【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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どれだけ永く、生きてても

それからの青年

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「…というわけで、まずは体力作りから始めてもらいます。何事も基礎を疎かにしてはいけません」

魔法技術学園に隣接する建物の大広間で壇上に立ち、「特に目立ったところのない青年」…
ソラが心得について説明する。

「希望があれば、隣接の魔法技術学園で、特定の魔術や魔法に関しての授業も受けられますが、まずは体力、それと精神力、この2つが必要です」

ここは「国立武芸総合学園」。

武芸に関して様々なことが学べる他、馬術についても指導が受けられる場所として、魔法技術学園より少し先に開校した新しい学園である。

今日の入学式で、新たに100名の新入生を迎えた。
最初の卒業生が出たのは一昨年だが、ここを卒業すれば様々な高給職へ就くことが可能だと証明してくれている。
軍はもちろん、警護、救護員、馬術に長けていれば競馬の騎手になることも可能だ。
「学園出身者」となれば、どこの職場でも一目置かれる存在になることだろう。

ここで学べるのは4年。
「卒業」できなければ放逐、という厳しい規則があり、入学当初は全員がやる気に満ちている。

「さーて、ここから何人残るかねぇ」
「けっこー厳しいからねぇ」
「ソラのあの外見に騙されて、舐めてかかってくる奴は全員叩きのめされるからなぁ」
「ソラは可愛いからね~」
「そりゃお前の欲目だろ?あいつはどこにでもいそうな顔してるぞ」
「ユーゴみたいな無骨なやつに、ソラの良さがわかるとは思ってませーん」
「は、何だと…?ロウ、この後の模擬戦でてめーに一泡ふかしてやるからな」

長身の男…ユーゴと、大柄な男…ロウが小さな声で話をする。

「そこの2人、私語は謹んでください」

聞こえていたらしい。
ソラから指導される。

「「すいません」」

「というわけで、早速この後、外の競技場でそこのお二人による模擬戦の様子をご覧頂きます。
 剣と拳、どちらを「より」学びたいかの参考にしてください。以上」

さてさて…今日はどちらが勝つのやら。


----------


「そこまで!…どちらかというとロウさんの勝利」

ぜい、ぜい、ハア、ハア…

「やったァー、勝ったぁー…」
「てめ、何でロウの勝ちなんだよ、俺のほうが、一発多く入れてんだろっ」
「剣と拳で、って言ったじゃないすか!
 何で途中から剣捨てて取っ組み合いしてるんすか、見苦しいこと止めてくださいよ」

…新入生もポカンとしている。
ソラはポリポリ頭を掻いて、声を上げる。

「…仕方ないすね…ワルキューレ!ちょっと相手してもらって良いですか?久々にやりましょう」
「えっ、私ですか?」
「ワルキューレはショートソード二刀流でしょ?
 おれがこれ…ロングソード一本でやれば、多少は新入生が授業を組む参考になるでしょ」
「えー、まじですかぁ」
「はは、その顔、ひいばあちゃんにそっくり」

ワルキューレ、と呼ばれた女性が競技場の端から歩いてくる…早歩き…小走り…から跳躍!

…キィン…

「うわっと、あっぶねぇ」
「ちっ、初手を受けられてしまいました!」
「舌打ちすんのも似てんね!」
「良く言われます!曾祖母ひいばあに似て強い、ってね!」
「はは、生まれ変わりだったりしてな!?」

笑いながらワルキューレの剣戟を次々受け止めるソラ。

「オレーリアには、おれ1回負けてるからね!
 ワルキューレもおれから一本、取ってみ?」
「ムカつきますわぁ!」
「そういう精神の乱れが、まだまだね!」
「なんですってぇ!?」
「こっちもいくよ!……受けきれよな?」

ソラがニヤリと笑い剣を振る
ガキン!
ワルキューレが2本の剣でそれを受け止める。

「…やるね」
「今日こそ一本取ります!」
「はは、こい、こい!」

新入生は食い入るように2人の模擬戦を見る。
誰もが見蕩れるような剣の、ワルキューレ。
誰もが目を逸したくなるような剣の、ソラ。

戦乙女と戦うその姿は、さっきまで壇上で話していた「どこにでもいる」青年ではない。

「鬼神…」

どこからともなく呟きが聞こえる。

キィン!
ショートソードが2本、弾き飛ばされる。

「残念!今日もおれの勝ち」
「ぐぐぐ…悔しい~!」

……。

今年の新入生ほぼ全員が、この時、ロングソードの授業をことを決意した。


だが新入生は知らない。


これだけの剣技を見せておきながら、実は、ソラはロングソードの教官ではない、ということを…
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