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恋人同士になる試練
外周の祠2つ目、封印の間
しおりを挟む「…んん」
「気が付いたか、シゲル」
「ん、ああ…えっ、ここどこ?」
「封印の間だ」
気が付くと俺はベッドの上にいた。
どうやらミシェルが運び込んでくれたらしい。
しかも着替えまで終わって…汗のベタベタ感もなくこざっぱりしている。
「あの、ミシェル、俺…」
「最初に風呂に入れて着替えさせた。
その…気持ち悪いかと、思って」
「あ、ああ…ありがと」
俺がションベン漏らしてた事、気付いたんだな…多分俺の匂いを嗅いだ時に。
なんか…申し訳ない。
「ごめんね、俺、ちょっと…ちびって」
「大丈夫だ。騎士の大半は初陣で大なり小なり漏らすものだし、気にしてはいない」
「そうなの?」
「ああ、だから至極普通の事なんだ。
だがシゲルは、その…今まで、その代わりに光の力を漏らす事で対応していたんだと思う。
それを今回は抑えさせたから…」
「…なるほど?」
そういえば毎回毎回暴走してたもんな。
あれはションベンの代わりだったのか…
うーむ複雑。
そんな俺の心境をどう察したものか、ミシェルは光の力を温存させようとした理由を教えてくれた。
「もし途中で倒れたら…と思うと、心配で…。
今は特に闇の力に弱い者を抱えて旅をしているし、緊張もあるだろうが、光の力を使いすぎているように…見えたから」
「うん…それは、俺もちょっと思ってた。
でも、祠に着いちゃえば、封印の間で回復できるしって考えてたから」
「ここで、回復…?」
「うん。この中では何日経っても、外ではたった2時間になるでしょ。
だったらここでぐっすり寝て…
まあ、ミシェルには悪いんだけど」
神様からこの部屋の特性を聞いたとき、最初に思いついたのがこの利用方法だ。
入ってしまえば後はいくらでも寝ていられる。
予定が遅れる心配をしなくても良いから、むしろ気兼ねなく休めるでしょ?
俺がそう説明すると、ミシェルは渋い顔で言った。
「いや、なるほど…だが、使い過ぎはやはり…」
「分かってる、途中で光の力無くならないようにしないと困るもんね。
だからギリギリまで使いきらないように調整…今回は比較的、上手く行ったと思う」
「だが、次から」
「次も上手く行くとは限らない。
だから計算してる。トモが取ってくれた記録から、1日に大体どのくらい使えるかって。
内周が終わったあたりでレベルの合計が75までなら使えるようになってるって、分かってるから」
後は信者が増えれば余裕が出来てくる。
ただ外周の祠の巡礼で問題なのは、祠ごとに信者を増やせない事だ。
それどころか、忘れる人も出る事を考えればむしろ減ることも考えられる。
「外周はシビアだ。
でも内周の巡礼の間に、皆が沢山俺の信者を作ってくれた。俺の事、良いように話してくれて…
少し褒めすぎだと思うけど、だったらそれに負けない自分になろうとも思える」
「シゲル…」
ミシェルが俺を心配してくれてるのは分かってる。
だけど、それだけじゃ浄化の巡礼は乗り切れない。
かつてはこの役を、聖騎士団の団長がしてたんだと思う…冷静に作戦を立てて実行する役を。
だけど今回は、団長のミシェルが封印の当事者だから…その代わりをトモアキがやってるんだ。
俺はトモアキの言うことなら納得して動ける。
他の人もトモアキが言うならと従ってくれる。
誰も意識しないうちに自然とそうなってる。
やっぱ俺の親友はすげえ奴だ…俺も頑張らないとな。
「んじゃ、そろそろ「距離無し」…」
今回の封印の間は前回より少し広い。
ベッドは少し小さいけど、キッチンとテーブルがついていて、暫くここで生活できそうな感じだ。
「…の、前に、何か食べたいな」
「腹が減ったか?」
「うん、ミシェルは?」
「…減ってる」
「じゃあ決まりね」
俺はキッチンに言って、何か食べるものを探してみた。
神様がキッチンを付けたってことは、ここで何かしろって事だろうし、準備はあるんじゃないかな…
「あ、あった!」
キッチンの戸棚の中、そこには何種類かの野菜と乾燥スパゲッティー、大きなベーコンの塊が1つ…
「あ、トマトピューレあるじゃん!」
「トマトピューレ?」
「んじゃ簡単にスパゲッティーにしよう」
久々のメニューだけど、やってみるか!
俺は懐かしい気持ちになりつつ、台所へ立った。
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