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受視点
スパダリに弟子入り
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課長の作ってくれたお味噌汁は優しい味でとても美味しかった。
やはりスパダリは料理が出来るのだな…
「俺ももっと料理できるようになりたいなぁ」
「えっ?いつもお弁当作ってるじゃない」
「いやぁ、週末に仕込んで冷凍したのを焼いたり炒めたりするだけで…あとはレンチンとか」
あれは他人に振る舞える料理じゃないし。
「マメなんだね、安田君は」
「でも、味付き肉とかトマト煮込みくらいで…。
ささっと味噌汁とか作れたら良いんですけど」
課長みたいにパッとそこにある材料で人様にお出し出来るようになれたらカッコいいよな。
「味噌汁なんて簡単だけどね~。
お出汁は別に無理しなくても最近はだしパックも売ってるし、僕もそれを使ってるんだ」
「へえ…」
だしパック?だしの素じゃなくて?何だそれ。
「良かったら一緒に買い物行く?
僕もお惣菜の作り置きしたいから、ついでに」
「良いんですか!?行きたいです!」
よし、決めた。
俺は長船課長からスパダリを学ぶ!
***
やってきたのは、課長の住んでるマンション近くのごくごく一般的なスーパーだった。
激安でもないが高級でもないそこは、課長のお気に入りスーパーなんだそうだ。
「ここのプライベートブランドのだしパックが美味しいんだ、おすすめだよ」
「へえ…初めて見ました、これ」
「顆粒だしより高くつくけど、今日みたいにお味噌汁を豪華にしたいときなんかにいいよ」
「なるほど…1つ買ってみます」
スパダリって高級なものしか買わないのかと思ってたけど、これなら俺でも真似できそう。
「課長って案外庶民派なんですね」
「だって庶民だもん!安田君が僕に抱いてるイメージってどんなだったの?」
「いつも高そうなスーツを着てるし、時計も高そうだし、靴も…それと、時々差し入れしてくださる野菜ジュースも高そうだし…住んでるとこも」
俺が正直に言うと、課長はにっこり笑った。
「確かに、仕事で使うものにはお金をかけるね。
睡眠は大事だから寝具にもそれなりにね。
ジュースは通販で定期購入してて、次が来るまでに飲みきれなかったらお裾分けしてるだけ。
住まいは特にこだわってないよ、防音くらい」
「でも、お家賃高いんですよね?」
「いや、実は父がマンション買うの好きでね。
色々買っては人に貸してるんだけど、あそこだけ借り手が付かなくて、それでお前ここに住んで家賃寄越せ、っていうからそうしてるんだ。
だから相場はいくらか分からないな…」
「へ、へえー」
やっぱ庶民じゃないじゃん!
マンション買うの好きってどんなだよ!?
「父のお金と僕の稼ぎは別だよ。
でも、色々助けて貰ってるから、いつかは返さなきゃなって思ってるんだ…老後の資金とかね」
「老後の資金か…俺も頑張らないとな」
いくらあっても不安だもん…今の若い人は年金貰えないだろう、とか、そんなニュースばっかりだし。
「そうだね、普通なら家賃も高いだろうし…。
もし安田君がもっとお金貯めたいなら、うちに住んでもいいよ?余ってる部屋もあるし」
「いやさすがにそこまでお世話になれないっす」
「……そうか」
俺の言葉に、課長は悲しそうな顔をする。
断られるのに慣れていないのかな?
でもあの綺麗なマンションの一室に自分の部屋を再現するなんて、そんなの申し訳無さすぎる。
俺は思いきって課長に直訴する。
「それより、俺課長に弟子入りしたいです」
「…弟子?」
「俺、大人の男ってやつになりたいな、って。
今日課長の味噌汁を飲んで、思ったんです。
普通のものを美味しく作るってすごいなって」
「そうかな」
課長は少し嬉しそうな顔になる。
どうやら断られずにすみそう…よし。
「なので、週末、ご予定の無い時で良いので、料理とか教えて貰えないですか?
