【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇

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受視点

スパダリを考える

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その日、多少の残業をしてから家に帰った俺は、
週末に炊きだめした飯をレンジに入れ、
これまた週末に仕込みだめしといた生姜焼きを冷凍庫から出して凍ったままフライパンへ入れ、
スーパーで30円引きになってた千切りキャベツを皿にぶち撒け…

生姜焼きが焼けるまで、スパダリというのを検索してみた。

スパダリ…
スーパーダーリンの略。
イケメン、高身長、高収入。
全てにおいてセンスが良い。
家事全般が完璧。
料理もプロ並みの腕前。
浮気不倫一切無しの超・愛妻家。
だけどエッチは最高に上手い…

「そんなやつこの世に存在すんの?」

俺は思わず呟いた。

高収入…だけなら、営業部なら成績に応じてインセンティブが出るから、成績上位者は大体高収入だ。
センスで言うなら、デザイン室の連中はみんなセンスが良いはずだし…。
しかし、家事とか料理は全く分からん。
だって俺以外に弁当持参の男なんて見たこと無いし。

大体、俺の所属してる総務部社内システム開発課とかいう変人の集まりじゃ、ちゃんと昼飯食ってるやつ自体珍しいというか…

カロリー◯イト食いながらゲームしてる課長。
カロリー◯イト食いながらゲームしてる主任。
カロリー◯イト食いながらゲームしてる先輩。
カロリー◯イト食いながらゲームしてる後輩。

「何で全員カロリー◯イト食いながらゲームしてるんだろう…」

むしろ何で俺だけカロリー◯イト食いながらゲームしてないんだろう。

謎すぎる。

だがまあいい。
ともかく俺はモテたい。
とにかく孤独を脱したい…!

スパダリになれば、あの3女神のいる給湯室でも飯が食えるはずだ。
むしろ呼んでくれるかもしれない。
昼飯が侘しくなくなるかもしれない…!

「こうなったらネット情報を頼りに独学でスパダリを目指すしかないか…あっ!」

そうだ、1人だけいた。
イケメン・高身長・高収入・センス◎。

「経営企画部の長船課長…!」

いつもカッコいいスーツ着てるし、ネクタイもお洒落なのしてるし、時計も高そうなのしてる。

経営企画部は社長直属の部署だから、課長って言ってもうちの課長より立場はずっと上。
給料も当然ずっと上だ。
だってエリートの集まりだし、MBSだかMBAだかいう資格もってたり、TOEICとかもすごいらしい。

よう知らんけど。

それなのに、うちみたいな目立たない課にお高そうな野菜ジュース差し入れしてくれる良い人だ。
きっとカロリー◯イト食いながらゲームしてる連中を心配してくれているんだろう…俺もついでにご相伴に預かってるけど、すげー美味いんだよな。

どこで買うんだろう。
いや、知ったところで買わないけど。
だって高そうだし。

長船課長は昼飯に何食ってんのかな。
どこぞの小料理屋の昼コースとか、どこぞのフレンチのランチコースとかそういうやつかな。
あーでも、昼飯の時間も仕事してるかもな。
デカい取引先には営業と同行することもあるらしいし、デザイン部の仕事のチェックもするって聞いたことあるし。

「うーん、これまた謎だな」

社会人5年目にして謎が増えてしまった。

「そういえば、経営企画部に課って無いのに課長なのも謎だよな…」

考えれば考えるほど謎が増える。
長船課長はイケメン・高身長・高収入・センス◎な上にミステリアスでもあるな。

「でも長船課長がスパダリっていうんなら、何か納得出来るような気がするなー」

だってモテるもん。
うちの課は男所帯だから無反応だけど、隣の課の女の子はキャーキャー言ってる。
総務部だから女子が多いんだよな…
うちにも1人2人女子を入れるべきじゃないかね。

「男女比率同じにして欲しいなー」

カロリー◯イト食いながらゲームしてる女子がいても良いじゃないかと思うんだけど。
いや、欲を言えば弁当仲間になってくれる、映えない弁当の女子が来てくれたらとは思うけど…

「あっ!やべっ、焦げた!!」

あーあ、考え事しながら飯作っちゃ駄目だな。

「…これじゃ弁当に入れられないな」

仕方ない、明日の昼飯は外へ出るか…。
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