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王子様と皇太子殿下 7
そして事件は起こる 3
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エース達が騒いでいる間に先生とユーゴが現れた。
慌てて「飛んで」きたらしい。
先生に至ってはほぼ寝間着である。
「歩いて出たなら、そう遠くへは行けない。
この近くで死に場所を探すなら…湖だろ」
入水。
それが1番有り得る答えだった。
「死ぬ…死ぬ、のか?なぜ、…なぜ…、」
「分かんないよ!でも止めなきゃ!」
「今までだって、何度もお止めしてきた。
殿下の自死を止められない猟犬などいない」
北の猟犬の言葉に、ソラ以外全員の背筋が凍った。
今まで何度も、死のうとした?
彼らが当たり前の事のように、言う程。
「そうじゃ…止めねば」
全員が湖に走った。
スーが、走りながらロウに話しかけた。
「クロエさんの母上の容姿は?」
「…っ、覚えてねぇ、あいつと同じ髪の色と目の色だってことしか…!」
「…そうですか」
では、クロエさんの容姿から推測するしかありませんね…とぶつぶつ言いながら、ロウと分かれる。
「私たちはこちらから周るほうへ行きます」
「分かった、オレらはこっちから周る!」
先生は言った。
「僕は空から探そう」
そして、その背に、白い羽根を生やした。
「白い鳥なら、気づかれずに近づけるはず」
そういうと空へ羽撃いた。
全員が、
湖の周りを、湖の中を…探した。
皆、必死だった。
その時だ。
湖に、何かが拡がるのが見えたのは。
----------
金色の髪は 麦畑。
豊かに実る 金の波。
優しい瞳は 湖に、
映る若木の 木の葉より、
僅かに淡い 新芽の如く。
その微笑みは きらきらと、
湖にうつる 太陽の
煌めきの様に あたたかく。
その悲しみは 湖の
底より深く、 尚深く。
美しさ故に 引き裂かれ、
悲しみの中で 子を産み 育て。
その子の願いを 叶えるために、
その身を捧げ 命を落とした、
悲しい最期を 迎えた女を
この世で一番 優しい母を、
ここに現せ、祈りよ、届け。
「…かあさま」
----------
……空を飛ぶ先生には、それが見えた。
湖面に映る「回路」。
いや、「回路」というより…
「魔法陣…!?」
ふいに先生の頭の中に、「どこかから」引き出された記憶がそう言った。
そうだ、あれは、孤独に耐えかねた自分がかつて研究していた降霊術…!
「でも、成功しなかった、はず…」
あの時、呼び出す相手を称える詩をうまく紡ぐことが出来なくて、地面から熱い蒸気が吹き出して…彼女が怒ったんだと…
「あっ…」
その時は、そう思った。
最初に自分の不老不死を受け入れてくれた、老女。
優しい瞳のあの人は、若返れないなら眷属になっても意味がないわ、と笑っていた。
だから。
若い時の美しさが分からなくて、うまく詩を紡げなくて、私はそんなババアじゃないと、怒ったんだと…
でも、今、彼女の怒りは、
「おん、せん」
この地で、みんなを癒やしてくれる。
「…今後あそこでエロい事するの禁止にしよ…」
ぼそり、と独り言を言って自分を落ち着かせる。
まさか、彼は、それを読み解いた…のか?
どこから?
自分の書いた本のことは、自分よりあの子のほうが知っているだろう。
「うそ……だ……」
そう、彼は死ぬ気などなかったのだ。
本当に、母に会いたかっただけ。
そのために…魔法を1つ、読み解いた。
「賢いにも…ほどがある、だろ…」
キラキラ、魔法陣の中に、クロエと光の玉が見える。
終わりまで…ちゃんと、出来るか?
「あっ、みんなを止めなきゃ…!」
人間の身で、魔法を使うなんて。
しかも、発動してから終わるまで気の抜けない…
恐ろしい魔法を。
「みんな、クロエ君に近づかないで!
