」
「ああ、家に戻ったところでする事も無いしな」
「えっそうなの!?」
貴族って、いつかは家に帰って、土地とか事業とかを継いだりしなきゃいけないもんじゃないの?
するとミシェルは俺の驚く顔を見て、笑顔で言った。
「大体兄もいるし姉もいるし甥も姪もいるのに、邪魔になるだけだぞ」
「えっ、そんなもんなの?騎士団は!?」
「それも代わりはいくらでもいる。我が青狼騎士団は層が厚いんだ」
ミシェルはちょっとだけ得意げに言う。
嘘を付けないミシェルの言葉だから、きっと本当の事なんだと思う。
「だからシゲルに心置きなく付いて行けるぞ」
「何だ…そっか」
ミシェルは貴族だから、家がどうとか勝手に考えてた。
悩んでないで、さっさと聞けば良かったんだな…
っていうか、元の世界の貴族の事もそんなに知らないけどね!
「という事は、後の問題は隠されてるかもしれない祠だけか…」
「?なんだそれは」
「うん、もしかしたら祠、もうちょっとあったのかもしれないと思って…」
「何!?」
…こんなとこで軽々しく話す事じゃない気もする。
だけど、ミシェルには先に俺の考えを伝えておきたいんだ。
「…長くなるから、お風呂入ってから話すよ」
どうも最近気になる、この国とこの世界の事。
規則的に並ぶ祠。
素直で嘘が付けない国民性。
獣人の国が異様に離れている理由。
そして何より、神様のあの言葉…。
何かおかしくない?
神様からの予備知識には無い、何かが隠されている。
わざと与えなかった可能性。
ラブラヴ神様が知らない可能性。
絶対何かある。
ここまでトントン拍子すぎるのも…
変だ。
さっき寝たのにもう眠い…。
「俺、最近、やたら眠くなるんだよね…」
「成長期なのではないか?
背丈が伸びる時期はそうなる者もいると聞くが」
「成長期!?まじで!?」
そうならめっちゃ嬉しい!
ガリを脱出した今、チビも脱却できれば子ども扱いされなくて済む様になるかも!
「俺も大人になれるかなぁ」
「大人?」
「そう、見た目の話」
「モテたいとか、そういう事か?」
「違うよ、俺はあの『子どもなのに偉いわね』っていう視線が嫌なの。
子どもが頑張ってるんだから、みたいな感じで大目に見てもらっても嬉しくない…
まあ、個人的なプライドの話だよね」
「そうか…なるほどな」
ミシェルの「言葉の端っこにも嫉妬する」癖はなかなか治らないようで、いちいち俺がモテようとしていないか確認してくる。
困ったもんだ。
「…ミシェルは俺の体型が変わるの、嫌?」
「そんな事はない。
むしろ大きくなってくれた方が嬉しい」
「じゃあ、俺がハイドさんくらい大きくなったらどうする?」
「どうもしないが、想像も付かないな…」
「大丈夫、俺も想像つかないから」
そう言って二人で笑い合う。
こんな感じでこれからも一緒にいられると良いな…なんて思ったりして。
「さ、お皿片付けてお風呂入ろっか。
じゃないと俺このまま寝ちゃいそう」
「そうだな…そういえば『距離なし』はどうする」
「あ、そうだった…入る前にやろうか」
何だかんだで「距離なし」も続けている。
というか、これをしないとやっぱり出して貰えないんだ…
相当気に入ってるな、神様。
俺は残った唐揚げとポテトサラダを小さな皿に盛り直し、鍋の蓋を上に乗せる。
その間にミシェルは洗い物をしてくれる。
こんな風に家事を分け合えるって良いな。
一人で全部するのもそれほど苦じゃないけど、食べた後で「なんでこんなに皿出したんだろう」とか考えなくて良いもん。
「…浄化の巡礼が終ったら、俺たちどうなるんだろうね」
「私はずっとシゲルと一緒だぞ」
「…そっか」
流浪のハンバーグ屋さんをしながら、みんなに文字や計算を教える施設を作る。
そんな未来を思い描いていたけど…
「ミシェルは、実家に帰らなくても良いの?」
「ああ、家に戻ったところでする事も無いしな」
「えっそうなの!?」
貴族って、いつかは家に帰って、土地とか事業とかを継いだりしなきゃいけないもんじゃないの?
するとミシェルは俺の驚く顔を見て、笑顔で言った。
「大体兄もいるし姉もいるし甥も姪もいるのに、邪魔になるだけだぞ」
「えっ、そんなもんなの?騎士団は!?」
「それも代わりはいくらでもいる。我が青狼騎士団は層が厚いんだ」
ミシェルはちょっとだけ得意げに言う。
嘘を付けないミシェルの言葉だから、きっと本当の事なんだと思う。
「だからシゲルに心置きなく付いて行けるぞ」
「何だ…そっか」
ミシェルは貴族だから、家がどうとか勝手に考えてた。
悩んでないで、さっさと聞けば良かったんだな…
っていうか、元の世界の貴族の事もそんなに知らないけどね!
「という事は、後の問題は隠されてるかもしれない祠だけか…」
「?なんだそれは」
「うん、もしかしたら祠、もうちょっとあったのかもしれないと思って…」
「何!?」
…こんなとこで軽々しく話す事じゃない気もする。
だけど、ミシェルには先に俺の考えを伝えておきたいんだ。
「…長くなるから、お風呂入ってから話すよ」
どうも最近気になる、この国とこの世界の事。
規則的に並ぶ祠。
素直で嘘が付けない国民性。
獣人の国が異様に離れている理由。
そして何より、神様のあの言葉…。
何かおかしくない?
神様からの予備知識には無い、何かが隠されている。
わざと与えなかった可能性。
ラブラヴ神様が知らない可能性。
絶対何かある。
ここまでトントン拍子すぎるのも…
変だ。
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