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聖人様になる練習
シゲとトモの過去 2 ~トモアキ視点~
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「あのクソ野郎、マジ死ね!すぐ死ね!ドクズが!生きるなカス!!
暴行じゃなくて傷害だろうが!警察も教育委員会も仕事しくされやアホンダラ!!」
母ちゃんはめちゃくちゃ怒っていた。
暴力を受けていたのはやっぱりシゲルで、母ちゃんが見たとき、シゲルの背中にはたくさんの痣と、煙草を押し付けた跡もあったらしい。
うちの母ちゃんがシゲルを助けたんだ。
だからシゲルの母ちゃんがうちにお礼にやってきた。
シゲルんちは母子家庭だった。
妹に障がいがあって、母親はそれにかかりきり。
シゲルの服が小さくなっても気が付かないくらい、仕事と病院で忙しかったみたいだった。
「お恥ずかしい話ですが、家の事も滋にまかせきりになってしまって、お金を渡しているから、それで何とかしているだろうと…」
「唐谷さん、あなたが忙しいのは分かる。
滋君がしっかりした子なのも分かる。
でも、子どもだけで服を買いには行けないわ。
あまりに放ったらかしにしすぎよ!
もう少し滋君の事も見てあげないと…」
母ちゃんはシゲルの母ちゃんに説教を始めた。
すると、シゲルの母ちゃんのほうでなくシゲルが泣き始めてしまった。
「おばさんっ、母さんは悪くないんだ!僕がっ、小学生だから、だから何も出来なくて…」
小学生な事はシゲルの責任じゃない。
なのに、シゲルは自分が悪いんだと言う。
「僕が…僕が、いなかったら、母さんは、しょうがいじをかかえても、しごとと、こそだてを、りょうりつできてるえらい人だったのに、僕のせいで、とうさんもいなくなって、だから、ほんとは僕なんか、いないほうが…」
「滋っ…!」
シゲルの言葉に、シゲルの母ちゃんも泣き始めて、俺の母ちゃんも泣き始めて、俺も悲しくて泣いて、その場はすごいカオスだった。
最初に泣いたシゲルが、慌てて俺らをなだめた。
変な光景だった。
その後の話で知るのだが、妹の看病を母親に丸投げした父親は、いつの間にかシゲルの面倒を見ることも放棄して逃げたんだそうだ。
世の中クソだらけだな…と俺は思った。
まあそれはどうでもいい。
そんときから俺とシゲルの付き合いが始まった。
シゲルは俺が美容とかファッションに興味を持ってるのを普通の事として受け入れてくれた。
学校で「オカマの彼氏」とか言われて虐めかけられたらしいんだけど、
「智明君は美容室の子なんだから、メイクとかに興味あるの当たり前でしょ。
そういう人が有名なメイクさんとかになって、今テレビに出まくってるんじゃん…馬鹿じゃないの」
と言ってくれたおかげで、俺が虐められるのをニヤニヤ見てた奴や虐めてきた奴らまでが「今仲良くしておけば将来芸能人とお近づきになれるかも」みたいな感じで、うちにお手紙を持ってくるようになった。
いっとき俺のあだ名になってた美容家だって、すごい豪邸に住んでるもんな。
うちだってそこそこ店はデカイもん…
店は、な。
そんな事もあって、俺はマジで人間は9割がクソだと思うようになった。
残りの1割は、シゲと俺の家族な。
そんなこんなで、虐めはきれいさっぱり無くなって、俺は学校にまた行けるようになった。
シゲのおかげだ。
だから、俺はシゲルに報いたいと思った。
だから、シゲルがみんなに言った事を本当にしてやろうって色々頑張ってきた。
メイクやファッションの勉強もだけど、テレビに出られる見た目になるような努力もした。
俺は家族で1番、ボディメイクに詳しくなった。
なのに、中学校になると、急にシゲを良く思わないやつが出てきた。
クソどもが色気付いてきやがったからだ。
そのクソどもは、シゲは俺が有名人になったらタカるつもりだ、とか、隠れホモで俺のことを性的に狙ってる、とかそんなことを言ってきては俺とシゲを引き離そうと…いうよりは、シゲと入れ替わりたいみたいだった。
マジ自己紹介乙ってやつ?
クソはクソ同士でサカッてろっての。
マジでクソ。
人間は9割がクソ。
……シゲの母ちゃんだって、俺は信じてない。
シゲの事、手のかからない良い子だからって、金だけ与えて放置してたんだから。
うちの母ちゃんに言われて反省したみたいだけど。
服も靴もちゃんとなったし。
だけどそれだけだ。
シゲがやる家事は減らなかったし、そのうち妹の介護まで増えて。
中学になったら家計のやりくりもして、すげえ節約して自分の学費を捻出して妹の将来に向けた貯金もしてた。
そんななのに、シゲは母親にいつも感謝してた。
金稼いできてくれるだけで充分だろ…なんて、少しヒネた言い方で。
そんなある日、シゲは親の誕生日にプチプラの化粧品をプレゼントしたいんだって俺に相談に来た。
頼られて嬉しかった俺は、めちゃくちゃ張り切ってプレゼントを選んだ。
シゲは俺にありがとうって言った。
俺こそシゲにありがとうだって思った。
シゲルは本当に優しい。
あの神様が目をつけるのも分かる。
そんなシゲの周りには危ない奴が集まりやすい。
優しくしてくれたシゲを…いいたかないけど、聖女みたいに考えるやつもいる。
そういう奴が、シゲが理想の聖女様でなくなった瞬間に豹変して襲い掛かったりするんだ…
だから俺が守らないといけない。
多分その為に俺はシゲと一緒にここへ来た。
シゲをほっといたら、倒れるまで頑張ってしまう。
だから、俺が気を配ってやんないと。
シゲは、たった一人の親友だから。
失いたくない友だちだから。
暴行じゃなくて傷害だろうが!警察も教育委員会も仕事しくされやアホンダラ!!」
母ちゃんはめちゃくちゃ怒っていた。
暴力を受けていたのはやっぱりシゲルで、母ちゃんが見たとき、シゲルの背中にはたくさんの痣と、煙草を押し付けた跡もあったらしい。
うちの母ちゃんがシゲルを助けたんだ。
だからシゲルの母ちゃんがうちにお礼にやってきた。
シゲルんちは母子家庭だった。
妹に障がいがあって、母親はそれにかかりきり。
シゲルの服が小さくなっても気が付かないくらい、仕事と病院で忙しかったみたいだった。
「お恥ずかしい話ですが、家の事も滋にまかせきりになってしまって、お金を渡しているから、それで何とかしているだろうと…」
「唐谷さん、あなたが忙しいのは分かる。
滋君がしっかりした子なのも分かる。
でも、子どもだけで服を買いには行けないわ。
あまりに放ったらかしにしすぎよ!
