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聖人様になる練習
段取り無視の弊害
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異世界の練兵場に取り残された俺たち。
しばらく待ってみたけど誰も来る感じがない…
うーん困ったね。
「トライデントさんどこ行ったんだろ」
「まさかトラさんまで居なくなるとは」
トモアキはトライデントさんをトラさんと呼ぶことにしたらしい。
確かにちょっと長いもんな…
俺も心の中でそう呼ばしてもらおう。
「しゃあねえ、こうなったら手あたり次第だ。
近いゲートから順番に外をうかがってみよう。
景色は覚えてるし、建物が見えれば帰れるだろ」
「さすがシゲ、頼りになるぜ」
こんなことぐらいで褒められても困るけど、他にどうしようもない。
まずは近くのゲートから…
「ここは鳥っぽいオブジェが付いてるな…」
「じゃあトリゲートだな」
「えっと、外の様子は…っと、違うな」
じゃあ右隣。
「ここは犬っぽいオブジェが付いてるな…」
「じゃあワンゲートか」
「…うーん、ここも違う」
その右隣…
「ここは…ウサギっぽいやつだな」
「じゃあUSAゲートだな」
「なぜ急にアメリカ…っと、やばっ」
「どうしたシゲ」
USAゲートの外、わりとすぐそこにトラさんがいて、色違いの服の人たちと何やら話をしていた。
俺は反射的に隠れた。
「…トライデントさんだ」
「なんだとあの野郎」
「馬鹿、隠れろって!」
「何でだよ」
「だって陰口叩かれてるかもしんないだろ?
我儘だ、とか、あんま大した事無い、とか、地味だとかガリチビだとか…
聞いちゃったらショックじゃん」
「えー、そんなの言ってるか分かんないじゃん」
「でも、そうだったら…やば、こっち来る!」
俺は反射的にトモアキの後ろに隠れた。
トモアキは180㎝の美ボディだ、165㎝の貧相な俺はきっちり隠れてしまうはず…
「…カラタニ様?」
だったのに、騎士の目は誤魔化せなかったらしい。
簡単に見つかってしまった。
「は、はは、急にいなくなるから、その」
俺はトモアキの後ろから顔を出して言い訳をした。
するとトラさんは言った。
「すみません、準備に時間が掛かっておりまして」
「準備?」
何のこっちゃ、と俺が聞くと、トラさんとトラさんと話してた人たちが一斉に跪いた。
「ひぇっ」
トラさんはキリリとして言った。
「どうかカラタニ様…と、マキタ様。
我らに光をお恵み下さいませんか」
「は?めぐむ?」
「我々を浄化しては頂けないかと…」
「えっ、人を!?」
「はい、実は…」
トラさんは俺に騎士団の窮状を訴え始めた…。
***
トラさんの話を簡単に言うと、
「騎士団は魔物と戦いすぎて闇の力が蓄積されて大変な事になっている」
という事だった。
「先ほど、カラタニ様の光の力を偶然に受けた者が『明らかに体調が良くなった』と…
間違いなく私もそう感じましたので」
「あ、そっか、トライデントさん近くにいたんだもんね」
「その報告でみんな居なくなったんだな」
「左様でございます、マキタ様」
なので、練兵場に全員を集合させるから、一度浄化を掛けて欲しい…とのこと。
「寝込んでいる者も、担いで練兵場に集めます。
ですから…」
「いやいやいや、そんなん俺が行けば済む事じゃないですか!ついでで建物も浄化できるかもだし」
「まことですか!?」
「まことですよ」
そんな病人に鞭打つみたいな事、やめたほうが良いに決まってるじゃん!!
健康なやつがそっちに行くのが普通じゃね?
「じゃあ、案内して頂けますか?」
「はい!では白兎騎士団からお願い致します!」
白い騎士っぽい制服を着た女の人が先頭に立って、俺たちはそれについて歩く。
「白兎…ふむ、チームイナバだな」
「そこは素直にハクトで良くね」
しょうもない話をしながら歩く俺とトモアキ。
そこへ割り込む様に、トラさんが説明する。
「この国には5つの騎士団がございまして、それぞれ白兎・赤鷹・青狼・緑風・黄獅子と名前がついております」
「はあ、それで服の色がバラバラなんですね」
「左様でございます、カラタニ様」
つまり、白の制服は白兎、赤の制服は赤鷹…
トラさんは青い制服だから青狼の人か。
「ってことは、ゲートのオブジェは、それぞれの騎士団の名前を模したものになってる?」
「左様ですカラタニ様。
白兎の宿舎に繋がる門にはウサギが、赤鷹の宿舎に繋がる門には鷹が…といった具合に、文字の読めぬ者たちにも分かりやすく出来ております。
何も飾りがない門は王城へ繋がっております」
「おお…なるほど」
どうやらこの世界は識字率が低いらしく、読み書きができるのはいわゆる知識層だけらしい。
これまた大変な世界に来てしまったもんだ。
今までやってきた聖人や聖女は何もしてこなかったのか…それとも出来なかったのか。
「浄化の巡礼が終わったら、寺子屋でも作って識字率アップに励むか…」
他にする事が見当たらなかったらそうしよう。
まずは目の前の人から何とかしないとな!
