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王子様と皇太子殿下 7
事件の後の大団円 2
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クロエの足から義足が外される。
膝立ちになり、エースと向かい合わせになる。
「どうか、うまくいきますように」
小さな声で、皆が祈る。
先生もユーゴも、ソラもロウも、スーもギーも、
そして、猟犬たちも。
クロエとエースが、口づけを交わす。
エースは姿を少し変える。
口元に牙が生え、耳が尖り、銀の髪は黒へ。
「魂よ、結びあえ」
エースがそう宣言すると、クロエは首筋を晒す。
エースの牙が、優しくそこへたてられる。
不思議な光が、彼らを包む。
クロエの右目が、右耳が、右手が、右足が…
生え揃う。
クロエはそっと、目を閉じる。
「…クロエ」
「…はい、エースさん」
「久しぶりに、五体満足に戻って…どうじゃな」
「…そうですね、こうしてあなたと抱擁できる」
そういって、クロエはエースに抱きつく。
ぎゅっと、力を込める。
「…クロエ」
「はい」
「…、苦しい」
締めすぎたらしい。
「すみません!」
「良い、顔をちゃんと、見せてくれるか?」
「…はい」
その顔の左目は、金。
右目は、緑。
左耳は人間の耳。
右耳は…先が尖っている。
「…どういう、ことじゃ?」
「無いものを、どこかから取り寄せた…から…形が違う、のかも…?」
「左目は金色になったのに、右目は緑のままじゃ」
「…姿を変えることを覚えたら、人間のようにはなるかもしれません…が、今は、こうみたいです」
結局、街に出るときの眼帯は必要ですね、といってクロエは苦笑し、腕と脚を見せる。
「右腕と、右足も…浅黒くて、爪は尖ってますけど、長いわけでもありませんし…そこまで生活に支障はなさそうです。大きさは同じですし…足は靴を履けば、わかりません」
「…儂やユーゴのときは、そんなこと…無かったはずなんじゃが…」
スーが言う。
「生きている長さで変わるのでは?
300年ほど生きただけの眷属が、新しい眷属を創ることは…これが初めてでしょうし」
それを受けて先生も言う。
「そういえばそうだね!
ほんとにエースは不思議だなぁ。
急に変な術は使うし、黒い霧にもなるしさ。
クロエ君、エースのこと研究してみてよ」
「け、研究…ですか?」
「うん、あと…魔法のこと、とか」
そういえば、と猟犬の1人が話す。
「我々も、不思議だな…と思うことが何度かありました。上手く行かないと悩んでいた野菜やなんかの育苗も…殿下が話しかけてやると、次の日ぴょこっと芽が出たり…馬がお産で苦しんでいるときに、馬に話しかけると…すんなり仔馬が出てきたり…」
「…本当に妖精なんじゃないか、って、皆で」
「だからかもしれません、俺、殿下が魔法を使えることに妙に納得しています」
「……俺も、そうだ」
もしかして、と先生が言う。
「エースがあの日付けた条件は、クロエ君が生まれつき持ってた魔法を使う能力の補助を受けていたんじゃないかな…。
だから、エースでもあれほど複雑な術が使えたんだよ、それなら説明がつく…気がする!」
つまり、彼は、この世界で最初の魔法使い?
「…すごい人と、友だちだったんだ…おれ」
「そうだね、もしかしたら1番恩恵を受けてるのは…ソラ君なのかもしれない、それなら君の身体能力の高さも説明がつくでしょ?
人間の身で眷属と対等に戦えたのは異常だ、普通なら本気出したエースと戦った瞬間、首が飛んじゃうもん。
それから、ね、ロウ?木を切り倒して1人で運ぶ膂力は普通じゃないよね」
それにね、と先生が続ける。
「クロエ君が賢すぎるのも…説明がつくような気がするんだ。
クロエ君、きみ「アカシックレコード」と繋がってるんじゃないか?
