【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

受視点

スパダリ？

「やっぱスパダリ良いよねー」
「理想の彼氏よねー」
「彼氏っていうより…旦那様？」
「『僕が愛してるのは君だけだよ…』」
キャー！

…今日も給湯室から楽しそうな声が聞こえる。

いつものお昼時。
ランチにお弁当を持ってくる女性社員３人による女子トークというやつに俺は聞き耳を…

いや、立てなくても聞こえてくるんだけどな！

ちなみに俺も弁当派だ。
家で晩飯の残りを詰めてくるだけの弁当。
これが一番安い！
お茶は給湯室で貰えばタダだし！

…というわけで、俺はいつもランチ時には給湯室に来ることになるのだ。
決して女子トークを盗み聞きしに来ているわけではない、断じて！断じてだぞ！

「…今日も盛り上がってるなぁ」

本音で言えば、俺も給湯室で飯を食いたい。
だってお茶のお代わりが出来るし。
でも俺にはあの中に混じって弁当を食う勇気が無い。

「…仕方ないよな」

女性ばかりっていうのもあるけど、あの３人は社内でもお嫁さんにしたいランキングトップ３に君臨している女神たちなのだ。
きっとお弁当も彩り豊かな女子力MAX弁当だろう。
お弁当箱だってかわいいやつに違いない。
対する俺は米と昨日の残り…弁当箱はタッパー。
気後れもいいとこだ。

「…よし、入るか」

まずはノック。
そして「どうぞー」の声を待ってからドアを開け、すみませんがお茶を失礼します、と言ってマグカップにたっぷりのお茶を汲んで席へ戻る。

デスクでゲームをしながら食べる弁当は冷えきってて味もいまいち。
だけどお金を貯めたいから頑張るしかない。

「頑張るしかない、けど…」

１人は寂しい。

「彼女とか、嫁さんがいたらな…」

大学進学と共に実家を出て、一人暮らしも９年目。
社会人になってから家に遊びに来る友だちも減って１人の時間が増えた俺は…

最近、猛烈に寂しい。
寂しいんだよ…。