【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇

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受視点

スパダリには教われない事

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そんなこんなで1ヶ月、毎週末のスパダリ教室のおかげで俺と課長は仲良くなった。

陽向ひなた君、お塩取ってくれる?」
「はーい!あの、政景まさかげさん、これはどういう下処理なんですか?」
「ああ、魚はね、両面に塩を振ってしばらく置くと臭みが水分と一緒に出てくるの。
 それをしっかり拭き取って、そこから調理するんだ…この一手間が大事」

お互いを下の名前で呼び合うことになったのはちょっと想定外だったけど、課長が
『休みの日まで課長って呼ばれたくないなぁ』
と言うのでこうなった。

まあ、会社では相変わらず課長、安田君と呼び合っているんだけど…時々昼飯に誘われたりして、そこでは「陽向君」「政景さん」と呼び合ったりする。

なんかこう、秘密の関係みたいでちょっとドキドキしたりなんかして…。

はっ、いかん。
真面目に取り組まねば!

「鰤の照り焼きは皮まで美味しく食べたいじゃない?生臭さが残ってるとげんなりするよね」
「そうですね、皮が美味しいのに…」

塩を振った鰤の切り身からは少しずつ水が出てきた。
これが臭み…ふむふむ。

「さて、まな板を洗って、次はお味噌汁の準備。
 さっき大根を使った時の切れ端を使って作れば経済的でしょ?お出汁は冷蔵庫で水出ししておいたからそれを使って」
「はい!」

お料理教室は順調。
だけどもう一つ、スパダリになるためには試練があってだな。
それはさすがに課長にも頼めないから…

今、凄い悩んでるんだよね。


***


お料理教室の後はスパダリ的デートを学ぶ時間だ。

ドライブに行って美味しいソフトクリームを食べたり古民家カフェでコーヒーを飲んだり…
時には映画に行ってその後レストランで食事したりして、その後また課長のマンションに戻って晩酌しながら今日のデートについて話をする。

うっかり純粋にデートを楽しんでしまうこともあったりするけど、これはあくまで修行なのだ。

自分だったらどういう内容に置き換えるか…。
それを課長に話して、アドバイスを頂くのだ。

「俺がやるとしたら、車が無いから、徒歩と電車で…途中評判のパン屋に寄って、景色の良いところで簡単にピクニックする…とかかな…」
「そうだね、それならワインを持っていって一緒に楽しむのも良いかも…運転しないんだし」
「なるほど…参考になります」

ワインなんて考えつきもしなかったよ。
さすがスパダリ…デート慣れしてらっしゃる。

「明日試しにやってみようか?おすすめのパン屋があるんだ、カスクートが美味しくてね」
「…カスクート?」
「カスクートっていうのはね…」

こうしてオシャレワードも色々教えて貰えるし、お店も紹介してもらえる。
おまけに課長に奢って貰える。

ちなみにカスクートはフランスパンに具を挟んだもの…だそうだ。
そこはかとなくワインに合うワインを選ぶあたりがスパダリだよな…勉強になる。

いい事ずくめなんだけど、それでも尚、どうしても教われない試練が1つ。

それは、うん。
あれだよ…アレ。

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