別にこいつとは付き合ってませんけど?

紫蘇

文字の大きさ
上 下
87 / 214
恋人同士になる試練

街に戻って、話し合い

しおりを挟む
虎耳王子様を抱えた熊耳おじさんとともに祠から脱出し、街へ戻る。

街は浄化済みだから、彼らが魔物になることはないはず…
まあ、いざとなったら光を食らわせば良いしね。

「さて、王子様がいつ目を覚ますかだけど」
「我には分かりかねまする」

王子様を背負った熊耳おじさんはそう言って笑う。

「ですが直ぐに目を覚まされましょう。
 …あらゆる意味において」

私はそれをお側で見届けとう御座います…
そう言った熊耳おじさんは、やっぱり笑顔だった。

「元より我が君唯一の瑕疵は番の居らぬ事のみ。
 これで継承権争いなどすぐに収まりましょう…我が国も平和になりまする」
「……うん?」

ちょっと待って?
不穏な言葉が聞こえたような気が…。
しかし熊耳おじさんは尚も上機嫌で語る。

「しかし流石リュールミエール殿下。
 このように逞しく凛とした方が運命のお相手とは…正に勇ましき我が君の隣に立つに相応しい方。
 民からも文句はありますまい、人と獣人ならば良い子が授かるとも申しますしな」

えっ。
逞しく凛とした…って…まさか…!?

「も、もしかして、その人って」
「まさかシゲル…聖人様の事ではあるまいな?」

俺の言葉を横から奪って、ミシェルが熊耳おじさんに超威圧的に聞く。
俺は逞しくも凛としてもいないぞ?
大丈夫か。
軽く頭のおかしい質問をしたミシェルに、おじさんは微笑みながら言葉を返す。

「はは、先程子が授かると申しましたぞ?
 我が君の番様は、こちらの方に御座います」

そしておじさんはセレスさんに深くお辞儀をする。
セレスさんは両側を見回して、お辞儀されているのが自分かどうかを確認し…

「…………わたしっ!?」

と今更驚いていた…。

***


説明しよう!

セレスさんは背が高く、スタイルが良く、鍛え上げた肉体美を持つ女性である。
髪は燃えるような赤のベリーショート。
凛々しい眉に、きりりと引き締まった目元…

簡単に言うと、男装の麗人というやつだ。

「私は女の子としか付き合った事が無いんです」
「なんならこの中で一番女の子にモテるぞ」
「うーんわかりみ」

男性に恋をした事もされた事もないセレスさん。
当然王子との恋愛にも及び腰…というか、喧嘩腰?

「男性とは付き合えません、お引取りを」
「男では無く私と恋をしないか、と言っている」
「はぁ?どう見ても男ですが?大体さっき会ったばかりであんた頭おかしいんじゃないの」
「時間など関係ない、匂いで分かる。
 セレスこそ私の求めた番、運命の人だ」

…完全に平行線。


というわけで、後は若い二人に任せて…とばかりに、俺はミシェルとトモアキとクリスチーヌさんの4人で次の祠へ行く準備をするために街に出た。

「南の街まで、集落は無いんだっけ?」
「ああ、無人の休憩所や宿泊場所はあるがな」
「じゃあ食料が沢山いるって事か…」
「もう馬車ごと買ったらいいんじゃね」

トモアキのテキトー発言に、クリスチーヌさんがその手があったかと反応する。

「なるほど…マキタ様の仰る通りですね。
 馬車も御者も食料も一気に解決します」

というわけで、俺達は商業ギルドという所に来た。
南の街までの食料運搬から何から全部を引き受けてくれそうな行商人を紹介して貰う為だ。
俺は受付で言った。

「できるだけお安く、その代わり何でも浄化する特典を付けますから」
「分かりました。
 あの、紹介料を無料にする代わりに、このギルドの建物内を浄化して頂くというのは…」
「もちろんいいですよ」

というわけで、俺は建物内のそこら中でピッカピッカ…
でもそのおかげで、何組か格安で仕事を請け負ってくれる人を紹介して貰えることになった。

やったぜ。

少しお時間頂きたい、ということだったので、俺たちは商業ギルドから出て、そのまま昼飯に。
近所のお食事処に入って飯を食いつつ話をする。

「何台ほど雇えば足りるかなあ」
「問題はあの2人が付いてきそうだって事だな」
「同行なさるのならきっちり経費は請求させて頂きますが」
「大人しく王都で待っていてくれるのが一番だがな…」

4人が4人とも深くため息をつく。
とんでもない問題ごとを抱えてしまった…

「王都には連絡を入れております。
 きっと王宮の方で何か考えてくれるでしょう。
 …………多分」
「「多分か…」」

クリスチーヌさんの一言に、またも俺たちは揃ってため息をつくのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。

処理中です...