【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇

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妹視点

うちの兄が変態だった件 1

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「…高田君、私の兄のことなんだけど」
「何、改まって…?」

真剣交際してる彼には話すべきだと思った。
お兄ちゃんがおかしいこと。

「すごい…その、シスコンとか?」
「ううん、そうじゃないの」
「変わった趣味があるとか?」
「うん、まあ…それに近いかな…」

どう説明したらいいか迷う。
絶対ドン引きする…

でも、黙っているわけにいかない。

「兄は、好きな子に異常な執着を見せるタイプ…っていうか…」
「えっ、まさかストーカー?」
「違う…とも、言い切れないところが何とも…。
 今までそこまで行ったことは無いんだけど…
 今回は本気で変なの、変態なの」
「ええ…」
「私、高田君とは真剣に付き合ってるつもり。
 だからね、言っておきたいの」

お兄ちゃんが好きになった人が、お兄ちゃんの愛を受け入れてくれない限り…
私たちに未来は無いって事を。


***



「…想像以上だった」
「でしょ」

お兄ちゃんが行きつけにしている居酒屋から安田さんをお兄ちゃんの家に運んだ。
このまま帰ったら安田さんの貞操が危ないので、朝までお兄ちゃんを見張りつつ高田君と話した。

高田君は言った。

「お義兄さんが安田さんの事が好きなのは分かったけど…」
「好きとかいう問題じゃないのよもう。
 今日、安田さんが使ってた割り箸をそっとしまいこんだの見たでしょ」
「…うん」

正直、今まで好きになった相手に対する行動と比べても異常だ。

「今までは「一緒にお出かけした記念の切符~」とか、まだ可愛かったんだけど」
「うん」
「今回のは過去イチやばいと思うのよ。
 でも、安田さんが兄の想いを受け入れてくれたら…最高の結果だと思うの」

私はもう、黙っているのも限界だったから高田君に全部ぶちまけた。
お兄ちゃんの安田さんに対する行動の異常さを知っていて、この作戦に乗った事。
本当は「家飲みに誘って今までより少しだけ距離を詰めたいんだ」なんて事は嘘だって知っていた事。
今日会ってみて初めて、安田さんはとてもいい人だと気が付いてしまった事。

「最初は、その人を兄にあてがって、私はこの恐怖から逃げたいって思ったの」
「美咲さん…」
「安田さんがこんなにいい人だなんて思わなかったの!
 お兄ちゃんが好きになる男は大抵、私かうちのお金しか見てない人で…」

安田さん、私を見る時、いやらしい目をしなかった。
お兄ちゃんが奢ってくれるって言ったのに、悪いから伝票は別でって言った。
高田君が朝ドラ出てるって聞いてもサインくれって言ったりしなかった。
それどころか、記憶の底から、高田君が昔やったお仕事の事、思い出してくれた…

「安田さんがこんないい人って知ってたら、兄の計画になんて乗らなかった。
 だけど、乗ってしまった今は…後悔してる」
「美咲さん…」
「ごめんね高田君。
 こんな事に巻き込んでしまって…」
「…仕方ないよ美咲さん。
 安田さんがNOって言ったら、全力で逃がしてあげる。
 今はそれしか出来ない…」
「そう…そうよね」

いつまでもやってしまった事を悔やんだって仕方ない。
高田君の言う通り、安田さんが逃げたいと言った時には必ず逃がしてあげよう…

「…頑張ろうね高田君。
 安田さんを守って、私たちも幸せになるの」
「そうだね美咲さん」

その時私は知らなかった。
安田さんのヌードを、兄がきっちり撮影していた事を…。


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