【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇

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受視点

【最終話】それから

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同居するしないで揉めてから3ヶ月。

政景さんちにほぼ毎日お泊りし続けた結果、ついに俺の荷物は全て政景さんの家に持ち込まれてしまった。

監禁部屋にする予定だった部屋の壁一面にがっつり本棚が整備され、本も漫画もゲームも綺麗にジャンル分けまでされて並べられ、服は共用のウォークインクローゼットの中へ収められ、不用品は処分されて、小綺麗な趣味部屋が出来上がった。

来客用ベッドはそのままその部屋に置かれる事になり、時々ここでセックスすることもあったりして…
狭いから寝る時は政景さんのでかいベッドで一緒に寝ているけど。

そうして、いつの間にか環境が整ってしまい…
俺は政景さんと正式に同居することになった。

今日から帰りも同じ場所。
記念すべき日だからと、定時ちょっと過ぎに政景さんがうちの課まで迎えに来た。

「どうも、安田君いるかい?」
「っすー、やすー、彼ピッピ北ー」
「彼ッピッピッピーがキター」
「浮かれ気分でピを増やすでねえ」
「でもピが多い方がエライんだろ」
「えっ少ない方がエライんじゃね?な、ヤス」
「あーっと…地域と年代に寄るみたいですけど、彼ピ=彼氏、彼ピッピ=彼氏未満…」

と、そこまで答えて、俺はとんでもないことに気付いた。
なんで、いつバレたんだ、俺と政景さんの関係…!

俺は思わず言葉に出した。

「なんでみんな、知ってるんですか!?」
「……えっ」

一瞬の沈黙。
そして…主任が一言。

「…マジなん?」

そしてまた沈黙。
真っ赤になる俺…そして誰かが一言。

「妄想からでた真実マコト…!」
「妄想!?」
「給湯室で3腐女子が盛り上がっておられたのを偶然小耳に挟んだでござる」
「/(^o^)\ナンテコッタイ」

完全に墓穴を掘った俺。
笑う4人。
苦笑いする長船課長…膝から崩れ落ちる俺。

「おっさん未満ズラブ」
「転生してないけどBLのモブになった件」
「昨日もカロ○ーメイト食ったモブ」
「大モブ」
「元のタイトルがもはや分からぬ」
「異世界モブさん」
「もうBL関係あれへんがな」

…みんなは一通り大喜利をした後、気が済んだらしく帰る準備を始めた。
未だショックの癒えない俺に、課長が言った。

「言い方アレやけど、安田が今までと何も変われへんのやったら、別にゲイでもバイでも関係あれへんねん」
「…はあ」
「あんまヨソで言わんほうがええのは確かやけどな!
 ただ、うちの課はこんなもんやわ。
 気の利いた事言うたれんですまんな」
「いや、充分です…有難うございます」

他人の事には基本的に不干渉なうちの課。
俺だけ弁当でも誰も何も言わないのと同じ事だそうだ…性癖と昼飯が同等というのも恐ろしいが。

「24案件にならなければどうという事は無い」
「24?何だいそれは」
「ツーフォー、つまり通報ですな」
「ああ…なるほど」
「頼みますよ、長船課長」
「なぜ僕に?」
「やべぇ匂いがプンプンするからっすね」
「ゲロ以下じゃないだけマシやけどな」
「さりげなジョ○ョ」
「やっぱ一部が最強」
「至高は二部に決まっていますな」
「四部だろ四部」
「だが断る」

どうやら俺以外の全員が長船課長に何かを感じ取っていた模様…
なんてこったい。

「知らぬは俺ばかりなり…」
「そりゃお前だけ殺気向けられてないから」
「ガチオタ絶許勢なんかなと思ってたら、まさかの…だったなんて」
「愛だったら仕方ないっすね」
「愛ゆえに!」
「人は苦しまねばならぬ!」
「愛ゆえに!」

またもワイワイ盛り上がる皆。
どうやら一通りサ○ザーをやるらしい。
そして元ネタを知らない後輩君がノリノリでついていけるインターネッツのごうの深さ…。

長船課長はイライラしながら言った。

「もう良いかい?帰るよ安田君」
「あっ、はい!」

俺は課長の後ろを追いかけて会社を出る。
近くの駐車場まで行くと、課長の車がそこにある。

「まったく、早く帰りたかったのに…」
「すみません、課長」

車に乗り込んで、キスをする。
誰も見ていない場所で、俺は課長の呼び方を変える。

「今日から宜しくお願いします、政景さん」
「こちらこそ宜しくね、陽向君」

エンジンがかかり、車が動き出す…

今日から二人で暮らす場所へと。




<おしまい>
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