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恋人同士になる試練
街に戻って、話し合い
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虎耳王子様を抱えた熊耳おじさんとともに祠から脱出し、街へ戻る。
街は浄化済みだから、彼らが魔物になることはないはず…
まあ、いざとなったら光を食らわせば良いしね。
「さて、王子様がいつ目を覚ますかだけど」
「我には分かりかねまする」
王子様を背負った熊耳おじさんはそう言って笑う。
「ですが直ぐに目を覚まされましょう。
…あらゆる意味において」
私はそれをお側で見届けとう御座います…
そう言った熊耳おじさんは、やっぱり笑顔だった。
「元より我が君唯一の瑕疵は番の居らぬ事のみ。
これで継承権争いなどすぐに収まりましょう…我が国も平和になりまする」
「……うん?」
ちょっと待って?
不穏な言葉が聞こえたような気が…。
しかし熊耳おじさんは尚も上機嫌で語る。
「しかし流石リュールミエール殿下。
このように逞しく凛とした方が運命のお相手とは…正に勇ましき我が君の隣に立つに相応しい方。
民からも文句はありますまい、人と獣人ならば良い子が授かるとも申しますしな」
えっ。
逞しく凛とした…って…まさか…!?
「も、もしかして、その人って」
「まさかシゲル…聖人様の事ではあるまいな?」
俺の言葉を横から奪って、ミシェルが熊耳おじさんに超威圧的に聞く。
俺は逞しくも凛としてもいないぞ?
大丈夫か。
軽く頭のおかしい質問をしたミシェルに、おじさんは微笑みながら言葉を返す。
「はは、先程子が授かると申しましたぞ?
我が君の番様は、こちらの方に御座います」
そしておじさんはセレスさんに深くお辞儀をする。
セレスさんは両側を見回して、お辞儀されているのが自分かどうかを確認し…
「…………わたしっ!?」
と今更驚いていた…。
***
説明しよう!
セレスさんは背が高く、スタイルが良く、鍛え上げた肉体美を持つ女性である。
髪は燃えるような赤のベリーショート。
凛々しい眉に、きりりと引き締まった目元…
簡単に言うと、男装の麗人というやつだ。
「私は女の子としか付き合った事が無いんです」
「なんならこの中で一番女の子にモテるぞ」
「うーんわかりみ」
男性に恋をした事もされた事もないセレスさん。
当然王子との恋愛にも及び腰…というか、喧嘩腰?
「男性とは付き合えません、お引取りを」
「男では無く私と恋をしないか、と言っている」
「はぁ?どう見ても男ですが?大体さっき会ったばかりであんた頭おかしいんじゃないの」
「時間など関係ない、匂いで分かる。
セレスこそ私の求めた番、運命の人だ」
…完全に平行線。
というわけで、後は若い二人に任せて…とばかりに、俺はミシェルとトモアキとクリスチーヌさんの4人で次の祠へ行く準備をするために街に出た。
「南の街まで、集落は無いんだっけ?」
「ああ、無人の休憩所や宿泊場所はあるがな」
「じゃあ食料が沢山いるって事か…」
「もう馬車ごと買ったらいいんじゃね」
トモアキのテキトー発言に、クリスチーヌさんがその手があったかと反応する。
「なるほど…マキタ様の仰る通りですね。
馬車も御者も食料も一気に解決します」
というわけで、俺達は商業ギルドという所に来た。
南の街までの食料運搬から何から全部を引き受けてくれそうな行商人を紹介して貰う為だ。
俺は受付で言った。
「できるだけお安く、その代わり何でも浄化する特典を付けますから」
「分かりました。
あの、紹介料を無料にする代わりに、このギルドの建物内を浄化して頂くというのは…」
「もちろんいいですよ」
というわけで、俺は建物内のそこら中でピッカピッカ…
でもそのおかげで、何組か格安で仕事を請け負ってくれる人を紹介して貰えることになった。
やったぜ。
少しお時間頂きたい、ということだったので、俺たちは商業ギルドから出て、そのまま昼飯に。
近所のお食事処に入って飯を食いつつ話をする。
「何台ほど雇えば足りるかなあ」
「問題はあの2人が付いてきそうだって事だな」
「同行なさるのならきっちり経費は請求させて頂きますが」
「大人しく王都で待っていてくれるのが一番だがな…」
4人が4人とも深くため息をつく。
とんでもない問題ごとを抱えてしまった…
「王都には連絡を入れております。
きっと王宮の方で何か考えてくれるでしょう。
…………多分」
「「多分か…」」
クリスチーヌさんの一言に、またも俺たちは揃ってため息をつくのだった。
街は浄化済みだから、彼らが魔物になることはないはず…
まあ、いざとなったら光を食らわせば良いしね。
「さて、王子様がいつ目を覚ますかだけど」
「我には分かりかねまする」
王子様を背負った熊耳おじさんはそう言って笑う。
「ですが直ぐに目を覚まされましょう。
…あらゆる意味において」
私はそれをお側で見届けとう御座います…
そう言った熊耳おじさんは、やっぱり笑顔だった。
「元より我が君唯一の瑕疵は番の居らぬ事のみ。
これで継承権争いなどすぐに収まりましょう…我が国も平和になりまする」
「……うん?」
ちょっと待って?