僕の本、全部読んでしまったって言ってただろ、その中にもしそういう記述があれば…知識を得たいという欲が強いきみが、最初に使ったのは…アカシックレコードと繋がることだ」
クロエが「どこかから」記憶を取り寄せて言う。
「確かに、昔読んだ先生の本に「アカシックレコード」に似たお話が、読み物として…ありました。
とても不思議なお話で…でも、実用書も多く書かれている方が書いた本だから、真実なのかもしれない、と思ったりして…」
「やっぱり!……でも、随分古い本でしょ?」
「はい、国立図書館には、稀覯本も沢山ありましたから…。「世界で最初に出た本」などもあって、すごい蔵書の数でした」
帝国の国立図書館は「全ての本を保管」してきた。
そんなことになったのは…そこの「職員」が「読み書きができる」身分の者が毛嫌いするような「閑職」で、なし崩しに伝統的に「大の本好き」しか応募してこない場所になり、新しいのも古いのも、本と見ればとにかく収集したがる者しかいなかったからだ。
当然、本を捨てることが頭に浮かぶものは一人としておらず、手狭になればどうにかこうにか本棚を増やし、時には慣れない道具で地下を掘り部屋を増やし…そうして「世界一」の称号に相応しい、巨大な図書館になったのだ。
「そこには本が好きで好きでたまらない司書さんがいらっしゃって…ほとんどの本を読んでしまったっていうような、方で。
その方が、勧めてくれたんです、面白いから読んでご覧、って…」
今はマルーン王国の国王となった、
白髪で琥珀色の瞳の…彼。
「……司書殿、か……?」
「はい」
なんてことだ!
「……儂、もしかしたら、とんでもないものを、
マルーンの王にして据えたのかも……しれん……」
それを聞いて、ユーゴとロウが声を合わせて叫ぶ。
「「またかよ!!」」
そう、単純に、司書殿なら人品の保証があった。
だから…深く考えずに、据えた。
貧乏男爵の4男坊は、あの貴族たちと何も関係を持っていなかったし、ちょうど良いと思って。
「まあ、大丈夫ですよ。
司書さんなら…きっと立派な王になります。
本好きを増やしたいなら教育にも熱心になるでしょうし、本で得た知識を活かせばマルーンに見合った産業も「どこかから」見つかるでしょう?
何より…平和でなきゃ、本は読めませんから」
魔法使いは1人でも、どうやらアカシックレコードと繋がっている人間は…
他にもいるらしい。
膝立ちになり、エースと向かい合わせになる。
「どうか、うまくいきますように」
小さな声で、皆が祈る。
先生もユーゴも、ソラもロウも、スーもギーも、
そして、猟犬たちも。
クロエとエースが、口づけを交わす。
エースは姿を少し変える。
口元に牙が生え、耳が尖り、銀の髪は黒へ。
「魂よ、結びあえ」
エースがそう宣言すると、クロエは首筋を晒す。
エースの牙が、優しくそこへたてられる。
不思議な光が、彼らを包む。
クロエの右目が、右耳が、右手が、右足が…
生え揃う。
クロエはそっと、目を閉じる。
「…クロエ」
「…はい、エースさん」
「久しぶりに、五体満足に戻って…どうじゃな」
「…そうですね、こうしてあなたと抱擁できる」
そういって、クロエはエースに抱きつく。
ぎゅっと、力を込める。
「…クロエ」
「はい」
「…、苦しい」
締めすぎたらしい。
「すみません!」
「良い、顔をちゃんと、見せてくれるか?」
「…はい」
その顔の左目は、金。
右目は、緑。
左耳は人間の耳。
右耳は…先が尖っている。
「…どういう、ことじゃ?」
「無いものを、どこかから取り寄せた…から…形が違う、のかも…?」
「左目は金色になったのに、右目は緑のままじゃ」
「…姿を変えることを覚えたら、人間のようにはなるかもしれません…が、今は、こうみたいです」
結局、街に出るときの眼帯は必要ですね、といってクロエは苦笑し、腕と脚を見せる。
「右腕と、右足も…浅黒くて、爪は尖ってますけど、長いわけでもありませんし…そこまで生活に支障はなさそうです。大きさは同じですし…足は靴を履けば、わかりません」
「…儂やユーゴのときは、そんなこと…無かったはずなんじゃが…」
スーが言う。
「生きている長さで変わるのでは?
300年ほど生きただけの眷属が、新しい眷属を創ることは…これが初めてでしょうし」
それを受けて先生も言う。
「そういえばそうだね!
ほんとにエースは不思議だなぁ。
急に変な術は使うし、黒い霧にもなるしさ。
クロエ君、エースのこと研究してみてよ」
「け、研究…ですか?」
「うん、あと…魔法のこと、とか」
そういえば、と猟犬の1人が話す。
「我々も、不思議だな…と思うことが何度かありました。上手く行かないと悩んでいた野菜やなんかの育苗も…殿下が話しかけてやると、次の日ぴょこっと芽が出たり…馬がお産で苦しんでいるときに、馬に話しかけると…すんなり仔馬が出てきたり…」
「…本当に妖精なんじゃないか、って、皆で」
「だからかもしれません、俺、殿下が魔法を使えることに妙に納得しています」
「……俺も、そうだ」
もしかして、と先生が言う。
「エースがあの日付けた条件は、クロエ君が生まれつき持ってた魔法を使う能力の補助を受けていたんじゃないかな…。
だから、エースでもあれほど複雑な術が使えたんだよ、それなら説明がつく…気がする!」
つまり、彼は、この世界で最初の魔法使い?
「…すごい人と、友だちだったんだ…おれ」
「そうだね、もしかしたら1番恩恵を受けてるのは…ソラ君なのかもしれない、それなら君の身体能力の高さも説明がつくでしょ?
人間の身で眷属と対等に戦えたのは異常だ、普通なら本気出したエースと戦った瞬間、首が飛んじゃうもん。
それから、ね、ロウ?木を切り倒して1人で運ぶ膂力は普通じゃないよね」
それにね、と先生が続ける。
「クロエ君が賢すぎるのも…説明がつくような気がするんだ。
クロエ君、きみ「アカシックレコード」と繋がってるんじゃないか?
僕の本、全部読んでしまったって言ってただろ、その中にもしそういう記述があれば…知識を得たいという欲が強いきみが、最初に使ったのは…アカシックレコードと繋がることだ」
クロエが「どこかから」記憶を取り寄せて言う。
「確かに、昔読んだ先生の本に「アカシックレコード」に似たお話が、読み物として…ありました。
とても不思議なお話で…でも、実用書も多く書かれている方が書いた本だから、真実なのかもしれない、と思ったりして…」
「やっぱり!……でも、随分古い本でしょ?」
「はい、国立図書館には、稀覯本も沢山ありましたから…。「世界で最初に出た本」などもあって、すごい蔵書の数でした」
帝国の国立図書館は「全ての本を保管」してきた。
そんなことになったのは…そこの「職員」が「読み書きができる」身分の者が毛嫌いするような「閑職」で、なし崩しに伝統的に「大の本好き」しか応募してこない場所になり、新しいのも古いのも、本と見ればとにかく収集したがる者しかいなかったからだ。
当然、本を捨てることが頭に浮かぶものは一人としておらず、手狭になればどうにかこうにか本棚を増やし、時には慣れない道具で地下を掘り部屋を増やし…そうして「世界一」の称号に相応しい、巨大な図書館になったのだ。
「そこには本が好きで好きでたまらない司書さんがいらっしゃって…ほとんどの本を読んでしまったっていうような、方で。
その方が、勧めてくれたんです、面白いから読んでご覧、って…」
今はマルーン王国の国王となった、
白髪で琥珀色の瞳の…彼。
「……司書殿、か……?」
「はい」
なんてことだ!
「……儂、もしかしたら、とんでもないものを、
マルーンの王にして据えたのかも……しれん……」
それを聞いて、ユーゴとロウが声を合わせて叫ぶ。
「「またかよ!!」」
そう、単純に、司書殿なら人品の保証があった。
だから…深く考えずに、据えた。
貧乏男爵の4男坊は、あの貴族たちと何も関係を持っていなかったし、ちょうど良いと思って。
「まあ、大丈夫ですよ。
司書さんなら…きっと立派な王になります。
本好きを増やしたいなら教育にも熱心になるでしょうし、本で得た知識を活かせばマルーンに見合った産業も「どこかから」見つかるでしょう?
何より…平和でなきゃ、本は読めませんから」
魔法使いは1人でも、どうやらアカシックレコードと繋がっている人間は…
他にもいるらしい。
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