【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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王子様と皇太子殿下 1

先生、王子から皇太子を預かる

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転移した先で僕達が見たのは、
小さな子を抱えたままうずくまる第3王子エースと、
地面に伏せる黒づくめの男たち。

そして……

「!!?」

虫の大群に生きながら食い散らかされる人たち。

「………っ、」

凄惨な現場に体がこわばるけど、一緒に来てくれた彼が強く手を握って、言ってくれた。

「大丈夫だよ、先生。大丈夫……」
「っ、うん」
「うちの兵隊は食われてない。
 だからまだ、エースは正気を残してる…多分」
「……うん」

僕は何とか平静を取り戻し、エースに声をかけた。

「エース、どうしたの?」

すると、彼は小さな声で言った。

「クロエを、眷属に、できない…」

ちゃんと手順を踏んだはずなのに、腕の中のその小さな子を眷属にすることができないのだと言う。

「せんせい、クロエを、助けてくれ。
 先生ならクロエの怪我もすぐに治せるじゃろう?
 なあ、頼むよ…」

それを聞いた地面に伏していた男たちも、口々に

「先生!」
「先生!お願いします!」
「先生!!」
「その方はこの世に2人とおられぬ方…!」
「希望であり目標であり家族なのです…!!」
「我々の命はどうでも、この方を、どうか…っ!」

と言って、それ以上下がらない頭を下げようとする。

……地面にめりこんじゃうよ?
なんてね、だけどさ。

「大事な、子なんだね」

みんなが必死になって救いたいと願うんだもの。

僕は決意を固めて、言った。

「分かった。
 すぐにうちに連れて帰って治療するよ。
 だから君たちはここの混乱を収めて、身ぎれいにしてからうちへおいで。
 ……いいね?」
「「ハイ!!」」




それから僕はその子を預かると、もう一度転移するべく人目の無い場所へと向かった。
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