もう少し滋君の事も見てあげないと…」
母ちゃんはシゲルの母ちゃんに説教を始めた。
すると、シゲルの母ちゃんのほうでなくシゲルが泣き始めてしまった。
「おばさんっ、母さんは悪くないんだ!僕がっ、小学生だから、だから何も出来なくて…」
小学生な事はシゲルの責任じゃない。
なのに、シゲルは自分が悪いんだと言う。
「僕が…僕が、いなかったら、母さんは、しょうがいじをかかえても、しごとと、こそだてを、りょうりつできてるえらい人だったのに、僕のせいで、とうさんもいなくなって、だから、ほんとは僕なんか、いないほうが…」
「滋っ…!」
シゲルの言葉に、シゲルの母ちゃんも泣き始めて、俺の母ちゃんも泣き始めて、俺も悲しくて泣いて、その場はすごいカオスだった。
最初に泣いたシゲルが、慌てて俺らをなだめた。
変な光景だった。
その後の話で知るのだが、妹の看病を母親に丸投げした父親は、いつの間にかシゲルの面倒を見ることも放棄して逃げたんだそうだ。
世の中クソだらけだな…と俺は思った。
まあそれはどうでもいい。
そんときから俺とシゲルの付き合いが始まった。
シゲルは俺が美容とかファッションに興味を持ってるのを普通の事として受け入れてくれた。
学校で「オカマの彼氏」とか言われて虐めかけられたらしいんだけど、
「智明君は美容室の子なんだから、メイクとかに興味あるの当たり前でしょ。
そういう人が有名なメイクさんとかになって、今テレビに出まくってるんじゃん…馬鹿じゃないの」
と言ってくれたおかげで、俺が虐められるのをニヤニヤ見てた奴や虐めてきた奴らまでが「今仲良くしておけば将来芸能人とお近づきになれるかも」みたいな感じで、うちにお手紙を持ってくるようになった。
いっとき俺のあだ名になってた美容家だって、すごい豪邸に住んでるもんな。
うちだってそこそこ店はデカイもん…
店は、な。
そんな事もあって、俺はマジで人間は9割がクソだと思うようになった。
残りの1割は、シゲと俺の家族な。
そんなこんなで、虐めはきれいさっぱり無くなって、俺は学校にまた行けるようになった。
シゲのおかげだ。
だから、俺はシゲルに報いたいと思った。
だから、シゲルがみんなに言った事を本当にしてやろうって色々頑張ってきた。
メイクやファッションの勉強もだけど、テレビに出られる見た目になるような努力もした。
俺は家族で1番、ボディメイクに詳しくなった。
なのに、中学校になると、急にシゲを良く思わないやつが出てきた。
クソどもが色気付いてきやがったからだ。
そのクソどもは、シゲは俺が有名人になったらタカるつもりだ、とか、隠れホモで俺のことを性的に狙ってる、とかそんなことを言ってきては俺とシゲを引き離そうと…いうよりは、シゲと入れ替わりたいみたいだった。
マジ自己紹介乙ってやつ?
クソはクソ同士でサカッてろっての。
マジでクソ。
人間は9割がクソ。
……シゲの母ちゃんだって、俺は信じてない。
シゲの事、手のかからない良い子だからって、金だけ与えて放置してたんだから。
うちの母ちゃんに言われて反省したみたいだけど。
服も靴もちゃんとなったし。
だけどそれだけだ。
シゲがやる家事は減らなかったし、そのうち妹の介護まで増えて。
中学になったら家計のやりくりもして、すげえ節約して自分の学費を捻出して妹の将来に向けた貯金もしてた。
そんななのに、シゲは母親にいつも感謝してた。
金稼いできてくれるだけで充分だろ…なんて、少しヒネた言い方で。
そんなある日、シゲは親の誕生日にプチプラの化粧品をプレゼントしたいんだって俺に相談に来た。
頼られて嬉しかった俺は、めちゃくちゃ張り切ってプレゼントを選んだ。
シゲは俺にありがとうって言った。
俺こそシゲにありがとうだって思った。
シゲルは本当に優しい。
あの神様が目をつけるのも分かる。
そんなシゲの周りには危ない奴が集まりやすい。
優しくしてくれたシゲを…いいたかないけど、聖女みたいに考えるやつもいる。
そういう奴が、シゲが理想の聖女様でなくなった瞬間に豹変して襲い掛かったりするんだ…
だから俺が守らないといけない。
多分その為に俺はシゲと一緒にここへ来た。
シゲをほっといたら、倒れるまで頑張ってしまう。
だから、俺が気を配ってやんないと。
シゲは、たった一人の親友だから。
失いたくない友だちだから。
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