あっ、でもお忙しいなら…」
「…来てくれるのかい?」
「えっ」
「僕も週末は1人で寂しくてね。
来てくれると嬉しい…安田君の都合が良ければ」
「いいんですか?やった!」
そんなこんなで俺は課長と連絡先を交換し、最初のメッセージを送りあった。
【長船政景(まさかげ)です、末永く宜しくね】
【安田陽向(ひなた)です、宜しくお願い致します】
課長の名前は政景さんと言うらしい。
戦国武将みたいでカッコいい…名前までスパダリだ。
【陽向君って呼んでもいいかな?】
【はい、もちろんです!】
……そして買物の後、俺は課長のマンションで作り置きのお惣菜を何品か教えてもらい…
結局晩飯までご馳走になって帰った。
やはりスパダリは料理が出来るのだな…
「俺ももっと料理できるようになりたいなぁ」
「えっ?いつもお弁当作ってるじゃない」
「いやぁ、週末に仕込んで冷凍したのを焼いたり炒めたりするだけで…あとはレンチンとか」
あれは他人に振る舞える料理じゃないし。
「マメなんだね、安田君は」
「でも、味付き肉とかトマト煮込みくらいで…。
ささっと味噌汁とか作れたら良いんですけど」
課長みたいにパッとそこにある材料で人様にお出し出来るようになれたらカッコいいよな。
「味噌汁なんて簡単だけどね~。
お出汁は別に無理しなくても最近はだしパックも売ってるし、僕もそれを使ってるんだ」
「へえ…」
だしパック?だしの素じゃなくて?何だそれ。
「良かったら一緒に買い物行く?
僕もお惣菜の作り置きしたいから、ついでに」
「良いんですか!?行きたいです!」
よし、決めた。
俺は長船課長からスパダリを学ぶ!
***
やってきたのは、課長の住んでるマンション近くのごくごく一般的なスーパーだった。
激安でもないが高級でもないそこは、課長のお気に入りスーパーなんだそうだ。
「ここのプライベートブランドのだしパックが美味しいんだ、おすすめだよ」
「へえ…初めて見ました、これ」
「顆粒だしより高くつくけど、今日みたいにお味噌汁を豪華にしたいときなんかにいいよ」
「なるほど…1つ買ってみます」
スパダリって高級なものしか買わないのかと思ってたけど、これなら俺でも真似できそう。
「課長って案外庶民派なんですね」
「だって庶民だもん!安田君が僕に抱いてるイメージってどんなだったの?」
「いつも高そうなスーツを着てるし、時計も高そうだし、靴も…それと、時々差し入れしてくださる野菜ジュースも高そうだし…住んでるとこも」
俺が正直に言うと、課長はにっこり笑った。
「確かに、仕事で使うものにはお金をかけるね。
睡眠は大事だから寝具にもそれなりにね。
ジュースは通販で定期購入してて、次が来るまでに飲みきれなかったらお裾分けしてるだけ。
住まいは特にこだわってないよ、防音くらい」
「でも、お家賃高いんですよね?」
「いや、実は父がマンション買うの好きでね。
色々買っては人に貸してるんだけど、あそこだけ借り手が付かなくて、それでお前ここに住んで家賃寄越せ、っていうからそうしてるんだ。
だから相場はいくらか分からないな…」
「へ、へえー」
やっぱ庶民じゃないじゃん!
マンション買うの好きってどんなだよ!?
「父のお金と僕の稼ぎは別だよ。
でも、色々助けて貰ってるから、いつかは返さなきゃなって思ってるんだ…老後の資金とかね」
「老後の資金か…俺も頑張らないとな」
いくらあっても不安だもん…今の若い人は年金貰えないだろう、とか、そんなニュースばっかりだし。
「そうだね、普通なら家賃も高いだろうし…。
もし安田君がもっとお金貯めたいなら、うちに住んでもいいよ?余ってる部屋もあるし」
「いやさすがにそこまでお世話になれないっす」
「……そうか」
俺の言葉に、課長は悲しそうな顔をする。
断られるのに慣れていないのかな?
でもあの綺麗なマンションの一室に自分の部屋を再現するなんて、そんなの申し訳無さすぎる。
俺は思いきって課長に直訴する。
「それより、俺課長に弟子入りしたいです」
「…弟子?」
「俺、大人の男ってやつになりたいな、って。
今日課長の味噌汁を飲んで、思ったんです。
普通のものを美味しく作るってすごいなって」
「そうかな」
課長は少し嬉しそうな顔になる。
どうやら断られずにすみそう…よし。
「なので、週末、ご予定の無い時で良いので、料理とか教えて貰えないですか?
あっ、でもお忙しいなら…」
「…来てくれるのかい?」
「えっ」
「僕も週末は1人で寂しくてね。
来てくれると嬉しい…安田君の都合が良ければ」
「いいんですか?やった!」
そんなこんなで俺は課長と連絡先を交換し、最初のメッセージを送りあった。
【長船政景(まさかげ)です、末永く宜しくね】
【安田陽向(ひなた)です、宜しくお願い致します】
課長の名前は政景さんと言うらしい。
戦国武将みたいでカッコいい…名前までスパダリだ。
【陽向君って呼んでもいいかな?】
【はい、もちろんです!】
……そして買物の後、俺は課長のマンションで作り置きのお惣菜を何品か教えてもらい…
結局晩飯までご馳走になって帰った。
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