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聖人様になる旅路

内周一発目の祠 2

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祠の扉の前で、俺は言った。

「トモ…そろそろ降ろせよ」
「分かった分かった、怒るなよシゲ」

ついにトモアキにまでお姫様抱っこで運ばれてしまった…

つらい。

だが気を取り直そう。
まずは「封印の儀式」の最終確認だ。

「トモ、内周最初の祠は…たしか、
 ①目と目を合わせる
 ②その状態で3ターン以上の会話
 ③2人ともが楽しめる事を5分間
 ④2人で息を合わせられる事を5分間
 …だよな?」
「おう」
「つまり、目を合わせて、普通に会話して、あっちむいてホイをやって、それからラジオ体操…
 で、いいんだよな?」
「おう…もし上手くいかなかったら、そん時は……
 また考えよう」

5人の騎士は祠の入口でお留守番だ。

「皆さん、行ってきます」
「お願い致します、聖人様、マキタ様」

俺とトモアキは中心部の祠でやったみたいに、祠の扉を2人で開け、2人で同時に中へ入った。


・・・・・・


祠の中は何だか「もやぁぁぁん」とした空気だ。
中央部の祠は「もやぁん」程度だったので、やはりこっちの方が闇の力が濃いと分かる。

「…トモ」
「なんだい?シゲ」

俺たちはお互い目を合わせ、話す。

「トモってさあ、トラさんの事、嫌いなん?」
「ううん、警戒してるだけ」

「トラさんの何を警戒することがあるん?」
「あいつがシゲを不幸にしないか警戒してる」

「トラさんはそんな…あいつらとは違うだろ」
「あいつらって誰よ」
「あの…俺を殴ってた小学校の担任とか、急に裏切ったとか言って監禁しようとした中学校の担任とか」
「ああ…あいつらか。
 シゲの担任って、まともなの居ないな」
「んなことねーよ!6年のときの担任の先生は良い人だったよ」
「ああ、あのマルつけのコメントが丁寧な、ふくよか胸の先生か…他には?」
「あー…っと、うーん…うーん」

親父が消えて引っ越してから何故か、俺は変な教師に絡まれることが増えた。
特に男の先生だ。
女の先生は…まあ、小6の時以外、担任は男ばっかりだから、何とも言えないけどな。

「シゲが優しいのがいけないんだろ」
「何でそういう事を言うかね」
「でも。ああいうのからすれば、それが思わせぶりって事なんじゃねーの」
「うーん…分からぬ」

思わせぶりな事をした覚えは一度もない。
ただ、大変そうだから手伝ったり、困ってそうだから声をかけただけだ。
そんなの大体の人がすると思うんだけど。

「そういう時には『何か手伝いましょうか』って言うだろ、普通…。見ず知らずの他人だったら躊躇するけど、知ってる人なんだからさ」
「そうやって、妹ちゃんの病院の看護師も誑かしてきたんだな」
「別に誑かしてはいないし、看護師さんだけじゃなかったけどな」

女の人で絡んで来たのは、殆ど妹関係の人だ。
やっぱ介護って疲れるし、親と子どものダブル介護って人もいるし。
それに、治る見込みのない子どもを看るのって精神的にな…しんどいもんがあるよ。

けど、女の人はトモアキが全員変えちゃったから。

「化粧と衣装を変えただけで、あんなに笑えるようになるんだから本当にすごいよな…」
「だろ?感謝しろよシゲ」
「そうだよな…。
 トモ、今までありがとう」
「それ死亡フラグに聞こえるからヤメレ」

ははは…とお互い笑い合う。
そして儀式③の開始だ。

「んじゃ、いくぞ!」
「「最初はグー!!」」


***


……たかたんたん、ちゃららららん

「…すー」
「はぁぁぁ…」

深呼吸を4回して、俺たちは地面に座り込む。

儀式④のラジオ体操はこれにて終了…
後はこれで効果があるかどうか。

「…後は、この『もやぁぁぁん』が無くなるまで待つだけか」
「無くなってくれ…頼む」

もしラジオ体操が駄目なら、アポーにペン刺すしか道が無い。
あれなら何とか踊れる…ただ、時間内ずっとソレを踊るシュールさを我慢できるかどうかだ。
最終的には1時間ぶっ続けで…

なんせ内周の祠は12ヶ所もあるからな。

「最悪、強引にここを光の力で浄化すれば…」
「それで何とかなるなら、こんな儀式要らないんじゃね」
「確かになあ……あれ?」

そうやってダラダラしているうちに「もやぁぁぁん」としたものが少しずつ晴れて来た。
何だろう…エアコンが効き始めた感じっていうか。

「おい……これ、いけたんじゃね……?」
「やったぜ……!」

どうやら「息を合わせた」行為=ラジオ体操、は正解(?)だったらしい。
祠の空気はどんどん爽やかになっていく。
これで内周の祠はクリア確定だ…!
俺たちはホッとして床に寝ころんだ。

「けど、ラジオ体操も回数増えるときついかな」
「まあ体操だと思えば繰り返しできるから…有酸素運動としてはちょうど良いし」
「マジか…やっぱ俺体力付けないとまずいな」
「シゲはとりあえず食うとこからだな~」

とはいえ、出されたものは全部食ってるし…これ以上食うとなると、なあ。

「節約したいし…余計な買い物はなぁ」
「ああ、娼館代?マルちゃんかハイドに貸してくれって言ってみたらいいんじゃね」
「やだよ、仲間内で借金とかしたくねぇもん」

とか言って、金額の相場も分からないまま闇雲に節約してるけど…



何とか、なる…よな?

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