不穏な言葉が聞こえたような気が…。
しかし熊耳おじさんは尚も上機嫌で語る。
「しかし流石リュールミエール殿下。
このように逞しく凛とした方が運命のお相手とは…正に勇ましき我が君の隣に立つに相応しい方。
民からも文句はありますまい、人と獣人ならば良い子が授かるとも申しますしな」
えっ。
逞しく凛とした…って…まさか…!?
「も、もしかして、その人って」
「まさかシゲル…聖人様の事ではあるまいな?」
俺の言葉を横から奪って、ミシェルが熊耳おじさんに超威圧的に聞く。
俺は逞しくも凛としてもいないぞ?
大丈夫か。
軽く頭のおかしい質問をしたミシェルに、おじさんは微笑みながら言葉を返す。
「はは、先程子が授かると申しましたぞ?
我が君の番様は、こちらの方に御座います」
そしておじさんはセレスさんに深くお辞儀をする。
セレスさんは両側を見回して、お辞儀されているのが自分かどうかを確認し…
「…………わたしっ!?」
と今更驚いていた…。
***
説明しよう!
セレスさんは背が高く、スタイルが良く、鍛え上げた肉体美を持つ女性である。
髪は燃えるような赤のベリーショート。
凛々しい眉に、きりりと引き締まった目元…
簡単に言うと、男装の麗人というやつだ。
「私は女の子としか付き合った事が無いんです」
「なんならこの中で一番女の子にモテるぞ」
「うーんわかりみ」
男性に恋をした事もされた事もないセレスさん。
当然王子との恋愛にも及び腰…というか、喧嘩腰?
「男性とは付き合えません、お引取りを」
「男では無く私と恋をしないか、と言っている」
「はぁ?どう見ても男ですが?大体さっき会ったばかりであんた頭おかしいんじゃないの」
「時間など関係ない、匂いで分かる。
セレスこそ私の求めた番、運命の人だ」
…完全に平行線。
というわけで、後は若い二人に任せて…とばかりに、俺はミシェルとトモアキとクリスチーヌさんの4人で次の祠へ行く準備をするために街に出た。
「南の街まで、集落は無いんだっけ?」
「ああ、無人の休憩所や宿泊場所はあるがな」
「じゃあ食料が沢山いるって事か…」
「もう馬車ごと買ったらいいんじゃね」
トモアキのテキトー発言に、クリスチーヌさんがその手があったかと反応する。
「なるほど…マキタ様の仰る通りですね。
馬車も御者も食料も一気に解決します」
というわけで、俺達は商業ギルドという所に来た。
南の街までの食料運搬から何から全部を引き受けてくれそうな行商人を紹介して貰う為だ。
俺は受付で言った。
「できるだけお安く、その代わり何でも浄化する特典を付けますから」
「分かりました。
あの、紹介料を無料にする代わりに、このギルドの建物内を浄化して頂くというのは…」
「もちろんいいですよ」
というわけで、俺は建物内のそこら中でピッカピッカ…
でもそのおかげで、何組か格安で仕事を請け負ってくれる人を紹介して貰えることになった。
やったぜ。
少しお時間頂きたい、ということだったので、俺たちは商業ギルドから出て、そのまま昼飯に。
近所のお食事処に入って飯を食いつつ話をする。
「何台ほど雇えば足りるかなあ」
「問題はあの2人が付いてきそうだって事だな」
「同行なさるのならきっちり経費は請求させて頂きますが」
「大人しく王都で待っていてくれるのが一番だがな…」
4人が4人とも深くため息をつく。
とんでもない問題ごとを抱えてしまった…
「王都には連絡を入れております。
きっと王宮の方で何か考えてくれるでしょう。
…………多分」
「「多分か…」」
クリスチーヌさんの一言に、またも俺たちは揃ってため息をつくのだった。
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