しばらく待ってみたけど誰も来る感じがない…
うーん困ったね。
「トライデントさんどこ行ったんだろ」
「まさかトラさんまで居なくなるとは」
トモアキはトライデントさんをトラさんと呼ぶことにしたらしい。
確かにちょっと長いもんな…
俺も心の中でそう呼ばしてもらおう。
「しゃあねえ、こうなったら手あたり次第だ。
近いゲートから順番に外をうかがってみよう。
景色は覚えてるし、建物が見えれば帰れるだろ」
「さすがシゲ、頼りになるぜ」
こんなことぐらいで褒められても困るけど、他にどうしようもない。
まずは近くのゲートから…
「ここは鳥っぽいオブジェが付いてるな…」
「じゃあトリゲートだな」
「えっと、外の様子は…っと、違うな」
じゃあ右隣。
「ここは犬っぽいオブジェが付いてるな…」
「じゃあワンゲートか」
「…うーん、ここも違う」
その右隣…
「ここは…ウサギっぽいやつだな」
「じゃあUSAゲートだな」
「なぜ急にアメリカ…っと、やばっ」
「どうしたシゲ」
USAゲートの外、わりとすぐそこにトラさんがいて、色違いの服の人たちと何やら話をしていた。
俺は反射的に隠れた。
「…トライデントさんだ」
「なんだとあの野郎」
「馬鹿、隠れろって!」
「何でだよ」
「だって陰口叩かれてるかもしんないだろ?
我儘だ、とか、あんま大した事無い、とか、地味だとかガリチビだとか…
聞いちゃったらショックじゃん」
「えー、そんなの言ってるか分かんないじゃん」
「でも、そうだったら…やば、こっち来る!」
俺は反射的にトモアキの後ろに隠れた。
トモアキは180㎝の美ボディだ、165㎝の貧相な俺はきっちり隠れてしまうはず…
「…カラタニ様?」
だったのに、騎士の目は誤魔化せなかったらしい。
簡単に見つかってしまった。
「は、はは、急にいなくなるから、その」
俺はトモアキの後ろから顔を出して言い訳をした。
するとトラさんは言った。
「すみません、準備に時間が掛かっておりまして」
「準備?」
何のこっちゃ、と俺が聞くと、トラさんとトラさんと話してた人たちが一斉に跪いた。
「ひぇっ」
トラさんはキリリとして言った。
「どうかカラタニ様…と、マキタ様。
我らに光をお恵み下さいませんか」
「は?めぐむ?」
「我々を浄化しては頂けないかと…」
「えっ、人を!?」
「はい、実は…」
トラさんは俺に騎士団の窮状を訴え始めた…。
***
トラさんの話を簡単に言うと、
「騎士団は魔物と戦いすぎて闇の力が蓄積されて大変な事になっている」
という事だった。
「先ほど、カラタニ様の光の力を偶然に受けた者が『明らかに体調が良くなった』と…
間違いなく私もそう感じましたので」
「あ、そっか、トライデントさん近くにいたんだもんね」
「その報告でみんな居なくなったんだな」
「左様でございます、マキタ様」
なので、練兵場に全員を集合させるから、一度浄化を掛けて欲しい…とのこと。
「寝込んでいる者も、担いで練兵場に集めます。
ですから…」
「いやいやいや、そんなん俺が行けば済む事じゃないですか!ついでで建物も浄化できるかもだし」
「まことですか!?」
「まことですよ」
そんな病人に鞭打つみたいな事、やめたほうが良いに決まってるじゃん!!
健康なやつがそっちに行くのが普通じゃね?
「じゃあ、案内して頂けますか?」
「はい!では白兎騎士団からお願い致します!」
白い騎士っぽい制服を着た女の人が先頭に立って、俺たちはそれについて歩く。
「白兎…ふむ、チームイナバだな」
「そこは素直にハクトで良くね」
しょうもない話をしながら歩く俺とトモアキ。
そこへ割り込む様に、トラさんが説明する。
「この国には5つの騎士団がございまして、それぞれ白兎・赤鷹・青狼・緑風・黄獅子と名前がついております」
「はあ、それで服の色がバラバラなんですね」
「左様でございます、カラタニ様」
つまり、白の制服は白兎、赤の制服は赤鷹…
トラさんは青い制服だから青狼の人か。
「ってことは、ゲートのオブジェは、それぞれの騎士団の名前を模したものになってる?」
「左様ですカラタニ様。
白兎の宿舎に繋がる門にはウサギが、赤鷹の宿舎に繋がる門には鷹が…といった具合に、文字の読めぬ者たちにも分かりやすく出来ております。
何も飾りがない門は王城へ繋がっております」
「おお…なるほど」
どうやらこの世界は識字率が低いらしく、読み書きができるのはいわゆる知識層だけらしい。
これまた大変な世界に来てしまったもんだ。
今までやってきた聖人や聖女は何もしてこなかったのか…それとも出来なかったのか。
「浄化の巡礼が終わったら、寺子屋でも作って識字率アップに励むか…」
他にする事が見当たらなかったらそうしよう。
まずは目の前の人から何とかしないとな!
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