54 / 214
聖人様になる旅路
馬の上での個人面談 1
しおりを挟む
無事に内周11番目の祠で闇の力を封印して、俺たちは内周最後の祠がある村へ向かう。
馬車が無いので馬での移動だ。
俺は一人で馬には乗れないから、誰かの馬に一緒に乗せてもらわなきゃならない。
じゃあこの際だから、一人一人とちゃんと話がしたいなと思って、順番にみんなに乗せてもらう提案をしたのは良いんだけど…
「じゃあ、昼休憩までよろしくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
あみだくじで順番を決めた結果、1日目の午前中はハイドさんの馬に乗る事になった。
「おいミシェル、そんな顔すんな」
「トラさん、心の狭い男は嫌われるぞ」
「過ぎた独占欲は修正して頂きませんと」
「……」
ミシェルは完全にブスくれている。
…ったく、仕方ないなあ。
「ミシェル」
「…何ですかシゲル様」
「だから様付けも敬語もいらないってば…
こっち来て」
「…分かった」
ミシェルは単純だ。
だからこの作戦が効くと思う。
「ちょっと、頭、下げて」
「?」
「ちゅっ」
「!」
俺は思い切ってミシェルのおでこにキスする。
「機嫌直してよ、外周の祠で困るじゃんか」
「!!」
…どうやら作戦は成功らしい。
「じゃあ、出発しよ、みんな」
「あっ、ああ!」
トモアキは俺とミシェルを見て笑ってる。
俺もトモアキに笑ってみせる。
外周の祠はミシェルとやる。
俺はもう腹をくくったんだ!
あんなに好き好き愛してる、って言うのに襲って来ないミシェルを信じてみる。
キス一つにも同意を取ろうとしてくれるミシェルを信じてみる。
覚悟決めて、付き合ってみる。
最後までしてみて、駄目だったら…
その時は別れたらいい。
恋人は別れれば他人になれるから。
みんなにも、説明しようと思う。
俺がミシェルを信じることにした理由を。
***
出発して暫くして、ハイドさんが俺に言った。
「シゲル様、私と一緒で宜しかったのですか?」
「うん、ちょっと一人一人とお話ししたくて」
「何か問題でもあったのですか?」
「ううん、そういうんじゃないんだ」
やっぱりこういう事を人に言うの緊張する…!
俺は手汗をかきかきハイドさんに言う。
「俺、ミシェルと外周の祠やってみることにしたので…そのご報告っていうか」
「な、んと…!そうだったのですか!?」
自分の事みたいに喜ぶハイドさん。
友だちの恋が上手く行くと嬉しいのは、元の世界と一緒みたいだ。
俺はどうしてミシェルと付き合う事にしたのかを説明する。
「祠2つ、一緒にやって分かったんです。
ミシェルは俺の事…尊重、っていうのかな。
ちゃんと俺の気持ちを聞いてくれる、って。
自分がしたいからって、無理強いしたりしないって…分かったので」
俺の言葉はそこで止まる。
やっぱり自分の過去を簡単には話せない。
だけどその過去も、俺がミシェルを選ぶことへの布石になってるんじゃないか、って思う。
それなら、あの街に引っ越してから急に男に執着される事が増えたのも、理解できるような気がする。
あっちの神様とこっちの神様が繋がってるなら、何らかのお膳立てがあってもおかしくない…
それはもしかしたら、俺とトモアキをくっつける為だったかもしれないけど。
無言の俺にハイドさんは言う。
「それなら良かった…
これで私もマルコと心置きなく過ごせます」
「そうでしたか」
どうやら宿で随分気を使っていたらしいハイドさん。
マルコさんと2人でミシェルを宥めたり応援したりアドバイスをしたりしていたのだそうで…
「それでマルコさんがあの時、ミシェルをやたら推してきたんですね」
「ええ、団長を置いて2人で逢引することもできず、こう…悶々としたものが溜まると言うか…」
「んっ?」
あいびき?
ハイドさんとマルコさんが?
俺が不思議に思っていると、ハイドさんが言った。
「実は私とマルコは付き合っておりまして、もう10年になりますもので…。
いい機会ですし、浄化の巡礼が終わったら結婚しようかと約束しているんですよ」
「へえー!何か素敵ですね」
なんだ、ハイドさんとマルコさんってそういう関係だったんだ!
知らなかったなあ…
「それなら俺も、祠の事頑張らないとな…」
「ええ、私達も出来る限りバックアップします。
男同士の睦み合いについても、悩みや疑問があれば気楽にご相談ください」
「えっ、あ、うん」
そ、そっか。
ちゃんとした知識が無いと怪我したりするって聞く…
「団長にもきちんと説明はしておりますが、何分お互い初めてですと色々大変ですから…」
「えっ初めて?」
「はい、団長には恋人がいたことが無いので」
そういえば、セレスさんやリラさんがそんな事言ってたなあ。
最初可愛いですねの連発とかボディタッチとか、距離の詰め方が変だったもんな…
「あんなに美男子なんだから、モテそうなもんなのになあ」
「いやあ、告白した途端に100年の恋も冷めると騎士団じゃもっぱらの噂ですよ」
「それってどんな!?」
恐ろしっ!
どういう断り方してきたのよ!?
