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恋人同士になる試練

王子様の恋愛相談

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2つ目の祠は、何日か二人で一緒に楽しく飯食って、距離無しやって、風呂入って、寝ていたら終了した。
時々キスするくらいであんまエロい事してないのに…まあ、くっついて軽くイチャつく程度はしたけど…クリアできたのでちょっとびっくり。

そんで、やっぱりどんだけ過ごしても外では2時間しか経たない事も分かった。

「体感では1週間位いた気がするんだけどな…」
「1週間が2時間か…正に神の所業ショギョー
御業ミワザと言え、御業ミワザと」

俺は久々にのんびりと、特に何もせず過ごしたので元気いっぱいだ。

「俺ばっか休んですまんな」
「いいってことよ!」
「シゲル様のお体が第一です。世界の為にも」

俺たちは2つ目の祠から出て行商さんと獣人2人と合流し、次の祠へ行く途中にある無人宿泊所を目指した。

***

宿泊所に着いて、夕飯が終わり、焚火をのんびり眺めていると、珍しく王子様がやってきて俺に聞いた。

「祠の中は、一体どうなっているんだ?
 浄化の巡礼とは何なのだ?
 お前のその力は何という魔法なのだ?」

一気に3つも質問してくる王子様。
たまたまミシェルが席を外した瞬間を狙ってきたんだろう、ソワソワと落ち着きがない。

「祠の中は、闇の力が充満していて、祠ごとに造りが違い、罠も魔物も潜んでいます。
 とてもお連れできる場所ではありません。
 浄化の巡礼とは、その祠に入って闇の力を中和し、今後200年程度は祠の外へ噴出しないレベルに下げる事です。
 俺の魔法は、闇の力を払い、中和する力です」
「闇の力を払うだけか?」
「多少の治癒効果もありますが、それだけです」
「…ふーん」

王子は納得したようなしないような顔でなるほど、と頷いた。
虎の尻尾がゆらゆらと揺れているのは何か意味があるのだろうか…。

猫の仕草がよく分らん俺は、この人と何をどう喋ったらいいのかもよく分らないので、余計な事言わないうちにさっさとお引取り願おうと言った。

「団長に俺と接触した事がバレる前に、お帰りになった方がよろしいかと」
「いや、もう一つ、聞きたい事がある」
「何でしょう?」
「セレスの好きな物を知っているか?」

……何、故、俺、に、聞、く。

出会ってから半年も経ってないのに分かる訳ないじゃん!なんなんよ!!

「……少なくとも食事の好き嫌いは無い、と聞いておりますが」
「他には?」
「…こういうことは俺ではなく、聖騎士団の者にお聞きになった方がよろしいのでは?」

俺がそういうと、王子の尻尾はくたりと垂れた。

「…それが、誰も部屋に入れてくれんのだ」
「えっ、なん……あっ」

そうか、マルコさんとハイドさんも、リラさんとセトさんも、今頃イチャイチャしてるだろうしな。
セレスさんは当然入れてくれないだろうし、クリスチーヌさんはトモアキと一緒に、行商人さんのところで今後の行程について説明したり相談されたりしてるはずだ。

「直接聞いてみるのは如何です?」
「取り付く島もないのだ…話しかけても、そっけない返事しか返してくれないし」
「それは…返事が返って来るだけましですね」
「そうだろうか…」
「そう思って話しかけるしか無くないですか?
 王子様、セレスさんにどんな話振ってるのか分からないんで何とも…ですけど」
「うむ、それは…だな」

王子様は、まず自分の国を好きになって貰うために、自分の国の良い所を一生懸命プレゼンしているのだそう。

「それから、不自由のない生活を約束できる事や、騎士のような危険な仕事はしなくても良い事…」
「そういうのが嫌われるんじゃないですかね」
「何っ!?」

王子様はびっくりした顔で俺を見た。

「セレスさんは、何もしないお飾りの妃になるなんて耐えられないと思いますよ」
「何故だ!?私の番になりたいと近づく者は、大体…」
「番になりたいという態度を1㎜も見せない人を、番になりたくてたまらない人と一緒にしてどうするんですか」
「!!」

セレスさんは騎士であることに誇りを持っている。
俺に前「騎士とは」っていう話をしてくれた時に思った事だ。
そもそもセレスさんは、守ってあげたいほうなのだ。
それを無理矢理囲い込んでチヤホヤするなんて…。

「そんな事より、騎士の経験を生かしてこんな仕事をして欲しいとか、騎士の誇りを胸に弱い人を守れる強い王子妃の姿を見せて欲しいとか…
 そういうほうが、響くんじゃないですかね」
「なぜだ?働かなくても良いほうが良いではないか」
「良い訳無いでしょうが」

お前は働かなくていいから家庭を守ってくれ、なんていうのはモラハラの始まり。
それはよく聞くお母様方の愚痴からも明らかだ。

「働かせないということは、その人を社会から切り離すのと一緒です。
 それは強烈な孤独を強要する事と同じです」
「だが、それで他の者から好意を向けられたりしたら…
 あれほど魅力的なセレスだから、きっとすぐに周りを魅了して」
「周りを魅了して、だからどうだって言うんですか?
 番って、そんなことで崩壊するような関係なんですか?
 向こうが一方的に好いてるというだけで、だからセレスさんが浮気や不倫をするに違いない、なんてどうやったら思い込めるんです。
 大体、ただでさえ知ってる人もいない場所に一人嫁いでくれっていうんなら、新しい人間関係を築ける環境を整えるべきでしょう?」

俺は相当言ってやった。
それでも王子様は反論をやめない。

「そ、それは…茶会や、夜会で」
「王家の催しに、腹に一物抱えてない人が来る事ってあります?」
「……ない」
「だったらその中に、セレスさんを狙う人がいてもおかしくないですよね?
 それはいいんですか?」
「……良くない」
「んじゃいよいよ無理でしょ」

どうしてそんなに囲いたがるかね?
嫉妬やら独占欲やらが強いのは考えものだな!

「俺は、自分以外の人が自分の恋人を好いている事が、何故恋人の心を疑う理由になるのが理解できません。
 他人の気持ちの事なのに、恋人のせいにして責め立てる…異様な醜悪さだと思いませんか」
「そ…れは」

俺は王子様に改めて釘を差した。

「それが過ぎた嫉妬と独占欲の正体です。
 それが制御できないなら人食い虎と変わりません」

王子様は黙り込んだ。
そして、すごすごとお部屋に戻っていった。
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