今近づくと、クロエ君が危ないから!」
先生の声は、全員の頭の中に直接届いた。
それもまた…先生が「忘れた」小さな魔法だった。
慌てて「飛んで」きたらしい。
先生に至ってはほぼ寝間着である。
「歩いて出たなら、そう遠くへは行けない。
この近くで死に場所を探すなら…湖だろ」
入水。
それが1番有り得る答えだった。
「死ぬ…死ぬ、のか?なぜ、…なぜ…、」
「分かんないよ!でも止めなきゃ!」
「今までだって、何度もお止めしてきた。
殿下の自死を止められない猟犬などいない」
北の猟犬の言葉に、ソラ以外全員の背筋が凍った。
今まで何度も、死のうとした?
彼らが当たり前の事のように、言う程。
「そうじゃ…止めねば」
全員が湖に走った。
スーが、走りながらロウに話しかけた。
「クロエさんの母上の容姿は?」
「…っ、覚えてねぇ、あいつと同じ髪の色と目の色だってことしか…!」
「…そうですか」
では、クロエさんの容姿から推測するしかありませんね…とぶつぶつ言いながら、ロウと分かれる。
「私たちはこちらから周るほうへ行きます」
「分かった、オレらはこっちから周る!」
先生は言った。
「僕は空から探そう」
そして、その背に、白い羽根を生やした。
「白い鳥なら、気づかれずに近づけるはず」
そういうと空へ羽撃いた。
全員が、
湖の周りを、湖の中を…探した。
皆、必死だった。
その時だ。
湖に、何かが拡がるのが見えたのは。
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金色の髪は 麦畑。
豊かに実る 金の波。
優しい瞳は 湖に、
映る若木の 木の葉より、
僅かに淡い 新芽の如く。
その微笑みは きらきらと、
湖にうつる 太陽の
煌めきの様に あたたかく。
その悲しみは 湖の
底より深く、 尚深く。
美しさ故に 引き裂かれ、
悲しみの中で 子を産み 育て。
その子の願いを 叶えるために、
その身を捧げ 命を落とした、
悲しい最期を 迎えた女を
この世で一番 優しい母を、
ここに現せ、祈りよ、届け。
「…かあさま」
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……空を飛ぶ先生には、それが見えた。
湖面に映る「回路」。
いや、「回路」というより…
「魔法陣…!?」
ふいに先生の頭の中に、「どこかから」引き出された記憶がそう言った。
そうだ、あれは、孤独に耐えかねた自分がかつて研究していた降霊術…!
「でも、成功しなかった、はず…」
あの時、呼び出す相手を称える詩をうまく紡ぐことが出来なくて、地面から熱い蒸気が吹き出して…彼女が怒ったんだと…
「あっ…」
その時は、そう思った。
最初に自分の不老不死を受け入れてくれた、老女。
優しい瞳のあの人は、若返れないなら眷属になっても意味がないわ、と笑っていた。
だから。
若い時の美しさが分からなくて、うまく詩を紡げなくて、私はそんなババアじゃないと、怒ったんだと…
でも、今、彼女の怒りは、
「おん、せん」
この地で、みんなを癒やしてくれる。
「…今後あそこでエロい事するの禁止にしよ…」
ぼそり、と独り言を言って自分を落ち着かせる。
まさか、彼は、それを読み解いた…のか?
どこから?
自分の書いた本のことは、自分よりあの子のほうが知っているだろう。
「うそ……だ……」
そう、彼は死ぬ気などなかったのだ。
本当に、母に会いたかっただけ。
そのために…魔法を1つ、読み解いた。
「賢いにも…ほどがある、だろ…」
キラキラ、魔法陣の中に、クロエと光の玉が見える。
終わりまで…ちゃんと、出来るか?
「あっ、みんなを止めなきゃ…!」
人間の身で、魔法を使うなんて。
しかも、発動してから終わるまで気の抜けない…
恐ろしい魔法を。
「みんな、クロエ君に近づかないで!
今近づくと、クロエ君が危ないから!」
先生の声は、全員の頭の中に直接届いた。
それもまた…先生が「忘れた」小さな魔法だった。
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