馬車が無いので馬での移動だ。
俺は一人で馬には乗れないから、誰かの馬に一緒に乗せてもらわなきゃならない。
じゃあこの際だから、一人一人とちゃんと話がしたいなと思って、順番にみんなに乗せてもらう提案をしたのは良いんだけど…
「じゃあ、昼休憩までよろしくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
あみだくじで順番を決めた結果、1日目の午前中はハイドさんの馬に乗る事になった。
「おいミシェル、そんな顔すんな」
「トラさん、心の狭い男は嫌われるぞ」
「過ぎた独占欲は修正して頂きませんと」
「……」
ミシェルは完全にブスくれている。
…ったく、仕方ないなあ。
「ミシェル」
「…何ですかシゲル様」
「だから様付けも敬語もいらないってば…
こっち来て」
「…分かった」
ミシェルは単純だ。
だからこの作戦が効くと思う。
「ちょっと、頭、下げて」
「?」
「ちゅっ」
「!」
俺は思い切ってミシェルのおでこにキスする。
「機嫌直してよ、外周の祠で困るじゃんか」
「!!」
…どうやら作戦は成功らしい。
「じゃあ、出発しよ、みんな」
「あっ、ああ!」
トモアキは俺とミシェルを見て笑ってる。
俺もトモアキに笑ってみせる。
外周の祠はミシェルとやる。
俺はもう腹をくくったんだ!
あんなに好き好き愛してる、って言うのに襲って来ないミシェルを信じてみる。
キス一つにも同意を取ろうとしてくれるミシェルを信じてみる。
覚悟決めて、付き合ってみる。
最後までしてみて、駄目だったら…
その時は別れたらいい。
恋人は別れれば他人になれるから。
みんなにも、説明しようと思う。
俺がミシェルを信じることにした理由を。
***
出発して暫くして、ハイドさんが俺に言った。
「シゲル様、私と一緒で宜しかったのですか?」
「うん、ちょっと一人一人とお話ししたくて」
「何か問題でもあったのですか?」
「ううん、そういうんじゃないんだ」
やっぱりこういう事を人に言うの緊張する…!
俺は手汗をかきかきハイドさんに言う。
「俺、ミシェルと外周の祠やってみることにしたので…そのご報告っていうか」
「な、んと…!そうだったのですか!?」
自分の事みたいに喜ぶハイドさん。
友だちの恋が上手く行くと嬉しいのは、元の世界と一緒みたいだ。
俺はどうしてミシェルと付き合う事にしたのかを説明する。
「祠2つ、一緒にやって分かったんです。
ミシェルは俺の事…尊重、っていうのかな。
ちゃんと俺の気持ちを聞いてくれる、って。
自分がしたいからって、無理強いしたりしないって…分かったので」
俺の言葉はそこで止まる。
やっぱり自分の過去を簡単には話せない。
だけどその過去も、俺がミシェルを選ぶことへの布石になってるんじゃないか、って思う。
それなら、あの街に引っ越してから急に男に執着される事が増えたのも、理解できるような気がする。
あっちの神様とこっちの神様が繋がってるなら、何らかのお膳立てがあってもおかしくない…
それはもしかしたら、俺とトモアキをくっつける為だったかもしれないけど。
無言の俺にハイドさんは言う。
「それなら良かった…
これで私もマルコと心置きなく過ごせます」
「そうでしたか」
どうやら宿で随分気を使っていたらしいハイドさん。
マルコさんと2人でミシェルを宥めたり応援したりアドバイスをしたりしていたのだそうで…
「それでマルコさんがあの時、ミシェルをやたら推してきたんですね」
「ええ、団長を置いて2人で逢引することもできず、こう…悶々としたものが溜まると言うか…」
「んっ?」
あいびき?
ハイドさんとマルコさんが?
俺が不思議に思っていると、ハイドさんが言った。
「実は私とマルコは付き合っておりまして、もう10年になりますもので…。
いい機会ですし、浄化の巡礼が終わったら結婚しようかと約束しているんですよ」
「へえー!何か素敵ですね」
なんだ、ハイドさんとマルコさんってそういう関係だったんだ!
知らなかったなあ…
「それなら俺も、祠の事頑張らないとな…」
「ええ、私達も出来る限りバックアップします。
男同士の睦み合いについても、悩みや疑問があれば気楽にご相談ください」
「えっ、あ、うん」
そ、そっか。
ちゃんとした知識が無いと怪我したりするって聞く…
「団長にもきちんと説明はしておりますが、何分お互い初めてですと色々大変ですから…」
「えっ初めて?」
「はい、団長には恋人がいたことが無いので」
そういえば、セレスさんやリラさんがそんな事言ってたなあ。
最初可愛いですねの連発とかボディタッチとか、距離の詰め方が変だったもんな…
「あんなに美男子なんだから、モテそうなもんなのになあ」
「いやあ、告白した途端に100年の恋も冷めると騎士団じゃもっぱらの噂ですよ」
「それってどんな!?」
恐ろしっ!
どういう断り方してきたのよ!?
10
お気に入りに追加
401
あなたにおすすめの小説

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
え?聖女って、女性がなるものだよね? ~期間限定異世界救済プロジェクト~
月夜野レオン
ファンタジー
俺、高校2年空手部のエース。ベランダでスイカにかぶりついてたのに、突然目の前にギリシャ風の衣装の男性が三人。
は?俺が聖女?なんすかそれ。どうせなら勇者とかで召喚してくれよ。
せめて聖女じゃなくて聖者にしようよ。え?これは譲れないって?なんでさ!?
とにもかくにもこの帝国を救わないとなんだが、スキルが特殊過ぎて目が点。
期限付きで異世界救済を始めます。行けんの?これ。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる